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菅田将暉もCDアルバム発売、人気俳優の本格ミュージシャン化の流れ再び?
“打ち上げ花火”ではなく継続的に音楽活動を行う俳優は、現代で稀有な存在
また、米津玄師とは米津のアルバム『BOOTLEG』の収録曲「灰色と青(+菅田将暉)」でコラボ。11月には又吉直樹原作の映画『火花』でW主演を務めた桐谷健太と、ビートたけし作詞作曲の「浅草キッド」をカバーする。そして今年3月に1stアルバムをリリースに至る。映像作品を席巻しながら、アーティスト顔負けの目まぐるしい音楽活動を続けているのである
こうして見ると、俳優と音楽の活動を両立させる菅田の特殊性が際立っているようだが、たとえば俳優・藤木直人は、1999年に歌手デビューしている“ベテラン”であり、アルバムを10枚発表、武道館をフルハウスにする実績がある。また、桐谷健太が映画『BECK』でラップを披露して高評価を受けたり、auのCMの浦島太郎役で三線を弾きながら歌った「海の声」で紅白歌合戦出場を果たした例もあるが、ここ数年は基本的に“俳優の歌手化”は下火であったと言える。
昭和は「売れっ子俳優=人気歌手」、“定番”だった俳優の歌手活動
時代が平成になっても、映画『湘南暴走族』でデビューを飾ったふたりの俳優、江口洋介の「恋をした夜は」はロングヒットを飛ばし、織田裕二は14枚のアルバム、約30枚のシングルを発売、最高50万枚を超えるセールスを記録した。その他にも、「POISON」「Forever」といったヒット曲をリリースした反町隆史や、吉田栄作もチューリップの名曲をカバーし、クリスマスのデュエット曲を発表した事例も。つまり昭和から平成初期にかけて、固定ファンを持つトレンディ俳優が音楽活動をすることは、CDの売り上げが確実に見込めるということでも戦略的に “アリ”な時代が続いたのだ。
しかし2000年代に突入しCDの売り上げが落ちていくとともに役者も本業に専念する風潮があり、次第に音楽活動を行う俳優が減少。逆に歌手が俳優デビューして成功する例は、福山雅治、及川光博、吉川晃司、そして星野源など多数の成功事例がある。しかしながら、俳優の歌手デビューは、先述の通りテレビ番組や映画とのコラボ、話題作りなど、“お祭り”的な企画に限定されるケースが続き、俳優と歌手は切り離されていく。
俳優は「歌の世界観を表現するプロ」 菅田将暉に音楽クリエイターも注目
前述の米津玄師と菅田のコラボにしても、「菅田くんでなければ絶対に成立しないと思ったから、どうしてもやりたいと無理を言った」と、米津のほうから熱烈なラブコールがあったことが知られている。また、1月21日に放送された『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)では、蔦屋好位置といしわたり淳治の両売れっ子プロデューサーが選ぶ2017年の年間ベストソングとして、菅田将暉の関わる楽曲を1位に選出。「呼吸」を1位に挙げたいしわたり氏は「役を演じるプロである俳優ならではの歌、という忘れかけていた感覚が返ってくる。日本の若い世代に対する新しい音楽の可能性が詰まっている気がする」と大絶賛したのである。
テレビや映画の活動でも菅田のアーティスティックな一面が垣間見られる。映画『何者』(2016年)ではギターを弾きながら、男臭くエネルギッシュなバンド演奏を披露。菅田は、個性派バンド「忘れらんねえよ」が好きと公言し、テレビ番組でもさだまさしの「関白宣言」や、吉田拓郎の「人生を語らず」の弾き語りを披露するなど、“ツウ好み”である音楽の志向もたびたび垣間見られた。さらには、過去インタビューでは、今後挑戦したいことを問われると「自分の書いた言葉を、自分から出てくるメロディーで、自分で演奏してパフォーマンスできるようにするのが目標」と語っているとおり、音楽活動への興味が存分に感じられる。
色モノ・お祭りデビューでははい、本物志向で歌手化の流れとなるか?
今をときめく他の人気俳優はどうか。高橋一生はドコモのCMで「抱きしめたい」を歌唱したり、『エレファントカシマシ カヴァーアルバム3〜A Tribute to The Elephant Kashimashi〜』(3月21日発売)に斉藤和義やORIGINAL LOVE田島貴男ら有名歌手が顔をそろえる中で唯一、俳優ながら起用された。同じく人気沸騰中の俳優・竹内涼真はソフトバンクのCMで「残酷な天使のテーゼ」のカラオケを披露したほか、インスタグラムで歌を披露する動画を投稿し、その美声が話題に上った。このように、歌手にならずとも、今も俳優にとって歌は近いところに存在しているのだ。
かつては、役を演じるプロの俳優だからこそ表現できる歌の世界というものが存在し、視聴者もその世界感を共有していた。これからは菅田のような俳優の活動を皮切りに、再び“俳優の音楽活動”の時代が切り拓かれていくことを期待したい。