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PIERROT、唯一無二の音楽が生んだ熱狂と混沌 ピエラー歓喜の30周年ライブで示した異次元のカリスマ性【ライブレポート】

 ヴィジュアル系ロックバンドPIERROTの2DAYSライブ『LASTCIRCUS』が、神奈川・Kアリーナ横浜で開催された。5月17日(土)は「- FINALE -」、翌18日(日)は「- HELLO -」の副題が冠され、2日間で計48曲を演奏。延べ2万人が彼ら独特の終末感あふれる世界に酔いしれ、伝説となった“フリ”で体を揺らした。

PIERROTらしいダークな物語性と世界観であふれたライブ序盤

 PIERROTは1995年よりキリト(ボーカル)、アイジ(ギター)、潤(ギター)、KOHTA(ベース)、TAKEO(ドラム)の5人編成で活動。今年2月に約10年ぶりとなる単独ライブ『END OF THE WORLD LINE』を開催し、今回の『LASTCIRCUS』は、それに続く公演となった。

 5月18日(日)のライブは、2014年10月24日にさいたまスーパーアリーナで開催された再結集ライブ『DICTATORS CIRCUS FINAL』の1曲目と同じ、2006年のラストシングル「HELLO」で幕を開けた。どこか不穏なムードを漂わせるミステリアスなSEが流れるなか、メンバーが1人ずつステージに登場すると会場は大歓声と拍手に包まれた。ドラムのTAKEOが勢いよくシンバルを打ち鳴らすや、ノイジーなギターが会場に響き渡り、観客は一斉に手を揺らして頭を激しく振り始めた。

 ライブ序盤は、インディーズアルバム『パンドラの匣』や『CELLULOID』、メジャー1stアルバム『FINALE』など1990年代の楽曲を中心に、長年ファンの間で愛されて来た、PIERROTらしいダークな物語性と世界観にあふれた楽曲で会場を沸かせた。観客が腕を十字にクロスさせる振りを合わせた「Adolf」。爆音と共に特効が炸裂した「ENEMY」では、観客がヘッドバンギング。ボーカルのキリトは第一声、「Kアリーナ横浜、ぶっ壊れちゃおうぜ!」と、“キリト節”で観客をあおり立てる。

PIERROT/キリト(Vocal)

PIERROT/キリト(Vocal)

 混沌とした演奏と絶叫が交錯する「セルロイド」。イントロの民族的なギターが特徴的な「ICAROSS」は、スクリーンに炎や羽根が舞い散る新規映像が映し出され、ギリシャ神話『イカロスの翼』のストーリーを想起させた。潤によるギターシンセの音色とフレージングが独特な「脳内モルヒネ」は、ミュージックビデオとは異なるダークホラータッチの映像を映し出し、キリトは舌を出し狂気的な表情。変拍子が印象的な「自殺の理由」では、「もっと声出せるだろ!行くぞ!」と声をかけ、サビでは観客がこぶしを振り上げながら叫んだ。

加速する熱狂 「MAD SKY -鋼鉄の救世主-」に沸く会場

潤

PIERROT/潤(Guitar, Guitar Synth)

 日替わり曲として、1曲目の「HELLO」のほか、「壊れていくこの世界で」や「BIRTHDAY」、さらに「PURPLE SKY」などが演奏されたことも見どころ。美しいギターの音色と歌のみで冒頭を歌ったスケールの大きなミディアムバラード「壊れていくこの世界で」は、夕暮れのようなオレンジ調のライトに照らされたステージの情景と、キリトの切なくどこか遠くを真っ直ぐ見据えた力強い歌声に、胸の奥がジンと熱くなった。続けて披露された「BIRTHDAY」では、最後の〈そこにいるだけでいいから〉という歌詞を客席の一人ひとりに届けるように歌い、先ほどまでの狂宴が?のように静かに聴き入った観客。一転メランコリックなアップナンバー「PURPLE SKY」は、トリッキーでユーモアを感じさせる潤のギターシンセと、速弾きのソロも聴かせたアイジによる、ツインギターの掛け合いも聴きどころとなった。

PIERROT/KOHTA (Bass)

PIERROT/KOHTA (Bass)

 MCでは、Kアリーナ横浜がアリーナ席を「LEVEL 1」、スタンド席を「LEVEL3」や「LEVEL5」と呼称することに触れ、「呼び方なんてどうでもいい。アリーナ、真ん中、後ろ。キリトがそうだと言ったらそうなんです!」と、“俺様節”に笑い声があふれた会場。エリアごとに「叫べ!もっとだ!」と声出しを行い、観客の大歓声に満足げな笑みを浮かべ、「この勢いで横浜をぶっ壊すぞ!」と言って、後半戦に突入した。

 後半戦は、ライブでお馴染みの鉄板曲が並んだ。キリトがアイジの肩に手を回しながら歌った「ドラキュラ」、「PSYCHEDELIC LOVER」ではキリトがKOHTAに寄り添い頭を撫で、そんな仕草からメンバー自身もライブを実に楽しんでいる様子がうかがえた。「ゲルニカ」などは、ハードロック系サウンドと親和性の高い炎を使った演出とともに魅せる。さらに「MAGNET HOLIC」では、間奏でベースのKOHTAの名前を全員で呼ぶお馴染みの演出で、会場には観客の割れんばかりの声が響きわたった。そして本編ラストを飾ったのは、PIERROT史上「ラストレター」に続く売上を記録した「MAD SKY-鋼鉄の救世主-」。会場全体でフリを合わせ、曲の終盤でキリトが客席にマイクを向けると、ファンの大歓声が会場を揺らした。

「PIERROTとして次の予定は無い」「それでも、“また、いつか”」

 アンコールでは、温かくも切ないメロディーとサウンドが胸を締め付ける「HEAVEN」や「SUPER STRING THEORY」などを披露して会場を沸かせたほか、メンバー紹介とともに各メンバーがコメントを発し、キリトが今の思いを吐露した。

 「めちゃめちゃ気持ちいい。楽しすぎて、途中で何の曲を叩いているか分からなくなった」とドラムのTAKEO。ベースのKOHTAも「気持ち良くて、いつまでもここにいたい」とコメント。またギターの潤は「永遠に続きそうだけど1分後には終わってしまいそうな、不思議な空間をいつまでも味わっていたい」。ギターのアイジは「ロックミュージシャンをやってて良かった」とコメントし、「健康で長生きしてください」と続けると、キリトが思わず吹き出して「(アイジの“健康発言”に)しみじみと時の流れを感じる(笑)」と茶々を入れる。そんなキリトは「“PIERROTはすごい。伝説だ”と言われるけど、本当にすごいのはファンのみんなです」と、ピエラーと呼ばれるファンを讃え、「ピエラーであることに誇りを持って生きてください。俺たちもPIERROTというバンドを、命がけでやって来たことに誇りを持っている」とコメントした。

PIERROT/TAKEO(Drums)

PIERROT/TAKEO(Drums)

 3時間近くにわたったライブを締めくくったのは、2014年のさいたまスーパーアリーナ公演2日目のラストと同じ(曲順は異なる)、「蜘蛛の意図」「HUMAN GATE」「CHILD」の3曲。キリトの「飛べ!飛べ!」の声にジャンプで返した観客。ラストの「CHILD」では朝焼けのような、どこか予感めいた希望が会場を包み込み、観客が揺らす銀テープがライトの光を反射して、客席が水面のようにキラキラと輝いて見えた。ちょっと涙ぐんだ様子で声を震わせたキリトに代わり、会場全体で〈強く響け僕の歌声よ〉と歌う大合唱がKアリーナ横浜に響きわたるなか、熱狂のライブの幕が下ろされた。

 「CHILD」の前にキリトが発した今後についてのコメントは、終わりの切なさと淡い希望を感じさせる、彼ららしいものだった。「みんなの不安は痛いほど分かるけど、PIERROTとして次の予定は無い。しかし約束や補償をもらわないと生きて行けない弱い人間にはならないで。未来には何の約束も無く、誰も補償してくれない。だからこそ未来には信じる価値がある。願いには意味があり、それがやがて奇跡になる。未来を信じて前に進んで!」。そして、「俺の正直な気持ちは、それでも“また、いつか!”」。

PIERROT/アイジ(Guitar)

PIERROT/アイジ(Guitar)

 PIERROTの楽曲はダークで退廃的なものが多く、決して明るく前向きに背中を押すような応援歌ではない。しかしインターネット、学校、会社、政治などにおける様々な社会不安が世の中に蔓延するたび、ファンは彼らの音楽性に救いを求め心酔して来た。本来なら誰もが幸せな世界になったほうがいいが、そんな世界が来ないことは、誰であろうPIERROTの楽曲が証明して来た。だから再びPIERROTを待ち望む声が高まったその時、彼らはきっとまた我々の前に姿を現すのではないだろうか。「CHILD」の一節のように〈明日も何も変わらずに夢みているだけだったとしても〉、キリトの“また、いつか”を信じ、その日を待ちたい。

撮影/柴田恵里・青木早霞・山下深礼 取材・文/榑林史章
■『PIERROT「LASTCIRCUS」2025.5.17 - FINALE -』セットリスト
M01. FINALE
M02. Adolf
M03. ENEMY
M04. 自殺の理由
M05. 青い空の下・・・
M06. セルロイド
M07. 脳内モルヒネ
M08. ACID RAIN
M09. HILL-幻覚の雪-
M10. PIECES
M11. REBIRTH DAY
M12. PSYCHEDELIC LOVER
M13. MAGNET HOLIC
M14. 満月に照らされた最期の言葉
M15. ドラキュラ
M16. *自主規制
M17. MAD SKY -鋼鉄の救世主-
M18. CREATURE
【アンコール】
M19. 真っ赤な花
M20. ICAROSS
M21. ゲルニカ
M22. ATENA
M23. 蜘蛛の意図
M24. HUMAN GATE
■『PIERROT「LASTCIRCUS」2025.5.18 - HELLO -』セットリスト
M01. HELLO
M02. Adolf
M03. ENEMY
M04. セルロイド
M05. ICAROSS
M06. 脳内モルヒネ
M07. 自殺の理由
M08. 壊れていくこの世界で
M09. BIRTHDAY
M10. 真っ赤な花
M11. PURPLE SKY
M12. ドラキュラ
M13. ゲルニカ
M14. 満月に照らされた最期の言葉
M15. MAGNET HOLIC
M16. PSYCHEDELIC LOVER
M17. *自主規制
M18. MAD SKY -鋼鉄の救世主-
【アンコール】
M19. HEAVEN
M20. REBIRTH DAY
M21. SUPER STRING THEORY
M22. 蜘蛛の意図
M23. HUMAN GATE
M24. CHILD

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