SNSドラマ視聴時代に話題になりやすい“伏線と回収”
「伏線と回収」や「フラグ」を楽しむ時代の流れ
しかし近頃は、ツイッターなどSNSで実況をしながらドラマを観るファンも多く、「さりげなく」示された伏線でも、みんながつぶやくことで自明のものとなり「フラグ」のような効果を持つことも増えてきた。またそれと同時に、伏線として描かれていないところまでも、「これは伏線だな」とか「フラグが立った!」と深読みしてしまうこともあり、この状態こそドラマや物語とSNSがともにある時代の変化のひとつだと言ってもいい。
放送を観ながら同時にSNSで語り合う視聴者たちは、人より早く情報を発信することや、伏線など自分なりの深読みを披露して悦に入る。そんなSNS視聴者の存在が、昨今のヒットドラマのひとつの要因としてある。
映画では“ネタバレできない”発信が盛り上がった
同作は、「伏線と回収」がはじめから終わりまで丁寧に張り巡らされているが、観客はSNSで語り尽くしたくても、未見の人へのネタバレをしないマナーから、それができない。しかし、そこから生まれた「言いたいけど言えない」という多くのSNSの声は、未見の人たちに「なにかとんでもない仕掛けがある」というイメージとなって広く伝わるとともに、ドラマとは逆に伏せられていることが強い興味を引き、映画は大きく盛り上がっていった。
そもそも映画では「伏線と回収」などは当たり前で、またそれは物語の大筋ではないことが多く、シネフィルと呼ばれるコアファンは、作品の流れのひとつとして楽しむものの、その些末にはこだわらない。上述のネタバレのほか、そうした下地もあり、映画とドラマファンの間ではSNS視聴の楽しみ方における違いが見られる。
語りにくい「スライス・オブ・ライフ」
昨今、こうしたSNSでのドラマの話題を俯瞰で眺めると、語りがいのある「伏線と回収」が盛り上がっているため、それが求められすぎているようにも見えることがある。この手法の作品が語られやすい、話題として登りやすいことが、SNS視聴時代の特徴として浮かび上がってくる。