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オリコンニュース
ドレスコーズ・志磨遼平、独自の世界観と俳優としての可能性
役者に目覚めたというよりは悔しい感覚

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志磨遼平 あれが他の役柄、例えば普通の会社員の役とかだったら難しかったと思うんですよ。友達にもそういう人はあまりいないし。でもカメラマンなら仕事柄、よく見ているので何となく感じは掴めたかなと。
――役作りはどのように?
志磨遼平 広能は原作だともっと上の年配のキャラクターなんです。若い女の子をプロデュースする能力に長けているオッサンっているじゃないですか。そういう感じ。フランス人のセルジュ・ゲンスブールって人がいるんだけど、それがモデルなのかなって思ったりもして。
――若い頃のブリジット・バルドーやカトリーヌ・ドヌーブを恋人や奥さんにしながら、女優としても開花させた超モテ男の映画監督ですよね。
志磨遼平 そうそう、クソプレイボーイのロリコンオヤジです(笑)。だから自分の中のありったけのゲンスブールをないなりにかき集めて、何となくそういうイメージでやってみました。
――でも志磨さんが演じるとエロオヤジのゲンスブールというよりは、“大人の妖精”みたいな感じでしたよ(笑)。
志磨遼平 ふと思い立って生きているみたいな。ああいう大人っていますよね(笑)。
――そういう掴みどころのない、ある種の“クリエイター感”をプロの役者さんが出すのはむしろ難しくて、ミュージシャンであり芝居をやったことがない志磨さんだからこそ、出せた雰囲気なのかなと思いました。
志磨遼平 ああ、そうかもしれない。役者さんは脚本とか監督とかのイメージを宿す依り白(よりしろ)っていう、ある種のイタコみたいな存在だけど、カメラマンや音楽を作る人はないものをあるようにするというか。役者さんは1を10にも100にもしていくお仕事で、僕らは0を1にする仕事。それをやっているモノ同士として、広能を何となく理解できる部分はありました。ただ、演技に関しては初めてなので自己採点ができない。音楽だとゼロからいきなりボンって100が生まれてくるようなビックリする体験ってたまにあるんですよ。「これ、誰の曲や? 僕のか?!」みたいな。そういう時ってやったぜって感覚すらなくてただもう、ラッキーというか。何の苦労もなく100を手に入れたって感覚なんですね。もちろん、うーんって唸ってがんばったのにやっと出たのが、みたいなことも多々あるんですけど、それでも音楽なら「もうちょっとこうしてみようか」っていう打開策や対策が見える。でも、演技に関しては監督がオッケーって言っても、何となくモヤッとして現場では着地点が見えないから試写を観るまではガクブルでした。自分のシーンはずっと半目で観ていて直視できなかった(笑)。
――(笑)。芝居に目覚めたりとかは?
志磨遼平 いや、目覚めたというよりは悔しい感覚。自分としては一回やって友達に笑われて、テヘヘってなって終わると思っていたんです。でも、いざやってみると「他に何かできなかっただろうか?」とか考えちゃうわけですよ。そうなるとね、もう1回試してみたいって気になってしまって……。
――欲が出てしまったと。
志磨遼平 で、春に放送するWOWOWのドラマのお話をいただいたのでまたやってみたんです。
――初ドラマですね。
志磨遼平 でもやっぱり難しかったから、またやりたくなってしまうっていう感じです、今は。
――芝居スイッチが入ってしまった。
志磨遼平 そんな「オレの眠っていた才能がここで開いたか!」みたいな意味じゃないですよ(笑)。ただ、悔しいという感じ。しかもこれは音楽では全然解消されない悔しさなんです。だからもしまた芝居のお話をいただいたらがんばってみたい……。マジメでしょ?(笑)。
――すごくマジメです(笑)。星野源さんや浜野謙太さん、ピエール瀧さんなど、アーティストから俳優として成功している人はいますが、志磨さんも今後は音楽と芝居を平行してやっていきたい?
志磨遼平 僕はそんな、まったくですよ。かといって音楽のことばかり考えているわけでもなくて。手塚治虫先生が「いいマンガを描きたいなら、マンガ以外のことをたくさん吸収しなさい」っておっしゃっていたんだけど、そりゃそうだと思います。音楽ばっかりやっている人の音楽って意外と面白くないので、僕も日々、いろんなことして生きてますって感じなんだけど、とりあえずは人の役に立ちたいなと。これまで役に立ったことがない人生なので。
――そんなことはないでしょ(笑)。
志磨遼平 いやいや、音楽をやり始めてやっと人が何がしかの価値をつけてくれたっていうか。それがないと“無価値オジさん”に戻ってしまうので、誰かの役に立つために24時間がんばってます、いつでも呼んでくださいってスタンスでいるようにしているんです。そのためには目の前のことに手を抜かない。そうやって一生懸命、生きております。
人と違うってことが役立ってくるし、その“方法”をいつも探している
志磨遼平 ラッキーなオジさんじゃないですか(笑)。みんなが苦労するところを苦労してなかったりしますから。僕、これまであんまり「わー、どうしよう」って悩んだりしたことがないんですよ。言い換えると、みんなが一生懸命向き合って突破するところを全力で逃げてきた、イヤすぎて。で、逃げるために走り過ぎて普通の人より余計な筋力がついてしまい、そこを「雰囲気がありますね」みたいに言われているだけっていう(笑)。
――独特の世界観=筋力ですか?
志磨遼平 そうそう(笑)。みんなはそこで立ち止まってちゃんとがんばっていると思うんです。朝、起きるとか銀行に行くとか、たまに区役所行くとか。そういうとき僕は区役所の“く”ぐらいのところでメチャクチャ遠くまで逃げちゃう。で、「すげー、足、早いな」ってみんなから言われてる気がします。
――今でも逃げているんですか?
志磨遼平 走り続けています(笑)。そこの歩みを止めたことはない。
――しんどくなることは?
志磨遼平 全然。立ち止まって向き合うほうがしんどいです。そもそも僕は曲を作るとき、自分のことばっかり考えているんだけど、それが仕事になるって変わっていますよね? だいたいみんな誰かのため、例えば会社とか家庭のためにがんばっているじゃないですか。でも僕はまさかファンのためとは言えない。気持ちはわかるけど、ファンのためを考えても曲はできないし、たまたま僕と似たことを考えている人が僕のファンになってくれるんだろうなっていう理解をしていて。だから、今も日々、自分のことばっかりを考えています。でも普通だったらそれだと怒られるんですよね。学校でも僕、「人のことを考えなさい」って、先生にずっと言われていましたから(笑)。
――しかも志磨さんはひとりっ子なんですよね。
志磨遼平 そう! だから、家でも出されるものは全部、僕のモノだったんです。ごはんもお菓子もオモチャも分けるっていう発想がなかった。それで今まできちゃったんだけど、音楽を始めて自分のことばっかり考えていたら逆に褒められ出したっていう。
――だからラッキーオジさんと(笑)。
志磨遼平 なので僕は何もやった気にはなっていない。だからこそ何ごとも一生懸命やるようにしてます。自分のことを考えるにしても、ひたすらマジメにやろうと。ここで今さら人のことを考えたりしたら、音楽ですらお金もらえなくなりますから。「ファンのためとか言い出したよ、あいつ」みたいな、そうならないために自分中心の暮らしをまっとうしたいと思っています(笑)。
――今後、やりたいことは?
志磨遼平 大きいとこでライブしたいとか、たくさんCD売れて欲しいとか、いろいろありますけど。やっぱりカッコいい演奏がしたい、かな。スゴイことには聞こえないかもしれませんが(笑)。でもそのためには自分の中では難しいことがたくさんあって、これができたらいいなとか、そういうことはいっぱいあるのでちょっとずつがんばっています。で、最終的にはワッとするようなすごくいい曲を書きたい。僕がいいと思う曲をみんなもいいと思うっていうのが一番、いいことなので。でもこれが難しいんですよねぇ。
――確かに。
志磨遼平 僕、人と違うほうが有名になれるってずっと思っていたんですよ。でも有名な人っていうのはみんなが共感する人ってことだから、めっちゃフツーってことなんです。そこに30歳ぐらいで気づいた。それまで変な雰囲気ばっかり垂れ流してました(笑)。若い頃は「僕は絶対、みんなと違うぜ。だからヨロシクな」みたいな、そんな感じだったんですよ。でも、みんなの好きなことをわからないと、みんなが好きになる曲なんて作れないんですよね。
――でも、志磨さんの音楽は非凡で、そのなかに真実を突いた核みたいなものがある。だから多くの人に刺さり、共感されているんじゃないかなと思います。
志磨遼平 人と違うことって例えば変わった服を着ているとか実は些細なことなんですよね。それを全部取っ払っていくと、人を好きになる気持ちとか、立派になりたいと願う欲望とか、誰もが共通して持っているそれこそ核みたいなものに行き着く。僕はそういうことを見つけて真剣に悩んで、それを誰も言ってない言葉で言ったり、誰もやったことがないやり方で表現しようとしているのかなと。そこで初めて人と違うってことが役立ってくるし、その“方法”をいつも探している気がします。
(文:若松正子)



