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【Mr.Childrenライブレポート】久々のホールツアー武道館公演、朝ドラのあの曲に込めた想い
どうして彼らの曲には、つい聴き入ってしまうんだろう?
どうして彼らの曲には、つい聴き入ってしまうんだろう? どうして、彼らはライブの1曲目にこの曲を選んだんだろう? 音楽に心を掴まれながら、いくつか頭に浮かんだ疑問符は、2時間半のライブの最中に、徐々に氷解していった。驚きやざわめきに始まり、覚醒し、高揚し、発見し、その先で迷いを脱し、希望を掴む。まるで一本の映画を観るような、ドラマティックなライブだった。
“飛び級”してきたミスチル、来年の25周年を前に
中盤、日替わりで桜井の弾き語りコーナーがあった。この日はギター1本で「Over」を披露。23歳のときに作った曲で、当時の仮タイトルは「ツービートでKAN」だった。同時に、ギルバート・オサリバンの「Alone Again(Naturally)」のように、明るい曲に別れの歌詞を乗せたいとも考えていた。「人の心を掴みたくて掴みたくて、“Alone Again”の人懐っこいメロディに乗せた歌詞の痛々しさを参考にしてできた曲」と説明しながら、“Alone Again”のメロディを口笛で吹いてから、「Over」を歌い始めた。粋な演出だった。
“心のまま僕は行くのさ”と歌う心の純度は変わっていない
武道館の夜に捧げられたのは、「東京」と「足音 〜Be Strong」。本編最後の曲は、「虹の彼方へ」と、終わりが近づくに連れて、音と言葉の色彩感が一気に鮮やかになった。アンコールの1曲目「名もなき詩」では、全員がサビを大合唱。「Tomorrow never knows」を歌うときの桜井は、今まさに湧き上がる心の声を歌にしているようで、22年前の曲なのに、“心のまま僕は行くのさ”と歌う心の純度が、昔も今もなんら変わっていないことが伝わってくる。
熊本地震の影響を受けた人々へのメッセージが、そのまま歌に
大勢の人が一つの場所に集まって、音楽によって温かい感情をシェアできることは、幸福である。でも、ミスチルの音楽は、それを聴いてただ楽しかったり、興奮したり、歓喜したりするだけじゃない。むしろ、痛みや、痺れや、疼きを感じることもあって、ライブは壮大な、“切なさ”の共有であるような気さえする。いくつになっても、生きることと傷つくことは切り離せない。ちゃんと生きて、ちゃんともがいて、ちゃんと傷ついて、前に進もうとするMr.Childrenの歌は、聴き手にとって、明日への希望を繋いでくれる“ヒカリノアトリエ”なのだろう。
(写真/薮田修身(W) 文/菊地陽子)
『Mr.Children Hall Tour 2016 虹』10月7日(金)東京・日本武道館
1. お伽話
2. 水上バス
3. Melody
4. You make me happy
5. クラスメイト
6. PIANO MAN
7. しるし
8. Over(桜井弾き語り)
9. もっと
10. 掌
11. ランニングハイ
12. PADDLE
13. 終末のコンフィデンスソング
14. 血の管
15. こころ
16. 旅立ちの唄
17. 東京
18. 足音 〜Be Strong
19. 通り雨
20. 虹の彼方へ
EN1. 名もなき詩
EN2. Tomorrow never knows
EN3. ヒカリノアトリエ
EN4. 僕らの音