磯村勇斗が語る、『きのう何食べた?』小悪魔少女をイメージした同性愛者役の新境地
余計なプライドがなくなった気がします(笑)
磯村勇斗絶対やりたい! しかありませんでした。今まで同性愛者の役は演じたことがなかったし、西島秀俊さん、内野聖陽さん、山本耕史さんというすばらしい役者の方々とご一緒できると聞いて、すごくうれしくて。ただそのぶん、未経験の分野に飛び込むことへのプレッシャーとの闘いもありました。
――ヒゲにボサボサ頭のビジュアルは、原作ファンからも「ジルベールそっくり!」と好評です。
磯村勇斗無精髭と無造作な髪型のインパクトがすごく大事な役なので、ビジュアルには気を使いましたが、メイクさんとスタイリストさんががんばってくださって、すぐ役に入ることができました。撮影しているうちにどんどんなじんできて、普段の生活でもボサボサ頭にヒゲのまま街を歩けるようになりました。余計なプライドがなくなった気がします(笑)。
――原作では、口調や仕草が女性っぽいですよね。それも近づけているのでしょうか?
磯村勇斗そのバランスはすごく難しかったです。いわゆる“オネエ”っぽさを出しすぎると、やりすぎな感じが出てしまうので……。監督と一緒に調整しながら、最終的には小悪魔な少女みたいな感じをイメージしました。子どもっぽい役なので、ワガママな少女らしさを出せたらいいなと。監督が「自由にやっていいよ」と言ってくださったので、楽しく演じることができました。
――かなりワガママで毒舌です(笑)。恋人の大策(山本)を振り回す姿がおもしろいです。
磯村勇斗山本さんが本当に“大ちゃん”として目の前で生きていて、何を言っても受け入れてくださるので、すごく自然に役に入ることができました。普段の磯村勇斗と山本さんだったら、絶対言えないようなセリフばっかりでしたから(笑)。監督から「アドリブで会話してください」と言われたシーンでは、勢い余って「ウルサイ!」「黙って!」みたいなことも言ってしまって、さすがに言い過ぎたかなとあとで反省したこともありました(笑)。
ワガママって意外と愛されるんだと気づきました
磯村勇斗シロさん(西島)とケンジ(内野)と大ちゃんと4人でご飯を食べているときも、シロさんが作った料理に対して「見た目が悪い!」「こんなに食べたら太っちゃう!」とか言っていて。これは相当ワガママだなと(笑)。でも、文句を言いつつバクバク食べるから、シロさんたちもどこかで“カワイイな”って思ってくれている。ワガママって、意外と愛されるんだと気づきました。
――航がワガママな行動を取ってしまうのは、すべて大策の愛を試すため。大策はそれを喜んでいる節もありますが……2人の関係を理解できますか?
磯村勇斗“好きな人を試す”というのは、僕にはまったくない発想です。だから、きっと女性特有のやり方なんじゃないかなと。大ちゃんのほうも、航に家を閉め出されているのに、なぜか喜んじゃって。ドMですよね(笑)。すごく不思議なカップルだけど、意外と長続きするのってこういう関係なのかなと思いました。ガヤガヤ言いながらやり合えるのって、すごくいいこと。この2人は、きっと歳を重ねても付き合っていけると思います。
磯村勇斗4人ともタイプの違う同性愛者役なので、お互いのことを話したりしました。「シロさんは同性愛者に見えないねぇ〜」「ケンジはカワイイから好きになっちゃうねぇ〜」「航はつかみどころがないっ!」みたいなことを(笑)。大ちゃんが航にデレるときは、「そんなにデレる!?」ってみんなで笑ったり。本番前になると、4人で“このシーンはこうしたほうがいい”という意見交換ができたのも、すごく貴重な経験でした。大先輩の作品づくりの現場を、生で見させていただけてうれしかったです。
――作品のなかでの役割は、どんなふうに意識していましたか?
磯村勇斗ワチャワチャした楽しいシーンもある作品ですが、同性カップルの愛は本当に成り立っているのか、受け入れる側の家族はどう思っているのかという、難しいテーマも描かれています。原作だと、航も家族との間に複雑なものを抱えていて、愛を知らないんです。物語が進むうちに、航が作品のシリアスな部分を進行するきっかけになっていくので、難しいテーマをうまく伝えられたらいいなと思っていました。