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北海道を屈指のエンタメ拠点へ、大泉洋ら所属「オフィスキュー」飛躍の転機

 大泉洋、安田顕らによる演劇ユニット・TEAM NACSが所属する、北海道の芸能プロダクション・クリエイティブオフィスキューが、2月で創立25周年を迎えた。かつて「エンタメが根付かない地」と言われた北の大地は、今や国内屈指のエンタメ発信拠点として注目を集めている。飛躍の転機や、勇断となった東京進出の裏側について、代表取締役の伊藤亜由美氏に尋ねた。

テレビ・ラジオ局とのコンテンツ作りで“北海道発エンタメ”を開拓

――事務所創立25周年、おめでとうございます。御社は間違いなく“北海道発のエンタテインメント”を世に広めた立役者だと思いますが、90年代以前の北海道はエンタメ文化が育ちにくい地だったそうですね。
伊藤亜由美 モデルやナレーター事務所のようなものはあっても、芸能事務所というものはありませんでした。なぜかというと、以前は北海道でエンタメコンテンツが作られるということ自体少なく、あってもテレビ局内で完結してしまうケースが多かったからなんです。

 私は元々、現会長の鈴井貴之が主宰する劇団に役者として所属していたのですが、自分たちを含め当時北海道で食べていける劇団は皆無。劇団としての運営維持を意識する中で、プロフェッショナルなエンタテインメント事務所を作るべく92 年に創業しました。そこで我々が意識したのが、コンテンツ作り。舞台制作のノウハウを活かし、これまでになかったテレビ、ラジオ局との共同でのモノ作りシステムを構築すべく働きかけていきました。
――そういった経緯から生まれたのが、北海道テレビの『水曜どうでしょう』(以下「水どう」)だったんですね。
伊藤 そうですね。鈴井がプロデュースした「水どう」は、我々が道内はもちろん、全国の方々にも親しんでいただける事務所へと成長する一番のきっかけになりました。96年10月にスタートして半年後には道内で人気番組となったのですが、そこからさらに口コミで人気が広がり、ファンの方たちが各地域の系列局に「私の地元でもぜひ放送してほしい」と問い合わせをしてくださったんです。最終的にほぼ全国で放送されるまでの番組になり、同時に当社のTEAM NACSの人気も右肩上がりとなりました。

――魅力的なコンテンツが人を動かしたんですね。本当にすごいことだと思います。

伊藤 現代のようなSNSがない時代でしたが、当時Webサイトの掲示板が注目を集めていた頃で、「水どう」の藤村忠寿、嬉野雅道の両ディレクターが毎日のように番組の掲示板に書き込みをしてくれていたこともヒットした要因の1つ、そこからコミュニティが広がっていきましたから。以前からファンの方との「近さ」や「ファミリー感」は意識していましたが、この先もずっと大事にしていきたいなと感じた体験です。

成長・拡大していくためには「ジョイント」を恐れてはいけない

――なるほど。確かに、タレント個人ではなく事務所を“チーム”として応援してもらうオフィシャルファンクラブ「ThankCUE」や、2年に一度所属タレントが総出演する主催イベント「CUE DREAM JAMBOREE」といったさまざまな取り組みからも、御社とファンの方との「近さ」を感じることができます。
伊藤 ファンの方も含めて「ファミリー感」を打ち出していくことが、東京の事務所にはないブランド作りや強みになると思いました。そうすることで、例えば「水どう」や大泉洋をきっかけに、別のタレントを好きになってくれたり、はたまたスタッフのことも応援してくれたりといった嬉しい連鎖が生まれています。また私たちは、お客様目線でいることを常に主眼に置いているのですが、そういった「ファミリー感」はそのニーズを満たすことにも繋がっているのではないかと思います。
――北海道での人気が高まる中、04年にTEAM NACSのマネージメント契約においてアミューズと業務提携することで東京進出を果たすわけですが、地元を大切になさっている御社にとっては勇断でしたよね。
伊藤 そうですね。大きな決断であり、飛躍の転機になりました。経緯としては、04年にTEAM NACSが初めて東京公演を行うことになり、「それなら東京で仕事をしてみないか?」と私から提案したことがきっかけです。04年はメンバー3人が30歳を迎える年。私は、俳優・タレントにとって30代に何をやるかで今後が決まると思っていましたし、エンタテインメントを紡いでいく中で、私を含めスタッフも成長していかなければならないと感じていました。

――東京進出が決まった時、ファンの方たちはどのような反応をされたのでしょうか?

伊藤 特に北海道のファンの方は、すごく悲しまれました。ですが、「我々は今、ステップアップをしなければいけない時なんです」というメッセージをしっかりと伝え、また「北海道をホームグラウンドとするクリエイティブ集団」という基本スタンスを持って、地元ではできない仕事を東京でやらせていただきました。私はあのタイミングで一歩踏み出せて良かったなと思います。

 地方って地元を大切にするがあまり、内に閉じこもってしまうというか、みんな自分たちだけでやりたがる風潮ってあると思うんです。もちろん、やれなくはありませんが、ミニマムなものになってしまうんですよね。何にでも強み弱みがあるので、「ジョイント」することは大切。それは多くのビジネスにおいても言えることだと思います。

文:矢嶋尚子(編集部)/写真:工藤了

(『コンフィデンス』 17年7月10日号掲載)
◆伊藤亜由美(いとうあゆみ)
北海道小樽市出身。92年2月の事務所創立以降、経営のみならずプロデューサーとしても活躍し、鈴井貴之が監督を務めた映画『man-hole』や『river』、大泉洋らが所属する演劇ユニット・TEAM NACSの全国公演『LOOSER〜失い続けてしまうアルバム』以降の作品等で采配を振る。近年は食、観光、地域産品など北海道のさまざまな魅力を全国に伝えたいという思いから映画『しあわせのパン』(12年1月公開)、『ぶどうのなみだ』(14年10月公開)の企画やWebメディア等の連載を担当するなど、北海道の魅力を発信し続けている。

提供元: コンフィデンス

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