(更新:)
ORICON NEWS
付録付き本、「財布」シリーズが急成長 ハイブランドから機能性重視に変化
バッグやポーチと比べると遅咲き…だが、この10年で5倍以上に商品増加
様々な商品がある中、宝島社でシリーズ累計400万部を突破しているのが「財布」だ。2011年に発売を開始し、2020年までは平均7タイトル程度の発売だった財布が、2022年には38タイトルに増加。今年は上半期だけですでに27タイトルを発売。これまでに、ファッションブランドやキャラクターなど、約60ブランドとコラボするまでに成長している。
財布付きの本が最初に登場したのは、2011年。バッグやポーチなどに比べると、遅めのスタートだったそう。
「当時は、洋服はプチプラでもお財布はハイブランドを持つ方が多かった印象です。それがSNSなどの普及により、必ずしもハイブランドでなくてもいいアイテムがあったり、機能性のある財布があることが認知されるようになったことで、ニーズが高まったように感じます」(宝島社・マルチメディア局・第6編集部・編集長・倉田未奈子さん/以下同)
とはいえ、2011年の発売当初は、まだハイブランド志向が強かったこともあり、宝島社でも“風水”に特化したテーマ性のある財布からスタート。7月に『お金を呼び込む 魔法のお財布』を発売すると、「金運アップ」のワードなど、風水好きへのアプローチが成功。お金を呼び込む“ラッキーイエロー”の黄色やピンク、白など、風水的な意味づけをもたせた商品が好評で、第2弾、第3弾の発売へとつながった。
キャッシュレス化も要因に? カードたっぷり機能性財布がヒット
最初にコラボしたブランドは「PINK HOUSE」。一定の愛好者がおり、ファンの熱量が高いブランドのため、反響も大きかったと言う。その後、さらに幅広いブランドで機能性の高い財布を作ろうと生まれたのが、「SHIPS」とコラボした“カードたっぷり長財布”だ。
「カードをたくさんしまえて、かつ仕分けして探しやすくするために、本のページのようにめくれるタイプのお財布を開発しました。レシートを入れる部分をつけたり、とにかく使いやすさ、機能性を重視しましたね」
制作にあたっては、20種類以上のサンプルを作り、機能や生地の質感、デザインまで入念に検討するこだわりぶり。「SHIPS」の財布も、老若男女幅広く手に取ってもらうため、シンプルな黒で高級感のある素材で仕上げた。反響は大きく、その後様々なブランドとコラボするきっかけにもなった。
また、「NATURAL BEAUTY BASIC」とのコラボでは、黒以外に、水色とシルバーのバイカラーも発売。
「お財布だから黒の方が人気なのではと予想していましたが、水色とシルバーの華やかなバイカラーの反響が大きかったです。色味的には挑戦でしたが、ブランドのお客様に合ったカラーリングだったことを実感しましたね」
その他にも、ムーミンやスヌーピーなどのキャラクターコラボでは、見た目のデザインも重視。全体的な購買層は30〜40代が多いが、コラボ先によってデザインや質感など趣向を凝らすことで、それぞれのターゲット層に刺さっているようだ。
ボックス型やパウチ型などパッケージにも変化 コンビニ展開が間口を広げるきっかけに
「箱型のパッケージになったことでブランドさんが店頭で直接販売することも可能に。スペシャル感のある装丁になったことで、協力していただけるブランドが広がり、『Roberta di Camerino』、『Calvin Klein』、『HIROKO KOSHINO』など有名ブランドとのコラボも実現しました」
箱の素材やデザインでブランドのカラーを出せるため、満足度も上昇。雑誌の付録とは異なる、新たな価値を生み出したことが成功の要因と言えるだろう。
「書店では女性ファッション誌のコーナー近くに置いてあることが多いので、どうしても男性の目に留まりづらい。でもコンビニではそういったことがないので、購買層が広がりました。『BARNYARDSTORM』はレディースのブランドですが、コンビニ展開したコラボ財布は、購入者の4割強が男性という結果になりました」
雑誌の付録と違い、“ブランドブック”と呼ばれる付録付きの本は、パッケージの自由度型高いのもメリットだ。また、雑誌は月刊発行なら1ヵ月ごとで商品が入れ替わるが、店頭におかれる期間が長いブランドブックは、通年で使ってもらえるものを意識して作っているという。
「企画性やコンセプトをつけて物を作れるのが編集者の強み。自分たちが作るのであれば、そういった企画性、機能性をうたえる商品こそ、宝島社で開発する意味があるのかなと思います」
2021年以降は、年間約100万部を発行する人気シリーズに成長したブランドブックの「財布」。求められる機能を追求した結果、「これ以上どこを変えたら使いやすくなるのか」というレベルまで進化してきている。
「お札は種類ごとに分けて入れたい、小銭はたくさん入れたい、逆に小銭入れは必要ないけどカード入れはたくさん欲しいなど、それぞれに好みがあると思います。今後はそういった様々なニーズに応えつつ、さらにブラッシュアップした商品を展開していけたらと考えています」
(取材・文/辻内史佳)