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SKY-HIから見たダンスボーカル・シーンとHIP HOPシーンの現状とは

 SKY-HIのシングル「スマイルドロップ」が、彼の誕生日である12月12日にリリースされた。今回は楽曲のことはもちろんであるが、彼の隠された苦悩やパーソナルな部分に焦点を当てたインタビューをお届けします。またAAAとしてダンスボーカルシーンを牽引してきた彼に現在のダンスボーカル・シーンについて、SKY-HIのサウンドの中核であるHIP HOPシーンの現状についても聞いてみました。

今回はメッセージ色もあえて少なめにした

――2ndシングル「スマイルドロップ」が出来上がるまでの経緯を教えてください。
SKY-HI 2013年末から2014年中頃ぐらいまで仕事、プライベート問わず身の回りで継続してネガティブなことが多くて。今年出演した夏フェスでは、バンドメンバーとダンサーを携えてやらせてもらったんですが、信頼できる仲間たちと自分の作った音楽を一緒に奏でられたことで、ネガティブから救ってもらえました。その空間はものすごいグルーヴにあふれていて、心強くて、温かくて。それが「スマイルドロップ」のサウンド、グルーヴに顕著にあらわれていると思います。

――「スマイルドロップ」を制作しているときには、すでにネガティブな自分から脱却していたと。
SKY-HI ちょうどネガティブから抜け出すかどうかのタイミングに「スマイルドロップ」を書きました。サビの<笑顔の理由が足りないや>というところから、まさに幸せを感じることで笑顔がこぼれてしまう、ひとりの男の話をこの曲では描いているんですけど、ここに辿り着くまでに何度も書き直して、結局23テイク目ぐらいで今の形になりました(笑)。

――かなりの時間を要したと。
SKY-HI でも、そのぶん、出来上がったときには、ネガティブとか辛い気持ちとか後悔とか失敗とかを紛らわすでもなく、吹っ切るでもなく、全部をまるごと受け止めることができたんです。

――この歌詞は日高くんの実体験をそのまま描いていると?
SKY-HI 根幹にある自分の意識や気持ちとかをストレートに歌にするのではなく、娯楽物、エンターテインとして誰もが楽しめるものにしたいと思っていたので、作り始めた段階ぐらいから、痛みを受け止めるさまを失恋のラブソングに置き換えて書こうって。聴く人にとってラブソングにも聞こえるじゃなく、ラブソングにしか聞こえない歌にしようと、今回はメッセージ色もあえて少なめにしたんです。

――そうだったんですね。
SKY-HI アルバム『TRICKSTER』のときには、自分の発想の転換ひとつで、ネガティブをポジティブにひっくり返すというテーマでやっていたんですが、あのときはもうちょっと力技だったといいますか(笑)。でも、そのおかげで違う次元のところに自分の意識を持っていくことができて、ツアーではそのときの完全体のSKY-HIを見せることができました。でも、そこからまたネガティブな出来事が度重なってしまい、「スマイルドロップ」を作り上げたことで、自分自身がもう一度救われたというか、痛みを抱きしめたまま、次の歩みを進められることに幸せを感じることができたんです。

――そのネガティブな出来事も、日高くんの性格的な向上心に由来する部分が大きいのでは?
SKY-HI 綿密な自己実現って、強い自意識がないとできないと思うんですよ。何より弱ったときにどんだけ前に進めるかって、すごいカロリーと時間が必要になってくると思うし。僕の場合は、すべてに翻弄されかけて、なかなか自分の頭の中にある自分に追いつけない瞬間を感じたとき、それがネガティブな方向へいってしまいましたね。生みの苦しみもそうですし。でも、それが結果、成長痛につながるといいますか。

――その成長痛というのは、AAAの活動の中でたくさん味わってきたと思うんだけど、これだけアーティストとして長い年月を重ねていても、いまだに何度も訪れるものであると。
SKY-HI もう、毎日(笑)。自分の中でその瞬間、どんなにいいものができたと思っても、次の日の自分はそれより少しでもいいものを作っている自分になっていないと嫌なんですよ。その追っかけっこみたいなものはきっと永遠に続いていくんじゃないかなって。

ダンスボーカル・シーンとHIP HOPシーンの現状とは

――また今春開催された『MTV VMAJ 2014』では、デビュー曲の「愛ブルーム」が「BEST HIP HOP VIDEO賞」を受賞するなど、SKY-HIの音楽は、日本のHIP HOPシーンで注目の存在として脚光を浴びていますが、客観的に今の日本のHIP HOPシーンをどう捉えていますか?
SKY-HI 正直、こればっかしはわかんないです、人の受け取り方次第だから。リスナーとしての目線でいえば、すごく熱くなっているとも受け取れるし、でも、出る側としてHIP HOPが世間にちゃんと届いているかと言われたら、そうだとは決して言えないし。届かないとは思わないけど、なんで届いてないのかというのを出る側の人間として、俺も含めてちゃんとシビアにかつシュアーに考えないといけないなと。単純に文化としての成熟度とか、ラップの手法としての向上とかキャラが立っている人が増えたというのは確実にあると思います。でも、一番はリスナーが楽しいと思えば、それが正解だと思うから、リスナーの人たちが今、HIP HOPシーンがきてると思ったらそれでいいんじゃないかと思います。

――AAAの後輩にあたるグループもみなさんがんばっていますが、最近のダンスボーカル・グループに関してはどう思いますか?
SKY-HI Da-iCEみたいなグループがあらわれたりするのはすごく頼もしいなとは思います。あと、w-inds.のメンバーや同じダンスボーカル・グループの人たちとプライベートでも仲良くさせてもらってますが、単に歌って踊っているからじゃなく、音楽に対するストイックな姿勢であったり、パーソナルな面でつながっている部分が大きいですね。でも、彼らがずっと第一線で活躍し続けている姿を見ると、刺激にはなります。この間、涼平くんの誕生日会のときに、SKY-HIが好きだと聞いて、その場で歌わせてもらったんですよ。対個人に向けて歌うということはこれまでなかったから、涼平くんが僕の歌を喜んでくれてすごくうれしかったし、久々にピュアな感覚を取り戻しましたね。

――いい仲間が本当に周りにたくさんいますよね。でも、それはSKY-HIがちゃんと音楽と向き合っているからこそじゃないかと。
SKY-HI あと、後輩から音楽にまつわることに限らずプライベートの相談とかをよく受るんですが、僕にしてくれたという、その気持ちがうれしいから、ちゃんと応えたいし、適当なことを言いたくなくて。何事に関してもうやむやにするんじゃなく、責任を持ちたいです。きっと僕は、誰よりも自由に生きたいから、誰よりも責任を持ちたいのかもしれないですね。

(文:星野彩乃)

「スマイルドロップ」ミュージックビデオ

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