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国民的歌姫を生んだ98年デビュー組、5人の現在の立ち位置とは

 宇多田ヒカルと椎名林檎が、宇多田の新アルバム『Fantome』内の新曲「二時間だけのバカンス」でデュエットし、そのどことなく妖しい雰囲気もあるMVが公開されて話題になっている。宇多田と椎名といえば、1998年に東芝EMI(当時)からデビューした“同期”であり、2002年に“東芝EMIガールズ”を名乗って共演していたことは有名。そして、この“1998年デビュー組”には、浜崎あゆみやaiko、MISIAといった今も第一線で活躍する歌姫たちもいる。音楽のジャンルも活動姿勢も5人5様だが、現在の5人の立ち位置とは?

人間活動後、慈愛に満ちた宇多田ヒカル、日本を代表する存在となった椎名林檎

  • 8年半ぶりに発売した宇多田ヒカルのオリジナルアルバム『Fantome(ファントーム)』

    8年半ぶりに発売した宇多田ヒカルのオリジナルアルバム『Fantome(ファントーム)』

 宇多田ヒカルは、ニューヨーク育ちというバックボーンを活かしたR&B系の楽曲でデビューすると、1stアルバム『First Love』で、その日本人離れした楽曲、歌唱力が評価された。その後も多くのヒット曲、ミリオンアルバムを生み出し、海外ではUtada名義で活躍したが、2010年、“人間活動”に専念するために活動を休止する。

 一方、“盟友”椎名林檎は、「歌舞伎町の女王」(2ndシングル)などの曲名からもわかるように、独自の世界観と“尖った”センスがウリであり、1stアルバム『無罪モラトリアム』もミリオンセラーとなった。その後、椎名は“日本のレッド・ホット・チリ・ペッパーズ”とも一部では呼ばれたバンド「東京事変」に参加しつつ、2011年には朝の連ドラの主題歌「カーネーション」や、2014年のサッカーW杯のテーマソング「NIPPON」を発表するなど、“NHK御用達”アーティストのイメージも加わる。また、宇多田は今年になって約3年半ぶりに、新曲「花束を君に」を発表。『サントリー天然水』の新イメージキャラクターにも起用されるなど、本格的に活動を再開させている。

 「9月に発売された8年半ぶりの宇多田さんのアルバムは今、世界中でヒットしています。もともと内向的な宇多田さんは、“人間活動”中の再婚・出産などを経た後、“慈愛に満ちた女性アーティスト”へと成長して、あらためて存在感を際立たせています。反面、椎名さんは、今年のリオ五輪閉会式で引継ぎセレモニーの音楽監修までも務めますが、“尖った”センスはデビュー当初から変わらないまま。もともと“和テイスト”の言葉遣いに特徴がありましたが、『NIPPON』以来その傾向がさらに強まりました。五輪の音楽監修を考えると、ミュージシャンの枠を超えて、“アーティスト日本代表”と言ってもいいかもしれません」(エンタメ誌編集者)

エンタテインメントに徹したスタンスの浜崎あゆみ

 宇多田・椎名といったアーティスト色の強いふたりとは対照的に、一般層、特にギャル人気を獲得したのが浜崎あゆみだ。もともと女優として活動していたが、デビューアルバム『A Song for xx』が150万枚を売り上げると、“女子高生のカリスマ”として大ブレイク。シングル・アルバムの総売上数が5000万枚を突破したのは、B’z、Mr.Childrenに続く快挙。先日、放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)10時間特番での熱唱も、ネットなどで話題となった。

 「スマホゲーム『CLASH OF QUEEN』」のCMで、浜崎さんは“クイーン”と“レースクイーン”に扮していましたが、これが見事にハマってました。相変わらず、ライブも作り込まれた衣装やステージセットを駆使したエンターテインメントショーの極みで、そのスケール感は“あゆ健在”と言えるでしょう」(前出の編集者)

現在も“孤高の歌姫”であるMISIA、“等身大”の存在として愛されるaiko

 逆にMISIAは、「つつみ込むように…」でデビューして以来、あまりメディアに露出するスタンスをとらず、ライブをメインに地道に活動してきた。それでも彼女の歌唱力は高く評価され、「Everything」などのヒット曲を世に送り出す一方で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)名誉大使やTI CAD V(第5回アフリカ開発会議)名誉大使など、アフリカをはじめとする途上国の支援活動を行なっている。また、メジャーデビュー前から椎名林檎とも交流があったaikoは、ライブでのファンとの距離感も近く、素朴で年齢不詳の見た目やファッション(Tシャツマニアなど)、詞世界など、独特の親近感のある“等身大”の存在として愛されてきた。

 「MISIAさんは、子どもの支援運動もそうですが、昨年の『NHK紅白歌合戦』で地元・長崎県の平和祈念像前で歌うなど、98年組の中では積極的に人権・平和運動に関わっているアーティストです。メディアへの露出もいまだに少なく、どこか“孤高の歌姫”といった趣きがありますね。aikoさんはむしろ、デビューからのスタンス・世界観を変えないところに独自性がある。年齢不詳ともよく言われますが、aikoさんの歌詞世界もまた老けず、普遍性を持っているんですね」(前出の編集者)

 こうしてみると、彼女たち5人は、根本的にはデビュー時から変わっていないとも言える。オリジナルの持ち味を活かしながら、それぞれが5人5様の成長を遂げた結果、活動の場やアプローチが拡がったり、楽曲の奥行きが深まるなどして、さらに自分たちの存在が際立っているのだ。そして5人とも、誰かのコピーではなく、先駆者であるところもまた強みだと言えるだろう。“宇多田っぽい”“椎名林檎っぽい”“あゆっぽい”アーティストはいるが、この5人が“〇〇っぽい”と言われることはない。だからこそ、デビュー20年近く経った今でも、固定ファンが離れることもないのである。今なお“全盛期”であり続ける“98年組”の5人だが、デビュー20周年あたりには何かしらのイベントを開催して、“夢の競演”を披露していただきたいものである。

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