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EXILE・HIROに問われるプロデューサー力とは?

 2013年末にパフォーマーを勇退し、プロデュース業に専念したEXILEリーダーのHIRO。2014年はそんな新体制の幕開けとなる“EXILE TRIBE PERFECT YEAR”を掲げ、EXILEを始め、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE(JSB)、GENERATIONS from EXILE TRIBE、さらに彼らと同じ事務所LDH所属のE-girlsなどのグループ及び、ソロ活動も勢力的に行われてきた。それは改めてプロデューサー・HIROの真価が問われる“勝負の場”でもあった。

EXILE勢が年間TOP100内に11作!“三大帝国”がランキングを席巻

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 2014年の年間ランキングを見ると、シングルトップ100内だけでも、9位の「THE REVOLUTION」(EXILE TRIBE)を筆頭にLDH勢の全11曲がランクイン。その結果はジャニーズ勢、AKB48を含む秋元康プロデュースの女性アイドルグループ勢と共に、今や日本のランキングを席巻する“三大帝国”のひとつであるという存在感と、HIROのプロデュース力を見せつけた結果であることは間違いない。

 だが、そこまで数字を持ちながら、一般の知名度や浸透度となるとどうだろう。2010年のデビュー以来、右肩上がりの人気で単独ドーム公演が決定したJSB、初のアリーナツアーを成功させたE-girlsなど、後進のグループも着実に急成長しているが“お茶の間レベル”となると、まだ“人数が増えたEXILE”の時点でストップしたまま、それ以降の流れに追いついてない人が多いのも確かだ。「EXILEは知っているけど、ATSUSHIとTAKAHIRO以外はよくわからない」、「EXILEと“三代目”の区別がつかない」「E-girlsの金髪のコはわかるけど、それ以外のメンバーは知らない」など、ファン以外はそれぞれの存在こそ知っているが、グループ自体の個性や個々のメンバーの顔が見えてこないという人も多いのではないだろうか。

 その一方、今年に入りメンバーのソロ活動が活発になったことで、ファン以外の人たちにも彼らの存在が知られるようになったのも事実。だがピンで知っていても、グループでどんな活動をしているのかは見えてこないというメンバーも多いのだ。例えば情報バラエティ番組『バイキング』(毎週月〜金 前11:55〜後1:00 フジテレビ系)の火曜日MC担当のTAKIHIROとNAOTOや、『GTO』(フジテレビ系)など数々のドラマ主演をこなすAKIRA、バラエティ番組で活躍するメンディ関口。さらに映画『ホットロード』で映画初主演ながら、強烈なインパクトを残したJSBのボーカル登坂広臣、同じJSBのパフォーマーでドラマ『ディア・シスター』(フジテレビ系)などに出演し、着実に女性ファンを増やす岩田剛典など、その活躍は目覚ましい。ところが本人の知名度とグループの認知度が比例していないように見受けられる。彼らのピンの人気がグループの人気へとなかなか移行していないのだ。そういう意味でいちプロデューサーが率いるグループというところでは、AKB48人気を社会現象にまで拡大させた秋元康や、モーニング娘。で女性アイドルグループの一時代を築いたつんく♂の戦略は見事といえる。いわゆるスタープロデューサーのグループではないがジャニーズもまた、グループの認知度を一気に高め、ソロの“バラ売り”でさらに市場を拡大させた大成功例といえるだろう。

“プロ意識”の強さから“ソロ”と“グループ”を繋げにくい

 ではなぜHIRO率いるLDH所属のグループは、EXILE以外でそこまでの認知度や爆発的な現象を生めないのか。その理由として、ひとつには彼らの“プロ意識”の強さがあると思う。ソロで活動しているメンバーからはよく「つねにLDHの看板を背負っている意識を持ちつつ、ソロの現場ではそれを一切出さない。逆にグループの仕事にソロの仕事を持ち込まない」というコメントを聞くのだが、それは彼らのプロとしてこだわりでありHIROの教育の賜物だろう。でもそこが視聴者からすると、逆に“ソロ”と“グループ”を繋げにくくしているのかもしれない。

 さらに固定ファン以外の人達に知名度が浸透しづらいのは皮肉なことだが、そのプロ意識同様、歌やパフォーマンスの完成度の高さにも要因がある気がする。日本は未完のもの、つまりまだ出来上がっていない未熟さや少年・少女性といった“カワイイ”ものを愛する文化が根強い。男性グループでいえば、少年っぽいイメージが強いジャニーズがここまで愛される理由のひとつはそこだろう。だが、EXILEメンバーはその逆で、男っぽくてイカつい、いわゆる出来上がった“大人の男”のイメージがある。若手のGENERATIONSにしても、1人ひとりを見ると、まだあどけなさの残る若いメンバーが多いが、鍛え抜かれた肉体や完成されたパフォーマンスにフレッシュさは感じても“未熟さ”はまったく感じない。

 女性グループとなると、“カワイイ”人気はさらに顕著で、その代表格はAKB48。彼女たちは、同じクラスにいそうな身近な存在というところが最大の特徴だが、一方、E-girlsは、子どもの頃からキッズダンサーを努めてきたまさに精鋭ぞろい。初のアリーナツアーでも、徹底的に磨き抜かれたダンスやアクトのステージングを見せ、そのスタンスは素人っぽさで人気のあるAKB48とは対称的だ。

今後の課題は?――“身近なアイコン”の誕生で勢力図に変化も

 (他のLDHグループ含め)EXILEファンからしてみれば、そんな成熟したキャラクターや精度の高いスキル=プロとしての完成度こそ魅力なのだと思うが、カワイイ文化を愛する人たちからすると、良くも悪くも“隙”がなさすぎるのかもしれない。カワイイに象徴される親近感や同調性が薄く、「実力はスゴイとは思うけど、ファンにまではならない」というグレーゾーンを生んでいるのだ。

 では固定ファンの枠を取っ払い、ジャニーズファンやAKB48ファンをも取り込み、“EXILEファミリー”の明確なカラーなり個々の顔がお茶の間レベルにまでしっかりと入り込むためにはどうしたらいいか。やはり今言ったカワイイ要素、つまり“隙”を作っていく戦略がプロデューサー・HIROの今後の課題だと思う。そのために欠かせないのはプロ意識の強さや、パフォーマンススキルの高さなどEXILEカラーは継承しつつ、その一方でそれぞれのグループに老若男女、誰もが興味を引く“身近なアイコン”を誕生させることじゃないだろうか。例えば、AKB48の元メンバー・前田敦子のような絶対エースという王道感と親近感を併せ持つグループの看板的な存在。もしくはちょっとズレた個性で新たな女性アイドル像を作った亜流のスター・HKT48の指原莉乃など、タイプは違うがその顔を見れば、誰もが自動的に所属しているグループ名を思い浮かべてしまう突出したキャラクターの存在だ。

 そのスタンスに必要なのは“この人ならマネできるかもしれない”と思わせるリアリティーを伴った憧れ要素かもしれないし、ダメな部分も惜しみなく見せてしまう、ちょっと破けたキャラかもしれない。何が受けるのかはわからないが“隙のない優等生”でないのは確か。むしろアンチが出ることも厭わない賛否両論のニュース性や、日常レベルで話題にしたくなる親和性の高い要素が必須で、それが固定された人気(ゾーン)に新たな流れ(ファン)を送り込む、起爆剤のひとつにはなるだろう。実際、現在ソロで活躍しているメンバー以外も、各グループを見ていくと、本当に1人ひとり個性豊かな上にユニークで、メンバー層の厚さからしてもパーソナルなポテンシャルは無限大。HIROの手腕によって彼らから新たな魅力を引き出し、どこかでそのキャラが爆発、各グループへと飛び火していけばが、“三大帝国”の勢力図が変わる可能性は十分、あるはずだ。

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