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“細かすぎる”彫り物で注目の「岸和田型だんじり」ミニチュア 金属加工の技術を応用し、“大工の魂”を再現

中北町 1/20モデル 画像提供/織広堂氏

中北町 1/20モデル 画像提供/織広堂氏

 1/20スケールの「岸和田型だんじり」の制作を行っている織広堂さん(@orihirodo)。その制作過程をツイッターで発表していると、パーツの一つである「義経八艘飛び」が3.6万いいねを獲得。その細かすぎる作品に驚きと賞賛のコメントが寄せられた。「岸和田型だんじり」に魅せられ、現在11作目を制作しているという同氏がミニチュアを作るようになったきっかけと、その裏にある「岸和田型だんじり」への熱い想いとは?

「細かすぎる彫刻」というアプローチで予想外のSNSバズリ

――先日SNSに投稿された1/20スケールの「岸和田型だんじり」のパーツである「義経八艘飛び」が、「見事です」「このパーツだけでも数十万円の価値を感じます」と賞賛されました。この反応をどのように受け止めていますか?
織広堂全く狙ったわけでもなく、目立たない部分の彫物なので、いまだに「なぜこれが?」という戸惑いしかないです。その一方で、「細かすぎる彫刻」というアプローチにより、普段だんじりに興味のない人にも注目してもらうことができ、多くの反響をいただいてやっと世間から認めてもらえたという印象です。周りからはずっと「よーやるわ」という反応ばかりでしたので(涙)。

――完成品の精緻な作りはもちろん、ご自身のHPにアップされている作品の写真や解説をみると、「岸和田型だんじり」への相当な熱意を感じます。
織広堂私は岸和田で生まれ育ったので、生まれた時からだんじりが当たり前のように存在し、慣れ親しんでおりました。太鼓を叩いて遊んだり、走ったり、ただただ楽しいものでした。小学生の頃に、父親が買ってきた「だんじり」の写真集を見て、各町のだんじりにはそれぞれの特徴があることを知り、次第に魅了されるようになりました。

――「岸和田型だんじり」の魅力はどのようなところにありますか?
織広堂岸和田のだんじりは「どこよりも良いだんじりを」という町民の熱意があります。それに応えるべく大工、彫り師が腕を振るって制作し、より豪華に、より精密に、かつ豪快に走ることをストイックなまで求め、数多あるだんじりの中でも独自の進化を遂げてきました。
「岸和田型だんじり」を他のだんじりや山車と比較すると、腰廻りと屋根廻りにボリュームがあるのが特徴です。美しいカーブを描いた屋根型に豪華に組み上げられた組物があり、それはまるで『日光東照宮 陽明門』のように優雅な屋根廻り。安定した曳行を可能にするどっしりとした腰廻りは精巧な彫物で覆われおり、豪華で迫力かつ均整のとれた美しい姿見は人を魅了してくれます。

金属加工の技術で木を加工、1台に半年かけ制作

――「岸和田型だんじり」への想いの強さを感じます。そもそも、なぜ1/20スケールで「岸和田型だんじり」のミニチュアを作ろうと思われたのですか?
織広堂もともと手先は器用なほうで、中学の美術の課題として最初の作品を作りました。以降簡単なものしか作れなかったのですが、ある時、機械加工で出来ないかと研究し、試行錯誤して出来たのが現在の作品です。ガンプラのようなシリーズものとして、各町のだんじりを忠実に再現した作品群ができたら面白いなと思っていました。まず自分の所属する町から始め、現在11台目を制作中です。

――実際、どのようにして制作していらっしゃるんですか?
織広堂以前金型製作会社に務めていた関係で、パソコンを使った精密機械加工の経験を活かしています。簡単に言うと金属加工の技術を用いて木工品を作っているという感じです。
 基本機械加工ですので加工データを作成し、それぞれの部位に合わせた粗加工を施し、最終仕上げをレーザーで行うといった工程が主になります。その部品を組み立て、旗など飾り付けを施して完成に至ります。全て一人で作業していますので、1台完成までおよそ半年になります。

――ご自身が制作する際にこだわっているところを教えて下さい。
織広堂だんじり大工、彫り師が魂を込めて制作した実物の良さを出来る限り再現するべく造形にこだわり、彫刻部分は特に人物の表情にこだわっています。実物の魅力を『伝える』モノづくりを常に意識していますね。そして、モデルとなっただんじりには必ず一番“売り”の彫物があり、その町民の方に納得してもらえるような出来に仕上げるように特に力を入れて制作しています。モデルとなった町の方に褒めてもらうことが、一番なので。

――ミニチュアとはいえ、制作の過程には、だんじりを作る職人同様に、魂が込められているんですね。1/20スケールにする際、どのようなところが難しいですか?
織広堂原寸のだんじりを、そのまま縮小してしまうと「あれ?なんか違うな」と少し迫力を欠いた印象になってしまうことがあります。実物のイメージに近づけるため多少寸法の強弱を付けるようにしていますが、その加減にいつも悩みます。
――コロナ禍もあり、ここ2年は全国的にも祭りが開催されることも少なくなっているなか、織広堂さんの活動は、「岸和田型だんじり」の魅力を日本だけでなく世界に広げていますね。
織広堂『岸和田だんじり祭』は、「やりまわし」(だんじりに綱を付け、大勢でひき、地元の街を走る)がニュースなどで取り上げられ、全国でも有名になりました。ですが、「岸和田型だんじり」自体の魅力はまだまだ伝わっていないと思います。なので、そのカッコよさを全国の人に伝えたいとの思いで活動しています。今後も根気よく続けることで、徐々に認知してもらえればと切に願います。

――最後になりますが、織広堂さんにとって「だんじり」とは?
織広堂「人を引き寄せる存在」です。たった一台のだんじりを走らせるために多くの人が真剣に話し合い、準備を重ね、たった2日間の祭りに挑みます。
 だんじりがなかったら疎遠になってたであろう人、出会わなかったであろう人が、今でも一つの目標に向けて団結する。岸和田はそういう街であり、だんじりはその象徴であると思います。

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