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高橋一生、歌手活動から生じた俳優業への気づきと変化「できることへの限界を感じた」

芝居に対して潔癖さや、他者との関わり方にも、音楽活動を通して変化が

──では、歌手活動についてはいかがでしたか?
高橋 レコーディングを終えてから『東京独身男子』の現場入りをしたことで、現場のスタッフワークが改めてよく見えてくるようになりました。歌手活動を経験するまでは、アーティストの方は0(ゼロ)から1(イチ)を生み出しているイメージが強かったんです。一方で俳優は役なり台本なり、すでに存在しているものに乗っかっていく側面が大きい。そういう意味で、どこかアーティストの方にコンプレックスがあったのかもしれません。けれど実際にレコーディングを経験して、1曲に関わる人数の多さ、それもすべての人がこんなにも物理的に関わっているんだということを知ることができました。

──「レコードショップにあいさつ周りをするなかで、店員さんのポップに感動した」とコメントされてましたよね。さまざまな場面で音楽を支えている人たちがいることを実感されたと。
高橋 俳優もいろんな場面で「誰1人欠けてもこの作品はできないんだ」と実感することはあります。それこそ映画の舞台挨拶で映画館に伺ったときに、館主の方がその作品への思いを語ってくださったり。関わった人それぞれの作品に対するストーリーに触れるたびに「1人じゃない」と思える、その感覚は年々大きくなっています。もちろん、今までもわかっていたつもりではあるんですが、さきほどの“知識と経験の差”のように、レコーディングという新たな経験を通して、いま改めてそのことを咀嚼し直している最中なんだと思います。少し前までは芝居に対して潔癖なところや、自己で完結させなければという感覚が強かったんです。他者と関わると芝居が脆くなる気がしていて──。けれど自分の範疇でできることには限界がある、ということに遅まきながら気づきました。

──歌手デビューも、その気づきのきっかけになったのでしょうか?
高橋 そういう側面もあります。自分ですべてをコントロールせず手を離したら、自分の範疇外の出来事が起こるようになりました。そこに楽しみを見出せるようになったのかもしれません。もちろん自発的な選択はしますが、自分1人で何かを起こそうというよりも、他者に振ったときに返ってくる、その反射がどういうふうに発展していくかを、これからはもっと楽しんでいきたいです。

(文/児玉澄子 写真/逢坂聡)

「きみに会いたい-Dance with you-」MV

提供元: コンフィデンス

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