アジア各国で中国進出が活発化、カギ握る「IP開発」隣国の動き
中国の動画配信サービス、利用者は5億7900万人
3月に香港で開催されたエンタテインメントコンテンツ国際マーケット『香港フィルマート』では、中国本土のキーマンを招いたパネルディスカッションが行われ、IP開発に関する話題が集中した。
今後の対策として、中国のスタジオCroton Cultural Mediaでエグゼクティブ・プレジデントを務めるLiu Zhi(リュウ・チィ)氏は、「一般受けするドラマだけでなく、ニッチな層に刺さるドラマもあります。そのため、どのターゲット層にヒットさせる作品にしたいのかをより分析し、その上でIPを取得していくことがこれからは大事なのではないでしょうか」と指摘した。
こうした中国の現状に、海外勢も目をつけ始めている。なかでも隣国で中華圏の香港、台湾は言語や文化の利点を活かし、早くも動きを活発化させている。
中国でも小説、漫画原作を映像化に繋げる流れを
ブース出展していた先の『香港フィルマート』の会場内で担当者に話を聞くと、「130作品のなかで『剣魂叙初』というファンタジー作品は多くのメディアから引き合いを受けていて、まずは中国でのドラマ化を目指しています」と、早くも反応があることを明かした。
香港も中国市場にフォーカスする動きが加速している。独立系の制作プロダクションに所属する、ある香港人プロデューサーが中国向けにオリジナルドラマ作品を開発する理由を教えてくれた。
「中国作品のクオリティはまだまだ低い。ドラマを制作できる人員不足の問題もあります。だから、我々香港人が中国市場でヒットする可能性のある作品を開発することは大きなビジネスチャンスになります。今、企画中の作品は都会を舞台に仕事と結婚の選択に悩む女性たちを主役にした総制作費3億円のもの。キャスティングも重要です。アンジェラベイビーなど香港と中国で活躍する女優の起用を考えています」
日本が中国進出を目指していくうえで、先行する台湾、香港勢の戦略から学べるものは多そうだ。
文/長谷川朋子
(『コンフィデンス』 18年6月4日号掲載)