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熱血教師ドラマ『3年A組』、10代にメッセージを届けるために辿り着いた答え

同業者から見たら「こんなストレートなセリフ書きやがって」

――教師から生徒への毎話のメッセージは、シンプルでストレートな言葉だったのが印象的です。
武藤将吾そもそも主人公が思いの丈を吐露するより、その表情や背中で表現するのが良い脚本と言われています。でも、今回は10代の子たちに100%こちらのメッセージを受け取ってもらいたかったので、極力難しい言葉や比喩的な表現は使わずに、ストレートにシンプルな言葉をぶつけたいと考えました。だからこそ、それを成立させる為の状況を作る。ストレートなセリフを吐いても説教に見えない、もしくはその説教が必要だというシチュエーションを作ることが大事だと思ったんです。もちろんセリフ自体にもメッセージを込めますが、それ以上に、説教しても許される状況を作ることに重きを置きました。ですから、脚本賞をもらえるとは思っていませんでした(笑)。同業者から見たら「こんなストレートなセリフ書きやがって」と思われるだろうなと勝手に想像していたもので。ただ、僕としては、そういうセオリーにとらわれずに、今の10代の子たちに自分が伝えたいメッセージを物語としてどう届けるかを考え抜いて、たどり着いた答えだったので、それを評価していただけて本当に嬉しかったです。

――決めセリフとなった「レッツ・シンク」はどう生まれたのでしょうか。
武藤将吾もともとこの作品のテーマとして、大人になるということはそれまでは勢いでできたことも許されなくなる、そのときどきで流されて刹那的な行動をするのではなく踏みとどまって考える、しっかり理性を保って行動ができるか、ということを若い世代に向けて伝えたいという想いがありました。それを決め台詞として毎回主人公が言ったら面白いんじゃないかと思いまして。英語にしたのは、若干の違和感を抱かせる為です。ただ「考えよう」だけだと言葉が流れてしまうと思ったんです。最初は違和感がある言葉だけど、繰り返して使っていくうちに、だんだんと言葉に重みが増してくる。そんな想いから生まれた言葉ですが、ここに辿り着くまでには、それこそ何パターンも考えました(笑)。決め台詞のチョイスは簡単のようで毎回本当に悩みます。

放送中の視聴者の声から迷いも生じた

――最終話の結末は最初から設定されていたのでしょうか。
武藤将吾むしろ最終回で一颯がネットに問いかけるということだけを決めてスタートしたくらいです。そこに向かって、どう視聴者を撹乱させて物語に引きつけるかを考えていきました。ただ、放送中に犯人は誰?みたいな話で視聴者が盛り上がったときは、内心ドキドキしていました。武智が犯人というのは最初から決めていたのですが、視聴者の皆さんが「真犯人は〇〇だ!」みたいにかなり深読みしていたので(笑)。でも、この物語は犯人探しが肝ではなかったので、プロデューサーには冗談で怖い怖いと言いながら、ラストを変えようとは思いませんでした。さくら(永野芽郁)が澪奈の手を離してしまうのも最初の考えにありましたし、武智が加害者から被害者になるという展開も予定通りでした。とくに武智は、澪奈を自殺に追い込んだ犯人である一方で、自殺した澪奈の心情を追体験する重要なキャラクターだったので、彼を通して自分なりにちゃんとテーマを伝えられてよかったです。初志貫徹できてホッとしました。

――最後に柊から生徒たちに「卒業おめでとう」という言葉がありました。そこに込めた意味は?
武藤将吾一颯は、第1話で「お前らいったいなにから卒業するんだよ」と言っているんですけど、その10日間で想いがしっかり届いて成長した彼らの顔を見たとき、この言葉しかないと思いました。彼らにもう「レッツ・シンク」は必要ありませんから。生徒たちへの最後のメッセージがこの台詞で締め括れてよかったです。
(文:編集部・武井保之)

提供元: コンフィデンス

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