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ガガガSP、かりゆし58が所属、飲食業も好調の異色“音楽”企業「LD&K」が目指す新スタンダード

 25周年イヤーに突入したLD&K。同社を創業し、けん引してきたのが大谷秀政氏だ。早くからその経営手腕は注目されていたが、その思考法は至ってシンプル。アーティスト活動をいかにして継続させていけるか。飲食業への展開もそのためだと語る。その結果、業界に先駆けて360度ビジネスに取り組むことにも繋がった。改めて25年を振り返ってもらうとともにこれまでの知見を踏まえ音楽業界における課題についても語ってもらった。

飲食事業も目的は アーティストの面倒を見るため

  • LD & K 社長/オーナー 大谷秀政氏

    LD & K 社長/オーナー 大谷秀政氏

――LD&Kは1995年に設立され、今年で25周年。この二十数年で音楽業界は大きく様変わりしましたが、LD&Kは個性的なアーティストを輩出し、存在感を発揮しています。
大谷 最初から独立した活動を続けていましたし、“下請けはしない”、“クライアントもいない”という会社なので、固定概念に捉われなかったのが大きいです。無邪気というか、アーティストで金儲けをする気がないんですよ。大事なのは、どうすれば安定した活動を続けられるのか、ということ。音楽がなくなることはありませんし、根っこの部分をしっかりやればいいというスタンスなので。

――“根っこの部分”とは?
大谷 レーベルとしての機能よりも、事務所としての役割が大きいと思います。CDを出して売ることではなく、アーティスト活動を継続させることが自分たちの仕事だと思っているので。LD&Kは創業当初から360度ビジネスを展開していますが、アーティストの活動を成立させるためには、そうせざるを得なかったんです。数年前から大手のメジャーレーベルも360度ビジネスを打ち出していますが、弊社は25年前からやっています。もう1つの特徴は、新人開発に力を入れていること。自社でライブハウスを運営しているのも、バンドを育てるためですし、毎年開催している『TOKYO CALLING』という日本最大級のサーキットイベントも、新人発掘の場所。300以上のバンドが出演しますが、デモテープをすべて聴いているので、将来性のあるバンドを見つけやすいんです。契約したアーティストはできるだけ長く面倒を見るのも弊社の基本的な考え方です。

――“面倒を見る”という表現は御社の姿勢をうまく言い表していますね。
大谷 仕事は“人と人”ですから。たとえばガガガSPは、ここ数年はしばらく赤字ですが、稼げた時期もあるわけで、“利益が上がらなくなったから、契約を切ります”はおかしいでしょう。メジャーだったら“売れなくなったら切る”という判断があり得るのかもしれませんが、僕の基準は違うし、やはり面倒を見るべきだと思うので。LD&Kは飲食店の事業も展開していますが、その最初の目的も“アーティストの面倒を見るため”だったんです。ロックバンドは休止したり、解散することもあるし、安定した収益なんて得られない。どんなアーティストでも、CDを売り続けることは難しいし、そのときにどうするかを考えるのが事務所ですから。

――アーティストへの愛ですね。
大谷 アーティストがいなくなるのは寂しいじゃないですか(笑)。バンドのメンバーにも家庭があるし、そこまで考えて経営しないとダメだと僕は考えてますけどね。たまにウチのアーティストから『社長は飲食店に熱心で、音楽はもう好きじゃないんでしょ?』と言われるんだけど、『おまえらを食わせるためにやってるんだよ』ということですからね(笑)。関わってくれた人には、できるだけ希望を叶えてあげたいし。それは飲食店も同じですね。

音源だけでビジネスを続けている 企業はますます厳しい

――LD&Kは昨年、「音源リリースの契約形態はアーティスト自身が『選ぶ』時代へ」というテーマを掲げ、「小売店へ流通しない」レーベル契約など、新しい基準を設けました。
大谷 アーティストは個人事業主ですが、契約の内容、仕事の仕組みがわからないまま活動しているケースが多いので。いちばん問題点は、CDの利益の約半分を流通に取られていることだと思います。アーティスト印税は1〜2%が一般的で、原盤権を持っていても十数%前後。CDの販売数がシュリンクし続けているなか、流通のコストだけが変わらないのは大きな課題でしょうね。さまざまなイノベーションによって、流通も変わっているのに、その変化を活用できていないのです。

――制作費が下がっていることも指摘されています。
大谷 流通のコストが軽減できれば、制作費ももう少し確保できると思います。LD&Kの場合、音源の収入よりも、ライブ、グッズの収入のほうが多くなっています。10年前に比べると、音源の売上は半減していますが、ライブの収益は4〜5倍になり、それに伴ってグッズの売上も上がっているので。アーティストと話をしていても、CDよりグッズの売上に興味がある人が多いですね(笑)。いずれにしても我々のやり方であれば、全体のバランスさえ取れていれば、どこが減ってどこが増えても問題はない。音源だけでビジネスを続けている企業はますます厳しいでしょうね。

――いずれは業界全体が完全な360度ビジネスに移行せざるを得ないと。
大谷 そう思います。つまり、音楽業界の縮図なんですよ、LD&Kは。多くのレコード会社は、アーティストを取り巻く収入の一部だけを手掛けているに過ぎないし、しがらみに捉われているうちにIT業界に取って代わられるでしょうね。百貨店が衰退し、ZOZOTOWNなどのIT企業が台頭したアパレル業界と同じです。

――メジャーのレコード会社も新規事業領域への進出に積極的で、改革への意気込みは強く感じられます。
大谷 産業として適正に近づいているのだと思います。こういう状況になるのは配信がスタートした時点でわかっていたことだし、私の感覚では、5〜7年くらい遅いくらいです。一方でライブ業界はすごい勢いじゃないですか。そう考えると、メジャーのレコード会社がいちばん上だった従来の音楽業界の構造も変わってくるでしょうね。レコード会社の下に音楽事務所やイベンターが存在してるのではなく、すべてフラットになると言いますか。いまだに“上から”ですからね、レコード会社は。我々が発掘し、育ててきたアーティストに対し、“こっちでやってあげるから、グッズの権利も譲渡してほしい”という話をされることがいまだにありますが、どうしてそういう発想になるかわからない。大手も360度への移行を模索しているんでしょうが…。レコード会社がライブハウスや飲食店を手掛けることが増えていますが、それもウチの真似ですから(笑)。

―― 一方で、メジャーレーベルと組む理由や利点もあると思います。
大谷 あまり見当たらないですね。弊社のプロモーション部門はかなり強力で、地上波のテレビで取り上げられることも多いし、CDショップの店頭展開もできている。タイアップやSNS対応にも強く、メジャーと比べても遜色ないので。ただ、会社の規模として、抱えられるアーティストは10組くらいが限度なので、メジャーと組むことで人員を補えるのはよいかもしれないです。メジャーとインディーズの境目も曖昧ですし、LD&Kはそういう枠を超えた、音楽業界の新しいスタンダードを目指します。

――日本でもサブスクリプションが浸透しつつありますが、LD&Kは以前からいち早く解禁していますね。
大谷 全部やったほうがいいですよ、それは。サブスクが便利だと思っているユーザーは、おそらくCDは買わないわけで、音楽を聴けるチャンネルは減らさないほうがいいです。これは良い、悪いの問題ではなく、マーケットに任せるべき。すべてはお客さんが判断することだし、市場の動向には抗えないですからね。現時点で、サブスクで聴けないアーティストも、いずれは開放することになるでしょうし、その対応の遅さのほうが問題だと思います。

――アジアなど海外への進出についてはどのように考えていますか?
大谷 打首獄門同好会が今年の3月に台湾のフェスに出演したのですが、お客さんが日本語で合唱していて、すごい盛り上がりでした。現地のファンにもかなり聴かれているようなので、機会があったら今後もぜひやりたいです。ただ、それもアーティストの意向次第ですよね。アーティストが海外でやりたいと言えば、市場を調べて対応しますが、こちらから無理にやらせることではないので。クールジャパンのようなやり方も好きではありません。お金を使って進出してもしょうがないし、自然な形でファンの心理にアピールできないと、広がらないので。Zeppがアジア各都市に展開しはじめていますが、まずハコを作るという考え方は正しいし、上手いやり方だと思いますね。

――自身で音楽レーベルや事務所を立ち上げる若い人も、もっと出てきてほしいですね。
大谷 レーベルも飲食店も、ハードルが高いイメージがあるみたいなんですけど、思い切ってチャレンジしてほしいですね。小さいレーベルや店が増えたほうが多様性は増すし、奥行きも増える。カルチャーはそうやって発展するものですから。音楽ビジネスに興味がある人、すでに関わっている人を含めて、もし聞きたいことがあるのなら、ぜひ相談に来てほしいと思っています。

文/森朋之、撮影/西岡義弘
大谷秀政氏(おおたに ひでまさ)
エル・ディー・アンド・ケイ 社長/オーナー
1968年愛知県生まれ。22歳でデザイン事務所ビックボスを設立。同社は95年にLD&Kに社名変更。01年の「宇田川カフェ」のオープンを皮切りに、東京、大阪、神戸、大分、沖縄などで、カフェやバー、ライブハウス、宿泊施設などを運営。音楽プロダクションとしては、ガガガSP、かりゆし58、打首獄門同好会、ドラマチックアラスカ、中ノ森文子、日食なつこなどが所属。レーベル事業、プロダクション事業のほか、上述した飲食業や、近年はクラウドファンディングなど新規事業も積極的展開。
『Jazz bar 琥珀-amber-』
4月12日、渋谷にジャズバー「Jazz bar 琥珀-amber-」をオープン。ドラムセット、 Fender Rhodesなどセッションも可能なサウンドシステムを常設。メニューはスモークウィスキーや、 宇田川カフェ由来のオリジナルブレンド豆を使用した「自家製珈琲焼酎」、 季節の果物を日本酒に漬けた「日本酒サングリア」、 フードメニューは通年おでんを提供するなど、 ここでしか得られない和らぎの時間を味わえる。
◎住所:東京都渋谷区宇田川町17-1 ブラザービル 6F
◎TEL:03(6455)0505
◎営業時間:日曜日〜木曜日19:00〜翌2:00/金曜日・土曜日19:00〜翌朝5:00

提供元: コンフィデンス

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