レコード大賞、紅白歌合戦がシングルセールスに及ぼした影響とは?
デジタルシングルのDL売上は7作品平均で前週比573%に
そんな両番組の影響力について、これまではCDでしか計ることができなかったが、オリコンでは一昨年からデジタルシングル(単曲)ランキング、今年から合算ランキング及びストリーミングランキングの発表を開始し、より詳細に視聴者動向を把握することができるようになった。そこで今回は、編集部が注目した7曲のセールスデータを見ながら、視聴者がどのように音楽を購入していたのかを探ってみたい。
まずCDセールスについて。18年12/31付と19年1/14付で比較をすると、7曲の平均上昇率は322%。これが、長年音楽業界が経験してきた「年末の2大番組効果」だ。ほとんどの楽曲が、CDセールスとしてはひと山越えてしまったにもかかわらず、ここに来て3倍以上の売上を記録するのだから、その威力がよく分かる。
ところが、このCDセールス以上の売上を示したのがデジタルシングルのDL売上だ。7作品平均で573%。ドラマ主題歌として大ヒットしたMISIAの「アイノカタチfeat.HIDE(GReeeeN)」に至っては、2週前に記録したDL数の13倍という驚異的な伸びを示した。
ストリーミングはどうだろう。こちらは「Lemon」が未解禁、「世界はあなたに笑いかけている」が解禁前ということで5曲分のデータとなるが、対12/31付で平均179%。伸び率としては最も少ない数値だった。
ライトな音楽ファンはCDからDL購入へ、いまだハードルが高いサブスク
もう1つ気にしておきたいのが、国民的番組になればなるほど、デジタルDLは強いということだ。まだ世の中にCDしかなかった時代、「紅白歌合戦」を観た翌日、CDショップに駆け込み、気に入った曲を購入していたライトな音楽ファンが、今は気に入った曲を見つけたら即座にデジタルDLで手に入れることができるようになった。それが、573%という数値に表れていると想像できる。
しかもそうした人たちの多くは、まだ有料のストリーミングサービスは活用していないのだろう。一部の熱心な音楽ファンではなく、大多数のライトな音楽ファンでも観る国民的番組だからこそ、このような現象が起こったのではないか。
音楽業界にとっては、姿が見えづらくなっていたこれらのファンの存在を、改めて強烈に印象付けたことで、19年のデータ分析に活かしていきたいと思う。