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フジロック20周年 SMASH・日高正博氏インタビュー「反省の連続。第1回目の経験があったからやってこれた」

アーティストのバッティングは尊重し合うならやってはいけない

――今のお話しともつながると思いますが、フジロックフェスティバルの客層の変化は感じますか?
日高 感じます。ああ、日本だなって。

――どういう点が“日本”なのでしょうか?
日高 出演アーティストにもよりますが、たとえばイギリスやアメリカのフェスだと、二世代、三世代に渡ってお客さんがきて、「おじいちゃんは、こんなロックが好きなんだ」とか、世代間のコミュニケーションが生まれるんですよ。家族の中でも、観客同士の中でも。そういった光景は、フジロックフェスティバルではよく見かけるものの、三世代となると、なかなかありません。もちろん、そういったことはお客さんに押し付けることではないけれど、そういうふうになって欲しいなという気持ちはあります。それに海外は、もっとリラックスして音楽を聴いていますよね。だから、知らないアーティストが出ている小さなステージも面白そうだったら観にいくけど、日本のフェスは、インドア派が多いのか、全体的にはまだまだ知っているバンドしか観にいかないということが多いように感じます。
――その結果、いろんなフェスで、ヘッドライナー級のアーティストが重なってしまう、と。
日高 それぞれのフェスがお互いを尊重し合うのならば、それはやっちゃいけないことだと思っています。決して、せこい話をしているのではなくて、トップ・クラスのバンドが出るフェスを選ぶことで、バンドの希少価値も生まれるし、フェスのステイタスも高くなる。そうではなく、何でもかんでも出るとか、オーガナイズする側も、「流行っているから、ウチにも出てもらおう」という考えだと、フェス自身がフェスを潰してしまいます。だから、フェスをオーガナイズする側は、いかに自分たちの個性を出せるか、「こういうフェスにするんだ」っていう“夢”を持つことが一番大切。もちろん、若いバンドは、ありとあらゆるフェスに出るべきだと思います。だって、自分たちの音楽を知ってもらえるチャンスですからね。

――そういったフェスの個性、“夢”という点で、フジロックフェスティバルは、ブレがないですよね。
日高 とにかく、我々はハッキリしているんです。自分たちが聴きたい音楽かどうか。それと、まったくジャンルが違っても、この人にチラッと出てもらったら、絶対に面白いよなって思えるかどうか。そこはもう、今ではスタッフ全員が理解してくれているから、さすがにグリーン・ステージは自分が関わらざるを得ないけど、ホワイト・ステージやレッド・マーキー、フィールド・オブ・ヘブンなど、最近はセレクトを任せているスタッフの意見に「NO」と言うことは、まずありませんね。

すぐに“自粛”に結びつけるムードが、すごく嫌

――なるほど。では少し話しを戻しますが、先ほど客層の変化という話題で「二世代、三世代で…」というお話しがありましたが、近年、ロック・フェスへ親子で訪れることの賛否が話題に上ることがあります。その点は、どのようにお考えですか?
日高 いやいや、子どもさんと来てくれるなんて、そんな嬉しいことはないですよ。

――今年は、中学生以下が無料(保護者同伴に限る)となりましたが、それも、より広い世代に音楽を楽しんで欲しいという想いの延長線上にあるものですか?
日高 それもそうだし、子どもたちには、まずキャンプを経験して欲しいと思っていて。会場には、キッズランドもあるし、ドッグランやオートキャンプ場も作っていて、子どもたちだけでも楽しめるようにしています。要は、まずはお父さんお母さんに、安心して子どもたちを連れて来てもらえるような環境を作ろうということです。子どもって、将来の宝ですからね。子どもたちに、いい環境で、いい音楽を聴いて欲しい。それも、メインストリームの音楽だけじゃなくて、小さなステージとか、世界中の音楽も聴いて欲しい。これが本音です。子どもって、いろんな可能性を持っていて、いろんなことを吸収できますから、いろんな音楽を体験して欲しいと思っていますし、勝手な思い込みかもしれないけど、それが我々のやらねばいけないことだって思っています。

――もうひとつ、お話をうかがいたいのですが、4月に熊本と大分で地震が発生しましたが、こういった大きな災害があると、日本中に過剰とも言える“自粛ムード”が漂うように感じます。でも、こうした時だからこそ、エンタテインメントの力が発揮されるべきだという意見もありますよね。その点は、どのようにお考えでしょうか?
日高 これは完全に、自分の個人的な考えとしてしか答えられないけど、そういった“自粛”という話題を見聞きするたびに、それはおかしいと思うし、何でもかんでも、すぐに“自粛”に結びつけるムードが、すごく嫌なんです。確かに、地震は怖いですよ。それは、よく分かる。僕自身、7〜8歳の時に、霧島えびの高原の地震で、1ヶ月間、毎日ずっと地震に遭うという経験をしました(注:日高氏は熊本出身)。でも、地球上に住んでいる以上、自然災害は必ず起こりえるものだし、そういった中で、我々ができることは、現地の方々から「もういいです」と言われるまで、フジロックフェスティバルとしても、スマッシュとしても、支援を続けていくことです。それは、エンタテインメントうんぬん以前の話で、当たり前のこととして。震災でトラウマを抱えてしまった方々が、できるだけ早く、元に戻れるよう、我々は応援し続けるべきだと思っています。

――それでは最後に、アニバーサリー・イヤーを迎えた今年のフジロックフェスティバル、どのようなものになるのか、聞かせてください。
日高 このタイミングでは、まだ言えないことばかりなんですけど(笑)、これまでにはなかったような企画を考えています。今は、それで頭の中が一杯で、ほとんど寝れていません(笑)。その企画をスタートさせた当初は、もう楽しくて仕方なかったけど、今はもう大変過ぎて、楽しい時期を通り越して、ちょっと苦痛の日々ですよ(笑)。それくらい、大きなことをやろうと考えているので、今年のフジロックフェスティバル、ぜひ楽しみにしていてください。

(文/布施雄一郎)

FUJI ROCK FESTIVAL ’16

○開催日:7月22日(金),23日(土),24日(日)
○開場9:00/開演 11:00/終演予定 23:00
○開催地:新潟県湯沢町苗場スキー場
○主催:SMASH Corporation
○企画・制作:SMASH/HOT STUFF PROMOTION/DOOBIE,Inc.

⇒出演アーティストなど、詳細はコチラ
FUJI ROCK FESTIVAL ’16 公式サイト(外部サイト)

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