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ORICON NEWS
少女漫画誌『ちゃお』の付録なぜ豪華に?“家電”まで登場のワケを直撃
小学生のいる場所でネタ探し ふろくの基準は「親に買ってもらえないもの」
「一言でまとめるのは難しいですね…(笑)。でも、その人気のひとつが付録であることは間違いないと思います。付録制作におけるキーワードに“親に買ってもらえないもの”“大人は使うけど、子供はなかなか使わせてもらえないもの”というのを掲げているんですが、この『ATM型貯金箱』(2016年1月号付録)がわかりやすい例ですよね。ATMという存在は知っていても、なかなか触らせてもらえないですよね。そういう“使ってみたい!”っていう子供心を刺激するギミックの効いたものを考えるようにしています。『プリちぃおそうじロボ CHI-01』(2017年4月号)や『ひみつのスマホ型メモセット』(2016年6月号)なんかもそうです。家電掃除機やスマホのように自分で操作してみたい憧れのものを、付録として具現化していくのを心がけています」(平尾さん)
タイアップ記事の多さも発行部数アップに大きく関わっているという。売り出す玩具を『ちゃお』で情報解禁してもらいニュース性を上げたり、玩具メーカーとの連携の中で得たアイディアを付録に生かすことも。
編集部では月に1度“付録会議”なるものを行い、そこではスタッフ全員がアイディアを出し合って議論を重ねている。この“付録会議”にかける時間は5時間にも及ぶという。
「“付録会議”では、編集部員が今、街で気になっているもの・流行っているものを買ってきて、会議室が埋まるぐらい商品をバーッと並べるんです。編集部員全員が買ってくるからすごい量で(笑)。この商品を前に全員でアイディアを出し合って“小学生が何を欲しがっているのか?”というのを総力戦で考えています。視察には原宿、イオンモール、ららぽーと、文房具屋さんなど小学生が現れそうな場所にはくまなく行きます。ネットでの評判も見たりしますが、実際の読者のスマホの所持率は3割程度。それよりも我々はリアルな小学生の声を拾うようにしています」(平尾さん)
『ちゃお』のライバルはYouTube!? 小学生の“リアル”をとことん追求
「来てくれている女の子たちに、直接声をかけます。『それ、どこで買ったの?』とか、『どのキャラクターが好きなの?』とか他愛もないこと。あと、どういう服を着ているのかもチェックしていますね。色や形の流行とか、ちゃおの読者の傾向とかを見ています。また、イベントの他にも雑誌に読者アンケートを付けているので、これもすごく読んでいますよ。毎月質問を変えているんですが、嬉しいことにアンケートの戻りも月に何万通と来るんです。そこでわかったのが、小学生読者が欲しがっているのって意外と現実に即した物が多いということ。たぶん、潜在的に買ってもらいたけど、手に入らない物が“欲しい”対象になる。デジタルの普及によって、子供達を取り巻く環境は昔とだいぶ変わったけど、欲しい物や憧れの対象って私達世代のときとあまり変わっていない印象を受けます」(平尾さん)
しかし、ネット隆盛のこの時代だからこそ、『ちゃお』のライバルも変わったと平尾さんは語る。昔は当然“競合誌”やテレビの存在だったが、今はネットで動画や情報が見放題。“雑多なエンタメ雑誌”っである『ちゃお』は、これらすべてがライバルになっているという。
「最近の小学生ってYouTubeなどの動画サイトをすごくよく見ているんです。自分が好きなコンテンツを、好きな時間に、好きなだけ見られる。今は読者にとって“楽しさを選べる幅”が広がっているんですよね。『ちゃお』でも『ちゃおチャンネル』というYouTubeチャンネルを開設して、そこでアニメやモデルさんを使った動画を配信しています。とは言え、この時代だからこそ雑誌や付録という“読者が手にできる物”でどう差をつけていくのか、今はその生き残り方を模索しているところにいます」(平尾さん)
“家電付録”はSNSでもバズり、子どもだけでなく大人にもヒット
「『プリちぃ〜』は2年ぐらいかかりました。ペンやメモ帳のように、すでに世に存在する物であれば半年程度で制作しますが、これらのように1から作る場合は本当に長く時間がかかる。なので、付録の予算も月によって違ってきます。学年が変わる4月号や年末発売の2月号、読者が長いお休みに入るタイミングなどは、特に力を入れていますね」(平尾さん)
『プリちぃ〜』の場合は“家電付録”とうたったのが話題になった要因でもあると平尾さんは話す。付録の豪華さもさることながら、“家電付録”という言葉が大人の心に留まったその結果、SNSやネットニュースなどで話題となり、“売り切れ続出”のヒット号を生む結果となった。このように、親がニュースなどを見て興味をもってから子どもの手に届く逆転現象も起きているんだとか。
「“家電付録”とうたうのは、予告ページ担当のアイディアでした。毎月のように反響のある付録が出せているのは、付録担当だけでなく編集部や社内の他部署など、いろんな人を巻き込んでいるからこそ、なんです」(平尾さん)
ヒットの裏には大勢の人達が関わり、それ相応の時間が費やされている。だからこそ良い物を絶えず提供できる。結果、雑誌の売り上げにも繋がる。この正のスパイラルに則って『ちゃお』は少女漫画誌の頂点にいる。しかし、“売れる”ことによって得られる1番の報酬とは何なのだろうか。
「必然的に部数が大きいとやれることも多くなる。やっぱりこれが1番ですね。部数を上げることで『ちゃお』に信頼ができて、広告もたくさん出してもらえるわけですし。さっきも少し触れたように、読者を取り巻く環境は変わっても、本質的な部分は変わってないと思うので、小学生女子の“楽しむため”の1番の選択肢に『ちゃお』があってほしいというのが編集部の願いです。YouTubeやテレビにも負けたくないし、暇があれば『ちゃお』を読んでもらえるような雑誌作りをしていきたい。今から年末号に向けて面白い付録を出すために動いているので、楽しみにしていてください!」(平尾さん)
文/Kanako Kondo