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“YURiKA×水野良樹×ヤマモトショウ”対談「魅力的なアニソン文化の自由度とつながりやすさ」

明確なビジョンとクオリティがあって初めて成立する(ヤマモト)

──ところで、「アニソン」と「ポップミュージック」の位置づけをどう捉えていますか? とくに水野さんはいきものがかりのシングル曲であり、同時にアニソンでもある楽曲を多数制作されてきましたが。
水野良樹うーん、フィールドで言えばアニソンかJ-POPかの違いって、東京都民か神奈川県民かくらいの違いだと思います(笑)。同じ仕組みのなかで動いているけど、それぞれにアイデンティティがあって、それぞれにすばらしいという。ただ、違いがあるとすれば、アニソンの場合には1つの物語がすでに軸としてあるわけで、その軸から解釈を広げて曲を作っていけるから、ある種のやりやすさがあるぶん、逆を言えばそこに甘えてしまう怖さもあります。それから、出口に誰がいるかは常に意識します。アニメであればその作品をどういう層の人たちが観ていて、どういう楽しみ方をしているか、どう受け止めているか。それを意識して言葉を紡いで曲を書いています。アニソンの場合は、その作品のファンに自分たちがボールを投げるとしたら、こんな投げ方かなというのは考えますね。
ヤマモトショウ僕もアイドルやバンドのプロデュースをオファーされるなかで、アニメファンにも刺さるようにしたい、みたいな話をされることってわりとあるんですよ。それこそアニメ主題歌を取って、そこをきっかけに売れていきたいとか。そんな単純な話じゃないぞとは思うんですけどね。
YURiKAアニメとしてはすばらしい。楽曲としてはすばららしい。だけどその両方が合わさったからこそ、もっとすばらしい作品になるというのがアニソンの原点だと思うんです。どっちかだけでは成り立たないくらい強く結びついたもので、しかもテレビアニメの放送が終わっても、アニソンを聴くとそのアニメの世界は広がり続けるんですよね。だから何十年も前のアニメでも、アニソンとともに愛され続ける作品があるんだと思います。

──最近はヒプノシスマイクや浦島坂田船などによる、アニメをフックにした楽曲もヒットしています。こうした動向をどう見ていますか?
水野良樹アニメの虚構の世界というのは、リアルな人間では超えられないものが容易に超えられる可能性があります。時差だったり国境だったり。そうすると、出口がそれだけ増えるわけですから、いろいろな人に広く届けやすいというのはあります。それこそ、僕はあと100年もしたらライブのステージには立てないわけだけど、キャラクターであればそれも可能かもしれない。アニメという文化の自由度とつながりやすさはすごく魅力的。そこに魅力や希望を見出したりして、いろいろな才能が集まっているのが今なのではないでしょうか。ただやっぱり、さっきもヤマモトさんが言ったようにそんな単純な話じゃないというところに尽きると思います。よほど全力でやらないとミュージシャンとしての真価も疑われてしまう。そういう意味でもアニメやキャラクターとタッグを組むのは音楽家にとっては楽しくもあり、厳しくもあると思います。
YURiKAアニソンライブは独特ですが、アニメへのこだわりと愛が強いファンが多いという印象を受けます。最近は、キャラクターが歌う、アニメと音楽が一体になった作品も増えています。やはりそこに応援してくれる人、それに刺さる人が多いのではないでしょうか。
ヤマモトショウアニメきっかけの曲といっても、そこには明確なビジョン、そしてクオリティがあります。そういうものがしっかりあって、全力投球でやって初めて成り立つものですが、それをやったときに、そこに広がる世界が今大きくなってきていて、才能が集まってきている。簡単なものではないけど、今そこは音楽家にとって楽しい場所なのではないかと思います。
(文/児玉澄子)
YURiKA
2016年『第1回TOHO animation RECORDS 次世代アーティストオーディション』に合格。2017年1月、TVアニメ『リトルウィッチアカデミア』のオープニングテーマ「Shiny Ray」を担当。同年2月にメジャーデビューCDリリース。2017年10月、TVアニメ『宝石の国』オープニングテーマ「鏡面の波」を担当。2018年、TVアニメ『はねバド!』オープニングテーマ「ふたりの羽根」を担当。

水野良樹
2006年、いきものがかりとしてメジャーデビュー。作詞作曲を担当した代表曲は「ありがとう」「YELL」「じょいふる」「風が吹いている」など。TVアニメタイアップでは、『BLEACH』エンディングテーマ「HANABI」、『NARUTO -ナルト- 疾風伝』オープニングテーマ「ホタルノヒカリ」「ブルーバード」、『七つの大罪』オープニングテーマ「熱情のスペクトラム」などを手がけている。

ヤマモトショウ
2012年、ふぇのたすを結成。ギター、作詞作曲を担当。バンド活動と平行してアイドル、シンガーなどへの楽曲提供、プロデュースを行う。2015年のバンド解散後、作詞作曲家として活動。

提供元: コンフィデンス

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