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【PANAM55周年記念対談】佐橋佳幸×山寺宏一が語る名曲カバーの舞台裏 「歌を主役にする」

 日本クラウンが1970年に若者向けの新レーベルとして立ち上げたPANAM。レーベル生誕55周年を記念し、PANAMから生まれた代表曲10曲を、話題のアーティストたちがリメイクカバーする企画が2025年9月にスタートした。藤井フミヤと南こうせつによるかぐや姫の「僕の胸でおやすみ」を皮切りに、さまざまなアーティストのコラボレーションによって名曲を新たな形で届けてきたこの企画は、宮沢和史と高野寛によるティン・パン・アレーの「YELLOW MAGIC CARNIVAL」で完結。全10曲を収録したデジタルアルバム『PANAM 55/100 SUPER SONG COVERS』が10月7日より配信されている。今回はアルバムのリリースを記念し、企画の総合プロデューサーを務めた佐橋佳幸と、かぐや姫の名曲「赤ちょうちん」を花澤香菜とデュエットした山寺宏一による対談が実現。二人の親交や楽曲制作の舞台裏、PANAMの名曲が持つ魅力について語り合った。

(左より)佐橋佳幸、山寺宏一

(左より)佐橋佳幸、山寺宏一

一緒にライブ活動も 実は仲の良い二人です

佐橋佳幸(以下、佐橋)山ちゃんと話ができるということで、喜んでここに来たんです。

山寺宏一(以下、山寺)実は僕たち仲の良い二人でして(笑)。

佐橋家が近所なんです(笑)。

山寺しかも同い年でして。初めて、ちゃんと会ったのは、たまたま収録で行ったスタジオでしたね。そこで僕が入る時に偶然会って、「ご近所ですよね」って挨拶して。

佐橋それで連絡先を交換して同い年だってことがわかって、それから飲み会をやるようになって、今では家族ぐるみの付き合いで、うちの子は完全に山ちゃんになついています(笑)。もう10年以上になりますね。初めて家族が挨拶した時に、うちの娘に「山ちゃんだよー」って紹介したら、ドナルドダックの声とか普通にやってくれるものだからびっくりしちゃって(笑)。

 実は二人でライブ活動もやってるんですよ。ちょうどコロナ禍の時に、目黒のブルースアレイ(東京/ブルース・アレイ・ジャパン)で配信ライブを始めたんです。

山寺「VOICE BE AMBITIOUS LIVE」という名称で配信ライブを立ち上げました。今はお客さんにも入ってもらっています。佐橋佳幸プロデュースで、すべてを仕切ってくださって、僕は歌うだけでいいという。

佐橋もともと山ちゃんは、歌も歌っていて、CDも出してますからね。毎回ゲストを招いて山ちゃんとコラボしてもらうという企画です。1回目のゲストが戸田恵子さん、2回目が海宝直人くん、次が林原めぐみさんでその次がLiLiCoさん、一番最近が大塚明夫さん。2回目以降のバックメンバーは、ほぼ山下達郎バンドでやっています(笑)。

山寺もうびっくりですよ。難波(弘之)さんも楽しそうにやっていただいて、佐橋さんの力を見せつけられた感じです。サハリン様々です(笑)。

佐橋LiLiCoさんの時は、山ちゃんとLiLiCoさんの2人だけで「We are The World」全員分(歌まねで)やったりね。シンディ・ローパーは山ちゃんがやるんですよ。ホント芸達者ですよね。難波先生には「We are The World」を弾かせて(笑)。ですから、歌手山寺宏一さんとは定期的に音楽活動をやってきているんで、今回登場してもらうきっかけは歌手としての実力も知っていたからということなんです。

「赤ちょうちん」に必要だった歌唱力と演技力 デュエット誕生の舞台裏

山寺宏一&花澤香菜「赤ちょうちん」ジャケット

山寺宏一&花澤香菜「赤ちょうちん」ジャケット

佐橋今回日本クラウンさんの方から、「PANAMレーベルは日本のフォークやシティポップの源流なので、その過去の作品たちを違う解釈で別のアーティストで表現していきたい」とのオファーがあって、中学生の頃に僕もPANAMのレコードを買っていましたから、喜んで参加させてもらいました。

 まず1曲目はかぐや姫と同じ九州出身の(藤井)フミヤさんに「僕の胸でおやすみ」を歌ってもらおうと思ってオファーし、レコーディングすることになったところ、南こうせつさんが「レコーディングを見に行ってもいいかな」っておっしゃってくれて。ついでだから一緒に歌おうということになって、あの組み合わせになったんですね。最初からあの二人で、と決めていたわけではなくて、本当に偶然。最初のレコーディングがコラボ企画になったことで、その後もコラボで行くことになってしまいました(笑)。

 でも凄いのは、フミヤさんに最初「かぐや姫はどの曲がいいですか?」って聞いたら、「どれでもいいよ、全部歌えるよ」って。九州の人にとってはかぐや姫は特別なんです (笑)。

 「赤ちょうちん」に関して、なぜこの二人(山寺宏一、花澤香菜)なのかと言うと、昭和という時代背景がハッキリしている曲じゃないですか。だから歌唱力プラス演技力が必要だなと思ったんですよ。令和のこの時代に、名曲を新たな作品として表現してくれる力を持っている人がいいなと思って、誰かなと考えたら、マジで山ちゃんの顔が浮かんできて。しかも歌詞カードをじっと見ていたら、この曲ってデュエットで歌えるんじゃないかって思えて、香菜ちゃんも浮かんできたんですよ。

 あの曲は女性目線の曲ですよね。でも最初の二行を山ちゃんが歌ったら、これは二人の歌になるなって思って。二人とも歌がうまいから、レコーディングはあっという間に終わったよね。

山寺「赤ちょうちん」は、かぐや姫の名曲ですからね。まずは「俺が歌っていいの?」っていうのが最初の感想でした。他にはどんな人が参加しているのって確認させてもらったら、フミヤさん、こうせつさんから始まって、凄いメンバーが揃ってるじゃないですか。「ここに入っていいの?」っていうのが次の感想(笑)。でもデュエットの相手が花澤香菜ちゃんだって聞いて、それなら心強いし、是非やらせてもらおうかなと。彼女とは声優としていろいろ共演していて、テレビアニメの『レイトンミステリー探偵社』で親子役、『鬼滅の刃』では闘う役でした(笑)。

佐橋『レイトンミステリー探偵社』のエンディングテーマを彼女が歌っていて、プロデュースしたのが僕で、曲を書いてくれたのが槇原(敬之)くん。今回の参加者がつながっちゃいましたね!

山寺「赤ちょうちん」を聞いたのは中学生の頃ですから、「赤ちょうちん」というものが何かということをこの曲で初めて知ったような気がしますね。また22才で上京して、下落合にある養成所に通っていたんですが、これが神田川のすぐ近くにあったんです。かぐや姫は好きだっただけでなく、本当に縁を感じますね。

佐橋香菜ちゃんは、この曲をよく知らなかったみたい。

山寺我々は年齢がだいぶ上ですから。親子のデュエットに聞こえなければいいなと思っています(笑)。救われたのは、PVを作っていただいているんですが、モノクロのイラストでイケメンの眼鏡をかけた好青年が出てくるんです。山寺本人の映像でなくイラストで良かったなと(笑)。

佐橋この曲では、山ちゃんと香菜ちゃん、それぞれの歌唱パートを色分けした歌詞カードを用意して、二人に渡しておいたんです。レコーディング当日は二人同時に録ったので、ライブ感もうまく出ていると思います。アレンジ面ではスコットランドとかアイルランドの深い森をイメージさせるようなものにして、そこに二人のボーカルをのせたんですが、これがいいんですよ。今回10曲作りましたが、他にないものができたという点で、これが一番気に入っているんです。歌が入ったことによってイメージが膨らみましたね。

山寺僕は、デーモン閣下の「22才の別れ」も相当びっくりしました。

佐橋あいつは、俺、幼馴染だから(笑)。小中学校が一緒で。最初フォークが好きだったのを覚えていたから。

山寺閣下も同い年ですか(笑)。

佐橋俺たちのひとつ下です。10万60何才(笑)。でもさ、選曲の際の打合せと称した飲み会が楽しかったね。一緒に飲んでると、もう終わらないんですよ。山ちゃんが一緒だってわかると、家に帰ると、どうせ遅いでしょって感じで、家族はとっくに寝てますから(笑)。

「歌を主役にする」 佐橋が語るPANAM55周年企画への思い

総合プロデューサーを務めた佐橋佳幸

総合プロデューサーを務めた佐橋佳幸

佐橋歴史あるPANAMレーベルの今を任されたということでの重責は感じなかったですね。それより面白いことができるというワクワク感が強く、僕がスタッフと取り決めたのは歌を主役にすることでしたから。「赤ちょうちん」はその本筋にうまくそった作品に仕上がったと思います。

山寺当時は中学生くらいだったし、レーベルのこととかは全然わかりませんでしたね。かぐや姫だって好きになるきっかけは友達のお兄さんが聞いていたからですし。今だから話しますが、佐橋さんから今回の企画の話があって、最初にPANAMレーベルの楽曲ラインナップを見せてもらって、アッと思ったのは沢田聖子(しょうこ)さんの名前でした。学生の時に聖子(せいこ)って名前の子を好きになって、その後松田聖子さんがデビューして一気にファンになって。聖子っていう漢字にすごく反応してしまうんですよ。沢田聖子さんは学生時代にすごく聞きました。大学に入ってからの話ですけどね。余談ですが、松田聖子さんがNHKの番組で南こうせつさんと「夢一夜」をデュエットしたんですよ。これがすごく良くて、VHSのテープに録って繰り返し繰り返し聴いて。もうテープがダメになってしまいました(笑)。

佐橋沢田聖子さんは印象的でしたね。アイドル風の女の子で、自分で曲を作って出てくる先駆けじゃないですかね。

山寺蛇足ですが、洋楽も聞きましたよ。僕はオリビア・ニュートン・ジョンも大好きで、中学生の時に仙台公演に行きました。公演日が中間試験の2日目だったんで友達は皆行くのを諦めたんですが…。僕は行ったらですね、席がOLのお姉さん二人にはさまれてまして、ドキドキしながら聞いてました。オリビアが日本語で「愛してます」って言った時には、さらにドキッとしたことを思い出します。

生の声と演奏が生み出す化学反応 今後の音楽活動への期待

かぐや姫の名曲「赤ちょうちん」を花澤香菜とデュエットした山寺宏一

かぐや姫の名曲「赤ちょうちん」を花澤香菜とデュエットした山寺宏一

佐橋今後も二人での音楽活動はいろいろやりたいですね。今はまず「VOICE BE AMBITIOUS LIVE」の次をどうしようかなというところですね。もうゲストも考えてはいるんですが、このイベントを久々にやりたいなと。

山寺僕は音楽活動も本当に好きで、今は佐橋さんがいろいろなミュージシャンを紹介してくれるので、地道にでも続けていければと思っています。新曲も出したいと密かに思っているんです。誰からもオファーされていませんが、ここに良いプロデューサーがいますから(笑)。

佐橋山ちゃんが司会をしている 『ビストロボイス』(NHK)という番組があるんです。声を使って仕事をしている方をお招きして山ちゃんがゲストの魅力を引き出す番組なんですが、先日の放送回のゲストが矢野顕子さんと松たか子さんでした。

山寺細野(晴臣)さんからもコメントをいただいてね。まさか自分の番組で細野さんからコメントをいただけるとは思わなかったですね。AIでいろいろできてしまう時代だからこそ生の人間の声でしか生み出せない何かがあるのじゃないかというのを追究するのがこの番組なんです。どうしても声優のゲストが多いんですが、音楽の歴史を支えてきた方々にも出ていただこうとしているんですよ。AIに仕事をとられるかもしれない。それは音楽も一緒じゃないかと思うんです。

佐橋みんなすごい危機感を持っていますよ。先日もあるレコーディングに呼ばれたんですが、オリジナルレコーディングでは人間が演奏していないから、ボーカルだけ抜き出して、そこに全部ナマ音でオケをかぶせた人間が演奏した音源を新たに作るというんです。そういうナマ音を大事に考える時代になっているんですね。

 今回の『PANAM 55/100 SUPER SONG COVERS』ではさまざまなリメイクコラボをやらせてもらいましたが、注目してほしいのは、コラボという生のパフォーマンスから生まれる化学反応です。そこを楽しんでもらえればと思います。ゆくゆくは、今回参加してもらったアーティスト達でイベントも組みたいですね。

取材・文:垂石克哉
【プロフィール】
■佐橋佳幸
1961年9月7日生まれ、東京都目黒区出身。
1983 年にバンド・UGUISのメンバーとしてデビュー。その後セッション・ギタリストとして、数々のレコーディングやコンサートツアーにも参加。小田和正「ラブ・ストーリーは突然に」や藤井フミヤ「TRUE LOVE」など、イントロのギター演奏が印象的な数々の名曲に参加。演奏、アレンジは高く評価され、桑田佳祐、坂本龍一、佐野元春、福山雅治、氷室京介、槇原敬之、山下達郎など、日本の音楽シーンをけん引するアーティストからの厚い信頼を得ている。

■山寺宏一
1961年6月17日生まれ、宮城県出身。
1985年声優デビュー。主な出演作として『それいけ! アンパンマン』(めいけんチーズ、ジャムおじさん、カバお役)、『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ(加持リョウジ役)、『ルパン三世』シリーズ(銭形警部役)など、洋画吹替えでは、エディ・マーフィーやジム・キャリー、ウィル・スミス、クリス・プラットなどを担当。俳優としても、NHK 大河ドラマ『鎌倉殿の13 人』やNHK 連続テレビ小説『あんぱん』に出演。

【作品情報】
■『PANAM 55/100 SUPER SONG COVERS』
収録曲
01. 「僕の胸でおやすみ」(かぐや姫)/藤井フミヤ with 南こうせつ
02. 「LADY PINK PANTHER」(鈴木茂)/GOOD BYE APRIL with 南佳孝)
03. 「さよなら人類」(たま)/鈴木実貴子ズ with BLACK BOTTOM BRASS BAND
04. 「なごり雪」(かぐや姫、イルカ)/seta with Darjeeling
05. 「都会」(大貫妙子)/槇原敬之 feat. 大貫妙子
06. 「8分音符の詩」(鈴木茂)/イルカ&スターダスト☆レビュー
07. 「22才の別れ」(かぐや姫・風)/デーモン閣下 feat. 伊勢正三
08. 「八月の匂い」(鈴木茂)/山内総一郎 & KREVA
09. 「赤ちょうちん」(かぐや姫)/山寺宏一&花澤香菜
10. 「YELLOW MAGIC CARNIVAL」(ティン・パン・アレー)/宮沢和史 & 高野寛

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