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エッフェル塔とエスニック美術が並ぶパリのケ・ブランリー美術館


ルーブルを筆頭に多くの美術館がひしめくパリ。ほとんどが西洋美術の美術館のなかで、一味違う美術工芸作品に出会えるのがケ・ブランリー美術館です。アジア、アフリカだけでなく、オセアニアや南北アメリカまでもカバーしており、西洋以外の美術を網羅しているのです。西洋の重厚な美術に触れた後、ダイナミックなのに素朴さや軽妙さがある非西洋の美的世界に浸ることができるのも、パリならでは楽しみです。

エッフェル塔と並ぶ緑あふれる美術館

写真:竹川 佳須美

セーヌ川を左に、エッフェル塔を右にケ・ブランリー通りを進むと、ガラスを使ったモダンな外壁が目を惹きます。正式名は、ケ・ブランリー・ジャック・シラク美術館。日本美術の愛好家でもあった、シラク元大統領の名前を冠した国立美術館です。
著名な建築家ジャン・ヌーヴェルの設計によるカラフルな建物も素晴らしいのですが、ジル・クレモンによるのびのびとした庭園や、パトリック・ブランによる外壁の垂直庭園(壁に植栽している)も魅力的で、緑を愛するパリジャン・パリジェンヌに人気なのも頷けます。
オープンは2006年とパリの美術館のなかでは新しいものの、以前は人類博物館にあった民族学資料と、国立アフリカ・オセアニア美術館にあった民族美術コレクションがここにまとめられ、現在は37万点という膨大な収蔵数を誇っています(常設展示3600点ほど)。

写真:竹川 佳須美

ケ・ブランリー美術館の収蔵品は、200年前の個人の収集にさかのぼります。植民地主義時代にはアフリカから多くの工芸美術作品が加わりました。かつてエスニック美術の収集は趣味であり、あるいは研究のためであり、作品は西洋美術にインスピレーションもたらすものに過ぎませんでした。
そこには偏見があるとし、「人間間に序列がないように、芸術にも序列は存在しない。世界のあらゆる文化には等しく敬意が払われるべきである」と主張し、原初美術の専門家であるジャック・ケルシャシュと共に美術館の開館にこぎつけたのが、シラク元大統領です。構想10年の後のことでした。
西洋(芸術)中心主義に異を唱える信念のもとに作られたケ・ブランリーは、「芸術の都」パリの面目躍如とも言える美術館であり、多民族が暮らす国際都市にふさわしい美術館とも言えます。

エスニックがシックに配された開放的な空間

写真:竹川 佳須美

館内の一角の縦長の窓からはちょうどエッフェル塔が望め、館長によると、「当館で一番大きな展示物」とのこと。目を転じれば、エッフェル塔に負けぬ迫力のトーテムポールや、モアイの石像が笑っています。
展示室へと続く通路には、床に様々な文字(の映像)が水のように流れています。ビジュアルアーティスト、チャールズ・サンディソンの作品です。かと思うと別の通路では、モロッコの古都マラケシュの旧市街を思わせる赤みを帯びた土壁が両側に続いています。

写真:竹川 佳須美

内部に共通するのは、カーブと丸みを帯びた曲線。キューブを並べたような外観とはうって変わって、内部空間には壁や矩形で仕切るのではない、連続性と円環性が感じられます。「マラケシュの壁」も閉塞感がありません。壁が完全に閉じず、通路の先は広く吹き抜けの天井まで開放されているからです。
美術館全体の空間構成が、そのままエスニック美術の連続性と円環性に繋がります。四大陸の美術を非西洋でくくるというのは、考えてみればずいぶん乱暴なことでもあるのですが、民族性に基づく各地域の様式が区切られずに連なっていることによって、人類が共通に持つ美的な感覚や、心地良さを生み出す造形を浮かび上がらせ、遠く離れた地域のセンスやスタイルが共鳴しあっていることにも気付かせてくれます。
企画展示室になっている中二階と二階も一部が吹き抜けで階下に開かれています。様々な角度や視点で作品が見られるよう工夫されているのですが、それがとても「シック」なのも、ケ・ブランリー美術館の魅力の一つです。

写真:竹川 佳須美

四大陸を美術作品でめぐる旅

まず四大陸の展示を色分けした地図を確認しましょう。左右に細長い展示場を、真ん中から左に時計回りに進めばオセアニア、突き当りで右にまわりこんでアジア、アフリカと続きます。右奥突き当りで反転して最後がアメリカ。一周すると、四大陸をめぐるアートツアーができてしまいます。

写真:竹川 佳須美

展示作品は多岐にわたっています。オセアニアやアフリカでは、呪術性の強い天を突く彫像や仮面があるかと思うと、楽器や装飾品があります。アジアに多いのは衣装や染織作品。ケ・ブランリー美術館には世界のテキスタイルコレクションがありますが、なかでもアジアのものは染織や刺繍の技術が高く、芸術的にも優れています。
作品数が多いので、仏教彫刻と各地域の宗教的な彫像を比較するとか、あるいは装飾品を見比べてみるとか、興味関心のある部分に集中して観賞するのもおすすめです。

写真:竹川 佳須美

「風を切り裂く(空を切り開く)-日本竹細工芸術」展開催中

写真:竹川 佳須美

二階の西ギャラリーでは、2019年4月7日まで「日本竹細工芸術」展が開催されています。日仏友好160年を記念して行われている「ジャポニズム2018」の参加企画です。
「(数ある日本美術の中から)竹細工を選択するのは相当チャレンジングな試みだった」と言います。確かに、漆器でも焼き物でもなく、浮世絵でも日本画でもなく、何故ほとんど西洋では知られていない竹細工なのか。

写真:竹川 佳須美

160点に及ぶ作品を見ると、最初は中国の籠を模倣していた日本の竹細工が、いかにオリジナルな芸術性を獲得してきたのかが、鮮明に展示されています。エスニックな工芸品でしかなかったものが現代では彫刻作品にまでなった、というわかりやすいストーリーだけではありません。エスニックな工芸のなかに、「用の美」にとどまらない「シック」もあり、すでに高い芸術性を帯ていることが理解されるのです。まさに、エスニックの文化に敬意を払い、そこに固有の芸術性を見出してきたケ・ブランリー美術館にふさわしい企画展でしょう。
江戸時代から現代作家まで、フランスで開催される初めての竹細工芸術の展覧会とのこと。日本でも、このように竹細工の工芸から芸術への流れを捉えた展覧会はあまりないのではないでしょうか。竹は私たちの日常に親しい素材であるため、かえって工芸的な素晴らしさや、芸術的価値に無頓着のような気もします。その意味でも、パリで「知らなかった日本」を発見できる、貴重な企画展です。

劇場やレストランもある充実の館内施設

写真:竹川 佳須美

敷地内には庭園を望むカフェやミュージアムショップの他、本館内にはクロード・レヴィ・ストロース劇場や、エッフェル塔の眺めで人気のレストラン、レ・ゾンブルなどもあります。
レストランではランチで(比較的)リーズナブルにフルコースのフランス料理を味わえますが、ライトアップされたエッフェル塔を堪能するには、やはりディナーがおすすめです。予約して、少しおしゃれしておでかけください。なお、レストランの入り口は南側のユニヴェルシテ通りになりますのでご注意ください。

写真:竹川 佳須美

ケ・ブランリー美術館(MUSEE DU QUAI BRANLY)の基本情報

住所:37 Quai Branly 75007 Paris
電話番号:+33-1-5661-7000
開館時間:火、水、日曜日 11時-19時、木、金曜日 11時-21時
アクセス:RER C線 Pont de l’Alma駅から徒歩4分、メトロ9番線 Alma-Marceau駅から徒歩8分
パリ美術館共通パス「パリミュージアムパス」利用可能
2019年2月の情報です。最新の情報は公式サイトでご確認ください。

■関連MEMO
MUSEE DU QUAI BRANLY ケ・ブランリー美術館
http://www.quaibranly.fr/en/
ジャポニズム2018:日本竹細工芸術展
http://associate.japonismes.org/associate-prg-detail.php?event=335&event-facility=305

【LINEトラベルjp・ナビゲーター】
竹川 佳須美

提供元:トラベルjp 旅行ガイド

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