嵐から東方神起まで…東京ドームをたった一晩で野球場から音楽ステージに変える設営テク

日本におけるコンサートやスポーツイベント、展覧会などの設営を担う業界最大手のシミズオクト。自身が手がけた今年の「氣志團万博2019」は、台風15号で大きな被害を受けた状況で、見事な対応をみせた。東京オリンピック・パラリンピックが近づくなか、日本が誇る同社の設営ノウハウを改めて解説する。

東京ドーム内に向かう100台のトラックをコントロール

  • 芝を養生するシートをかぶせて…

    芝を養生するシートをかぶせて…

  • ベニヤ板を敷いて床を補強

    ベニヤ板を敷いて床を補強

  • 60~100台以上のトラックが、入れ替わりで機材を搬入

    60~100台以上のトラックが、入れ替わりで機材を搬入

  • 深夜1時過ぎにようやくステージの概要が完成

    深夜1時過ぎにようやくステージの概要が完成

 おそらく東京ドーム開催のコンサートに足を運ぶ際、あの大きなステージがどの程度の時間と労力で構築されているのか、あまり深く考えたことはない人がほとんどだろう。シミズオクトは、東京ドームを舞台にした多くのコンサートで会場設営に携わってきた。同社の常務取締役、能見正明氏に話を聞いた。

能見氏多少なりとも建築に知識がある人が見れば、ドームクラスのステージを建てるには数日かけていると思われています(苦笑)。ですが、野球の試合の終わった翌朝にはもうステージの基礎が組み上がっている。いえ、組み上がっていなければならないわけです。照明などの設備を吊り下げる、ステージの天井に当たるブドウ棚のような部分も組みます。

 試合が終わってまずは、芝の養生をするシートをかぶせ、ベニヤなどでさらに補強して、やっと機材車などが入れるようになります。その時点で、もう午前1時とか2時とか。そこから本格的に設置がスタートする。東京ドームで行うコンサートなら、最低でも60台くらい、多いと100台以上のトラックが入ってくる、それをいかに効率的に搬入・搬出してもらうか。無線で、次はこれ、次はこれ、と効率よく動かしていくこともノウハウのひとつです。バンドなのか、アイドルなのか、上演する演目によってもコントロールの仕方は変わってきます。

 人員としては、弊社だけでも60人から100人、アルバイトも入れて150人以上。全体で考えると、お弁当の数では300個くらい用意されていますから、それだけの人数が会場づくりに関わっているということになります。結局、個人のスキルもそうですが、チームでどう効率的かつ有機的に動けるか、ということがポイントになってきます。

台風15号大ダメージのなかで開催した「氣志團万博2019」

  • 『氣志團万博』(C)上山陽介

    『氣志團万博』(C)上山陽介

 2012年から千葉県袖ケ浦で毎年開催されている『氣志團万博』では、デザイン・設計・製作・施工・映像技術・運営・管理・警備と、シミズオクトが有する能力をフルに開示。初回から特別協賛としても参加しており、同社にとってひとつのショーケース的な側面もある。2019年の公演では、その直前に台風15号の上陸があり、会場およびその周辺地域にも停電・断水など大きな被害が発生したなかでの開催となった。

能見氏海浜公園に設営中だったステージも被害を受けましたし、楽屋のプレハブもダメになったり、かなりの被害がありました。また、そもそも開催地域が大きなダメージを受けているときに、そんな音楽イベントを実施していいのか、という議論もあった。ですが、あえて開催することで地元を元気にしたい、という主催の氣志團さん側の強い思いもあり、我々も壊れたものは速やかに補修・交換し、対応しました。地元貢献という意味では、袖ヶ浦市に対して、ブルーシートの寄付等も行っています。野外現場に限らず予備機材も含め、自然環境に対する事前の備えを常に行っています。何もない場所に大勢が集まるイベント会場を設営することはシミズオクトのもっとも得意とする分野でもあります。

提供元: コンフィデンス

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