2019年のエンタメトレンドは「リイマジンド=再創造」
関連作品をも生み出した映画音楽の圧倒的な魅力
米国内でも、楽曲人気が映画の観客増に貢献したという評価もあるほど、音楽は圧倒的な魅力を放つ。そして、その勢いはついに関連作品を生み出すまでに。P!nkやキアラ・セトル、ペンタトニックス、クレイグ・デイヴィッド、ケシャといった超豪華アーティストが、『グレイテスト・ショーマン』の珠玉の名曲たちを歌った『グレイテスト・ショーマン:リイマジンド』がそれだ。カバーアルバムのようだが、タイトルが「リイマジンド」となっているように、単なるカバーアルバムではない。そして今、このワードが重要なキーワードになっているようなのだ。
「reimagined」とは、「新たに創造する」という動詞。この言葉がタイトルに含まれたアルバムとしては、2006年リリースのニーナ・シモン『Remixed&Re-Imagined』と、2007年のビリー・ホリディ『Remixed & Reimagined』まで遡る。ビリー・ホリディのアルバムは、14人のリミキサーが彼女のボーカルトラックを使い、ヒップホップやEDMサウンドに生まれ変わらせたもの。マニアックな作品だが、50年以上も前のボーカルトラックを使いながら、サウンドの完成度は驚くほど今の時代に合った洗練さを感じさせ、まさに「reimagined」な作品となっている。
今の時代に合わせ独自の方法で再創造する「リイマジンド」
また、70年代に一世を風靡したカーペンターズのリチャード・カーペンターは、自身の数々のヒット曲を再アレンジ。当時は予算の関係でできなかった「本当に作りたかったサウンド」を、英国の名門ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で蘇らせた、「『カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団』を発売。12/24付でアルバム25位にランクイン。“単なるカバー”ではない楽曲が今、数々誕生しているのだ。
こうした動きを、フジパシフィックミュージックの北澤孝氏は次のように語る。
「カバー作品には、往々にしてアーティスト自らが原曲の助けを借りて、自らの新しい面をアピールするために作られるケースが多い。しかし“reimagined”はそうではないと思います。原曲のよさを今の時代に合わせて、独自の方法で再創造するということ。原曲の価値を再構築することがアーティスティックな活動になり、ファンを楽しませることに繋がるということなのではないかと思います。例えば『ボヘミアン・ラブソディ』は映画ですが、クイーンというアーティストの魅力を再創造して大ヒットにつなげた、とても“reimagined”な作品と言えるかもしれません」
今年、NIKEは「NIKE AIR JORDAN 1 THE REIMAGINED COLLECTION」と題した、AIR JORDANとAIR FORCE 1の新モデルを発表した。14名の女性デザイナーが、NIKEを代表する2つのブランドを再構築するプロジェクトとなっていたのだが、これもまた「reimagined」が、今という時代に必要とされている戦略を表しているように思える。来年あたりカバーアルバムではなく、「reimagined」な作品が一般的になりそうな予感がする。