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大正14年創刊『小学一年生』編集長に聞く、100年を経て日本の“小学生”はどう変わった?
娯楽を制限された戦時中や戦後も… 100年変わらず、理念受け継がれてきた学年誌
学年別ではあるが、要は受験の心得や学習法、準備法。もちろん当時から学習ドリルなどもあったが、学年誌ではエンターテインメントを使用しながら学習の副読本となるような内容であることが重視されていた。現・編集長の齋藤氏はその歴史を学び、「自分たちが先輩に教わったことと全く同じであり、今でもその理念が受け継がれていると実感した。学年別学習雑誌の文化や倫理、道徳的な面など、100年間変わってないという事実に思わず鳥肌が立った」と明かす。
「もちろん時代によって流行りがありますので、見かけは変化しています。例えば、創刊時の表紙は子どもを描いた絵だった。戦時中や戦後は表現がかなり制限されたこともありました。60年代に入ると、オバケのQ太郎やパーマンなどの人気漫画キャラ、テレビが普及し始めると、芸能人やスポーツ選手が。2000年代にはロボットも登場しました。ですが編集方針や理念は、創刊時より変わらず現代に至っているわけです」
「漫画を読むとバカになる」通説破りにも一助? 学習雑誌として“教科書にはない学びを”
学習雑誌に漫画が掲載されている──。幼い頃に「漫画を読むとバカになる」と大人から言われていた人は少なくないはずで、当時から保護者の反発もあったのではないかと予想できる。「当時の反応は正直分からないのですが、漫画というのは、子どもには楽しいものであることは間違いありません。新聞にも4コマ漫画が掲載されているように、学年誌も内容すべてが漫画ではない。“子どもが楽しいと感じるものは掲載する”考えであったことは、今も昔も変わりません」
その時々で子どもたちが最も関心があるトピックやコンテンツを取り上げ、ベビーブームの恩恵を受けた1974年には歴代最高となる500万を超える発行部数を記録。しかし、その後はバブル崩壊、少子化、娯楽の多様化などの逆風を受け、発行部数は年々減少。
齋藤氏の答えはNOだ。「確かにさまざまな変遷をたどりましたが、100年前から、基本的に小学生たちの瞳の奥にあるものは変わっていないと感じています。例えば、今はスマホやゲームなど遊び方が多様化していますが、それが50年前にあったら、当時の小学生もそれで遊んでいたはず。つまり、見た目では変わったように感じるが、根っこの部分では子どもたちが喜び驚く本質は100年間変わっていない。どんなに時代が変化しても、ドラえもんが広く愛される理由は、そういうことなんだろうと思います」
他学年誌は全滅、『小学一年生』のみ残す理由「ネット社会だからこそ光る原体験」
「幼稚園から小学校に上がるタイミングというのは、ある意味大人への入り口であり、自立への第一歩だと思うんです。つまり、親離れしていかなければならない時期。それまでが読み聞かせ期だったとすれば、小学生になったら自分自身で本を読まなければいけない。そういったフェーズが変わる瞬間の子どもたちには、後押しする雑誌が必要なんだと思っています。また、『小学二年生』の休刊後、小学2~6年生を対象とした『小学8年生』を発刊して、今に至ります。これからも小学生に学びと楽しさを伝えていきたいと思います」
小学校でもオンライン授業が浸透しつつある今、小学生も紙よりネットに親しみ、雑誌よりもYouTubeが主流の時代だ。それ以外にも趣味や娯楽がますます多様化していく中、紙媒体を発信し続ける意義はどのように感じているのだろうか。
何か分からない事があった時、確かな人に聞くよりも、まずはネットで調べる時代だ。新型コロナウイルス感染拡大の際にも顕著だったが、社会に溢れる情報量は年々増えていく中、いかに正しい情報をかぎ分け、選び取れるかで人生を左右する場面も出てくるだろう。そんな時、ネットの文字の羅列だけに縛られず、活字や映像、より多くの情報源に触れてきた原体験が、1人1人の人生や社会に役立つ瞬間が訪れるかもしれない。
『小学一年生』4月号