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T.M.Revolution、4年ぶりのアルバムはある種原点回帰!?

 T.M.Revolutionが4年ぶり、10枚目となるアルバム『天』をリリースした。半分以上がタイアップのシングル曲という今作は、「ともすればとっちらかっていく」ところを「アルバムという“コース料理”に落とし込んだ」とのこと。また、制作にあたりプロデューサー・浅倉大介と作り上げてきた“チーム・T.M.R.”の魅力とその磨き方も見えてきたという西川。彼らのレアな関係性が生み出す“様式美”と“革新”の絶妙なバランス。

T.M.Revolution オフィシャルサイト(外部サイト)

実は全体のバランスとかは、1stアルバムの『MAKES REVOLUTION』を踏襲している

――現在は47都道府県を網羅する全国ツアーの真っ最中。手応えはいかがです?
西川 やっているほうは楽しいですよ、聴かされているほうはわからないけど(笑)。今まで出した曲もやっているけど、まだアルバムが出ていないですからね。

――アルバムがリリースされたら雰囲気は変わりますかね?
西川 いや、そうでもないと思いますよ。昔からやっている曲もそうだけど、ライブでは(CDの)原型をとどめてないので。アルバムを聴いたから安心できると思ったら大間違い。

――TM.R.のライブはお客さんも闘いですね(笑)。
西川 そう、玉の取り合いです(笑)。

――アルバム『天』も本気で聴かないと、飲み込まれてしまうぐらい濃厚な作品ですよね。半分がタイアップシングル曲ということもあって、1曲1曲の放つエネルギー量がすごい。
西川 既発のシングル曲、特にタイアップ曲は後先考えず作っているというか。ひと作品入魂のワンプレート料理みたいなものですから、それをアルバムというコース料理としてまとめていくためにはまた別の労力が必要でした。しかも前作から4年ぶりという時間経過もあるわけで、ともすればベスト盤とかオムニバスみたいな、ただ曲を詰め込みました的なものになってしまう。そんな、てんでバラバラな曲たちがアルバムという佇まいの中で、手になるのか足になるのか。そこを考える作業は難しくもあり、楽しくもありました。
――T.M.R.の曲はタイアップでも独自カラーが強いせいか、アルバムで改めて聴くと、いい意味で“タイアップ感”が薄れる気がしました。
西川 そこはありがたいことに(タイアップの)制作サイドが、オファーの段階で「西川にこういう歌を歌って欲しい」って形で、指名してくださるからでしょうね。だから僕もいつも通りのスタンスで曲を提供できているし、最終的にライブでパフォーマンスすることを念頭に置いているので、結果としてまとめたときにちぐはぐにならない。アルバムの一楽曲として存在していると思います。

――特にラストナンバーの「The edge of Heaven&Revolution」は持ち味である攻めの強さと、心地良い抜け感が絶妙にブレンドされていて、今までにない感触があるなと。
西川 これは既発のシングルが疾走感のある強い曲が多いので、その締めとして包み込むような大きな楽曲がいいんじゃないかってところで最後にしました。でも、今回はさっきも言ったようにそれぞれの曲がとっちらかっているわけで(笑)。1曲1曲がキラキラしたオーナメントだとしたら、それを繋げるツリーみたいなものが必要だったんですね。で、そのためにはこれまでに培ってきた様式美とか、セオリーをあえて踏んで行くというか。そこを外さないことがひとつテーマになると思って、実は全体のバランスとかは1stアルバムの『MAKES REVOLUTION』を踏襲しているんですよ。

――原点に戻ったということ?
西川 その当時から脈々と受け継がれてきた、伝統芸能的なことをやったという感じですかね。ライブとかでも必ずここで盛り上げるとか、あるじゃないですか。これ、誰が広めたの? YouTubeでアップされてるの? みたいな(笑)。そういういつの間にかでき上がっているものがT.M.R.も長い活動期間の中にあって。そこを毛嫌いして外すって方法もあるけど、それは自分が作ってきた歴史でもあるので、あえて踏襲したんです。今回は10枚目っていう節目になるアルバムですから、そういうことをしてもいいかなと。

常に学習と実践の繰り返し、自分に取り込んで基盤となる音楽に反映させていきたい

――なるほど。節目といえば来年はいよいよデビュー20周年も迎えます。アニバーサリー的なことは考えてます?
西川 何も考えてない(笑)。だって、このアルバムの制作だって、ライブや映画の撮影をやりながらだったから、なんも考えられないですよ。

――三谷幸喜監督の映画『ギャラクシー街道』出演も話題になっていますね。初の三谷組の現場はいかがでした?
西川 演技に関しては何も語れないけど、今回は完全に「西川にコレをやって欲しい」って呼ばれた段階で役柄が決まっていたので、やりやすかったです。

――“西川貴教”のままでいいと。
西川 そう。で、それを作品に生かしていく三谷さんの技術はすごい。まさに演出家ですよね。その人の中にあるものの一番いい部分をしっかり解釈して、形にするってとこはすごく勉強になる。そういった意味で音楽以外の部分は僕の中ですべて勉強だと思っていて、毎回、真摯に向き合って学習するっていうスタンス。それが自分自身の糧になっているんですよね。
――人の個性を引き出し伸ばすという作業は教師的なアプローチでもあると思いますが、西川さんは元々そういうことは得意なんですか?
西川 全然、不得手ですよ。本来は「生きていてごめんなさい」ってとこまで人を追いつめて、人格を崩壊させるところからスタートさせるタイプですから(笑)。

――そうだ、ドSですもんね(笑)。
西川 そうそう。でもそれだと物事が進まない。いろんなことをしたいなら、もっと武器を持たなきゃいけないってところで、あれこれ挑んでるわけですよ。だから常に学習と実践の繰り返しで、それをきちんと自分に取り込んで基盤となる音楽に反映させていきたい。僕はそういう代謝を繰り返していかないと生きていけないんです。鮮度を保つためには常にターンオーバーをしていかないと。

――では、新陳代謝をしてく中で、逆に捨てていきたいもの、今後はいらないと思うものはあります?
西川 捨てたいというか、捨てざるを得なかったのはプライベートじゃないですかね。いろいろ仕事をしていればおのずと私生活は犠牲になるわけで。

――時間が足りないって、前回のインタビューでも言ってましたね。
西川 そう。みんなが彼氏彼女と美味しいごはんとか食べている間も、僕は寂しいわけですよ(笑)。いまはツアー中なので、せめてその間にひとりで映画でも観に行きますかね。

(文:若松正子)
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