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いきものがかり『“的を外さない”ポップセンスの良さが光る新作とは!?』

テレビアニメ『七つの大罪』(MBS/TBS系)のオープニング曲「熱情のスペクトラム」と報道番組『NEWS23』(TBS系)のエンディング曲「涙がきえるなら」の両A面シングルをリリースした。強く激しいロックチューンと、優しく穏やかなバラードという、対極の2曲を1枚にした今シングルは、彼らの多彩な振り幅を明確に打ち出した作品。どんな曲も決して“的を外さない”、ポップセンスの良さを改めて感じられるはずだ。

歌謡ロックは、自分たちの持ち味のひとつ

  • いきものがかり(左から)水野良樹、吉岡聖恵山下穂尊

    いきものがかり(左から)水野良樹、吉岡聖恵山下穂尊

――「熱情のスペクトラム」は、アップテンポなエモーショナルナンバー。この路線はシングルでは久しぶりですね。
水野良樹これはアニメ『七つの大罪』のために書き下ろした曲なんですけど、先方からのイメージもあって、こういうマイナーアップテンポがいいんじゃないかなと。「ブルーバード」や「HANABI」のような歌謡ロックは、自分たちの持ち味のひとつでもあるので、その方向で作り始めました。

――アニメ主題歌の王道感を守りながら、オリジナリティーもある。そのブレンド感は熟練の職人技の域に達してますね。
水野いえいえ(照笑)。いつもアニメの曲を作るなら、アニソンと言われるぐらいのものにしようとは思っているんですけど、『七つの大罪』は主人公たちがマンガの世界の中では悪人で、敵側が正義って設定されているところが、今の世情にも通じている気がして。しかもみんな人間離れした能力者なのに、その人たちを動かすキーパーソン的な女の子だけ能力を持っていないってところも面白い。特別な力ではなく、小さなアクションで想いを届けるっていうところは自分たちも共感できるし、歌詞にも落とし込みやすかったんですよね。

――“スペクトラム”って言葉もインパクトがありますが。
水野最初、タイトルは光をイメージする言葉がいいねって話していたんですよ。それで、辞書で調べたらスペクトラムは、分布図って意味もあるらしくて。いろんな“正義”が分布してるってところでアニメと繋がるし、さらに“情熱”ではなく“熱情”をつけることで、より激しい感じにしたかったんですよ。

――情熱と熱情の違いは?
水野情熱はコントロールできている感じ。で、熱情はもっと取り乱しているというか、まとまっていない感じですかね。そのとっちらかったイメージが曲のテーマと合っている気がして。

――“とっちらかってる”って、言い得て妙かも(笑)。3人もそういうことはあります?
吉岡聖恵私は基本的にいつもとっちらかってますよ。仕事もそれ以外も(笑)。
水野確かに吉岡はよくとっちらかってる(笑)。ライブ前の緊張も顔に出てるし。逆に山下はいつもマイペース過ぎるぐらいですね。彼は遅刻しても“あ、スイマセン”みたいな軽い感じで現れるから、“イライラしてる僕らが悪い?”みたいな空気になって誰も怒らないっていう。あれはもう才能ですよ(笑)。
吉岡それって育ちだと思う。和やかな空気を連れてくるんです。
山下穂尊親にもよく“ヌカに釘”って言われてました(笑)。
吉岡それ、キャッチフレーズにしたら?

――(笑)。歌うときにこだわったことは?
吉岡力強さのなかにファンタジーっぽい謎めいた感じがあったので、今回はもう、そのなかに身を委ねました。

高校生の頃は(曲作りも)単純に楽しかった

――聴き手を曲の世界に“持っていく感”も強いですよね。エッジの効いた歌声も相まって、強烈に巻き込んでいく感じ。
吉岡キレのある感じは意識しました。あと落ちサビで粘りというか。コブシまではいかないけど、グッと下に掘り下げながら歌うようにしたのもこの曲ならではだと思います。

―― 一方の「涙がきえるなら」は「熱情のスペクトラム」とは真逆の穏やかな曲。作曲が吉岡&水野、作詞を吉岡&山下という、いつもとは違った作り方になっていますね。
水野この曲は、もともと吉岡が作ったベースがあって。淡々と歌ってる感じがすごく良かったので、その持ち味を共有しつつ僕がサビをつけて、歌詞の部分を山下がサポートしたっていう流れで作ったんですよ。
吉岡私は『NESW23』のエンディングってことだったので何かを主張するような曲というよりは、いいことも悪いことも包み込むようなフラットな状態というのを意識していたんですね。で、最初の2行はまさにそのイメージで書いたんですけど、2人がそれを上手に生かしつつ、広げくれたのはちょっとすごかった。よくここまでやってくれたなと。
水野淡々としてるけど熱があるみたいな、そういう雰囲気はうまく表現できたよね。
吉岡だから歌うときもなるべく、さりげなくしたいなと思っていて。ぽつりぽつりつぶやく中で静かに内面が滲み出てくるような、大げさじゃない感じにしたかったんです。で、Aメロから繋がる“yeah”の部分もあえて抑えて、言葉にならない強さとかもどかしさが思わずもれ出ちゃったような“yeah”にしたいなと。

――静かだけどすごく雄弁で熱い“yeah”ですよね。熱情が溢れ出るまま歌っている「熱情のスペクトラム」と、それを極限まで抑える「涙がきえるなら」と対照的な歌唱ですが、どちらが歌っていて難しいですか?
吉岡気合いが入っちゃうタイプなので「涙がきえるなら」のほうが難しいかも。でも歌うときはその曲のことしか考えてないし、そのときの自分の状態によっても変わるから、比べられないですね。落ち込んでいたら、むしろ「涙がきえるなら」のほうが入りやすいこともあるし。最終的にはどの曲もオケに助けられて、自然に入っていけてる気がします。

――楽器隊の2人も、心の状態で演奏が変わることはあります?
山下楽器よりは曲を書くほうが感情に左右されるかも。
水野やっぱ人間だからね、“いまラブソングかよ?”っていうのはありますよ(笑)。でも何とかしていくしかない。

――そのコントロール力はかなり鍛えられたんじゃないですか。
水野いや、前より自然にできなくなった。昔は若いから楽しく書いていたし、書かなきゃみたいな追い込まれ感もなかったというか、みんな優しかったから(笑)。
山下高校生の頃は単純に楽しかったよね、書くのが。新曲やるのも楽しみだったし。
吉岡飲み会みたいになってるよ、話が(笑)。

――(笑)。生みの苦しみは増していると。
山下それはあるけど、今は追いつめられたときにあえて目先を変えてお遊びの曲を作るとか、そういうのもまた楽しいんですよ。曲作りの姿勢みたいなものは変わったけど、作る面白さは変わってない。それが続けてこれた理由じゃないかな。
(文:若松正子)

「熱情のスペクトラム」ミュージックビデオ

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