嵐から東方神起まで…東京ドームをたった一晩で野球場から音楽ステージに変える設営テク
野外ステージにおけるライブ会場の安全対策
能見氏屋外セットでは風速計なども活用して、安全を確保しながら行います。設計段階から、風速何メートルまでならこういう作業ができます、でもこれを超えたらいったん中止させてください、といった情報は会場や主催者さんと共有しています。それでも、瞬間的な突風で計算以上のダメージを受けるといったことは起こり得る。ですから、同業他社も含めて業界全体で安全基準を考え、それを守ることを徹底しようということで、2000年度からJASST(日本舞台技術安全協会)が立ち上がりました。
秒単位、ミリ単位の演出に対応できる最新機材
能見氏新しい機材やテクノロジーなどに対して、どうやったら自分たちのものにできるか、常に研究・研鑽を続けています。海外製品を日本流にうまくアレンジして活用することもそうですし、自社開発の機材もある。
たとえばベルギーのSTAGECO社のルーフ機材は、導入当初は12時間以上かかって組み上げていたものが、現在では9時間ほどで組めるようになっています。これは、年に一度、全国の拠点からスタッフを集め、実際に組み上げ、解体するトレーニングを行ってきた結果。また、アメリカのCOLUMBUS McKINNON社のCMモーターという照明トラスなどを吊るホイストは、世界の同業他社でも数百台程度の所有というレベルのものを、私たちは約3500台保有しており、自分たちでメンテナンスまでできる体制になっています。
かつては割と大雑把な油圧式シリンダーだった昇降装置は、電気制御のジップチェーンリフターというものに代わり、秒単位、ミリ単位での演出に対応できるようにもなってきています。アーティストさんサイドからこういう演出で、と要望があれば、機械メーカーさんと一緒になって開発から考えることもあります。
ステージを組むだけではなく、微調整し、リハーサルでまた調整し、本番を見守り、撤収する。もちろん大変な仕事なのですが、それだけにやりがいも大きい。観客からはよくわからないような部分でも、自分の関わったところがピタッと決まった瞬間などは、本当にたまらないですよ。バックステージの役割に重要性を感じるような人には、とても刺激的。エンターテイメントに携わる楽しさのひとつが確実にありますからね。