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【aikoライブレポート】熱気溢れるツアーファイナル、ドラマティックな夢の時間
まるでドラマのようなライブ、序盤から会場は一つに
この日はとりわけ、それを実感した。メドレーなしの全28曲、3時間半。みんなで胸を高鳴らせ、たくさん笑って、汗をかき、心揺さぶられ、涙腺を刺激され……。aikoと観客の個々の想い、様々な感情が場内に波のように寄せては返し、時に飲みこむほどの威力を持って、ドラマを生み出していく。この忘れがたいドラマの作り手であり、主演がaikoなのだ。
ドラマの始まりは、アルバム『May dream』の1曲目でもある「何時何分」。暗転して幕が開き、aiko が歌い出すと、会場に神聖な空気が流れた。曲が進むにつれ、エモーショナルに高ぶっていくボーカルに包み込まれたかのように、会場中が一つに結ばれる。前半からまるでクライマックスのような興奮。続く「プラマイ」は、ステージを縦横無尽に駆け回る。ストライプ柄のワンピースは、aikoが歌い踊り、くるくると回転するたびに裾から覗く赤のチュールもふわふわと踊っていて、まるで花が咲き乱れているかのよう。冒頭から、4曲目、ロックでビターな味わいの「milk」まで、なみならぬ集中力で観る者の心を奪う。
花道を自在に動き回るaiko、観客との恋の駆け引きのよう
“遠いようで案外近く、近いようで実は遠い”距離感は、aikoというアーティストの魅力、楽曲の世界観とも重なって映った。愛とサービス精神は底知れず、飾らない人だから安心して近づけるけれど、繊細さも極まっているから無作法には触れられない。その感じが、切なくて、なぜだか心地良い。
恒例の即興曲も披露 濃密で儚い時間はトリプルアンコールまで続く
この即興曲、そして、久々の名曲「September」弾き語ったのを起点に、会場の熱量と集中力はますます高まったのを肌で感じた。そして、圧巻の後半へ。「好き嫌い」で少しずつギアを上げるや、「冷凍便」では熱っぽいバンドサウンドとボーカルが快感をもたらす。「帽子と水着と水平線」では、甘酸っぱい夏の匂いを感じさせる。本編は、ラストの「Loveletter」まであっという間に終了。
会場の熱気に押され、すぐに始まったアンコールの4曲は本編と地続きになっているかのようで、また素晴らしかった。新曲「恋をしたのは」を緊張感を持って披露すると、会場に再び神聖な空気が流れる。続く「夏が帰る」にて、本編では漂っていた夏の匂いを余韻に変える。最後は、白昼夢のように鮮やかでクールなカッコ良さと祝祭感が漂う「夢見る隙間」で終幕。こんなにも濃密な愛の時間を過ごしながらも、“全部夢でした”と言わんばかりのあっけない終わり方が、儚くて美しい。それでも、その時、流したaikoの涙と、その後、トリプルまで続いて高まり続けたアンコールが、この時間は、夢ではないことを教えてくれた。
(写真/岡田貴之 文/芳麗)
9/17(土)東京・NHKホール SET LIST
2.プラマイ
3.どろぼう
4.milk
5.信号
6.遊園地
7.問題集
8.微熱
9.もっと
10.シャッター
11.洗面所
12.愛だけは
13.September
14.好き嫌い
15.冷凍便
16.帽子と水着と水平線
17.キスする前に
18.イジワルな天使よ 世界を笑え!
19.Loveletter
〜アンコール〜
20.蒼い日
21.恋をしたのは
22.夏が帰る
23.夢見る隙間
〜ダブルアンコール〜
24.あたしの向こう
25.相合傘
26.ジェット
〜トリプルアンコール〜
27.ボーイフレンド
28.be master of life