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DJ和『サラリーマンDJが生み出すヒット作の秘訣とは!?』

ヒット曲のサビやオイシイところだけを集め、まるでクラブで聴いているような感覚で、ノンストップで聴かせることで人気のミックスCD。洋楽や日本のHIP HOPやR&Bが主流となるミックスCDの世界で、ほぼ唯一の存在として、J-POPばかりを選曲してヒット作を連発しているのがDJ和だ。ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズの業務委託社員でもある、サラリーマンDJが生み出すヒット作の秘訣を探った。

レーベル社員でもあるからこそできた、細かなリサーチや分析

 デビュー作となる『J-ポッパー伝説』を始め、『J-アニソン神曲祭り』、『A GIRL ↑↑』などDJ和関連作品の売り上げが28.5万枚を記録(オリコン調べ)。7月2日には、フジテレビ系深夜アニメ「ノイタミナ」の10周年を記念ミックスCD『ノイタミナ10TH ANNIVERSARY BEST』が、口コミを通じて話題。7月21日には『A GIRL ↑↑2』の夏限定ジャケットの新装盤をリリースした。

 こうしたミックスCDは、都会よりも、生活の足として車が欠かせない地域で、特に売れる傾向にあるそう。最初にリリースした2008年の『J-ポッパー伝説』は、いちばん売れたのが広島で、それに続いて千葉、埼玉、茨城、栃木と北関東で特に人気があったと言う。どこで、どんな風に、誰と聴くのかをイメージすることが、ヒットにつながっているのではと、DJ和は自己分析する。

 「車ユーザーに近いお店と密着した何か新しいことができないかと話していて。いわゆる王道のミックスでありながら、北関東や地方型の新しい企画CDを出そうということで生まれたのが『A GIRL↑↑』です。大きな駐車場を完備したショッピングモールで、車で買い物にやって来て、買ったCDを聴きながら帰るという、地元の方の生活リズムを想像して作りました。地方では、あまりオシャレすぎるものよりも、ストレートに今ヒットしているものの方が好まれる。本場のHIP HOPやR&Bに寄りすぎず、お茶の間感やドライブ感がありながら、みんなで楽しくワイワイとアガれる、そういうコンセプトで選曲しました」

 実際に『A GIRL↑↑』がもっとも売れたのは、鹿児島のショップだったそう。そうした細かなリサーチや分析をした上での企画やプロモーション戦略を練ることができたのは、DJ和がソニーの社員でもあることが大きい。DJ和として活動しながら、2010年から業務委託でソニー・ミュージックアソシエテッドレコーズ A&Rルーム1に籍を置く。レーベル側の意見はもちろん、アーティストの意見、ユーザーの意見、すべてが集約されるレコード会社にいることのメリットは大きいと話す。

 「DJだけやっていたときでは、決して分からなかったことをたくさん学んでいます。CDをリリースすると、毎日のようにバックオーダー(入荷待ちになっている注文)が何枚とか、デイリーランキングで何位とか、様々な情報が入って来る。それにアンケートはがきという形で、ユーザーの意見を聞くこともできます。何か企画を考えたときも、同じ社内でのことなので、物事が非常にスピーディーに働く。デメリットは考えつかないですね。ただ何か悪いことがあったときに、僕が直撃を食らうくらいです(笑)」

気になる給料体系は……!?

 サラリーマンDJということで、きっと誰もが気になるのが、印税を含む給料体系のことだろう。そのあたりは、いったいどうなっているのか?

 「僕の場合は、自分で作詞・作曲しているわけではないので、印税みたいなものはありません。アーティスト契約のみでやっていたときは、活動に応じてギャランティーが入るという形でしたので、ギャランティーが給料に代わったような感じです。あとDJ和としてイベントに出演することもあるので、そのときは別にギャランティーが出ます。とは言えイベントはたいてい休日なので、そのぶん休みが減るんですけどね(笑)」

 ミックスCDは、インディーズからも有名なヒット曲を扱ったものが数多く出ているが、そういう場合はたいていカバーで、打ち込みの曲を無名のアーティストが歌っていたりする。その点オリジナルの原曲を、そのまま使用できるのは、メジャーレーベルがリリースするからこその強みだろう。そこに籍を置くことで、楽曲使用の許諾申請が通りやすくなるメリットもあると話す。『A GIRL↑↑2』のように、ソニーミュージック所属のアーティストだけでなく、FUNKY MONKEY BABYSやm-flo、E-girls、ももいろクローバーZなど、多彩で超人気のアーティストばかりを収録できたのは、サラリーマンDJのDJ和だからこそできたと言える。

 そんな彼のルーツを紐解くと、中学生までは姉の影響でSPEEDにはじまり、L’Arc-en-Ciel、ゆず、SMAPなど、様々なJ-POPやJ-ROCKを聴いていたが、高校時代に洋楽のHIP HOPやR&Bにハマったとのこと。DJになった当初は、クラブで洋楽のHIP HOPやR&Bをかけており、そんななかでたまにお遊び的にJ-POPをかけていたそうだ。それがあるときから、洋楽のHIP HOPやR&Bが食傷気味になり、むしろJ-POPのほうに新鮮味や新しさを感じて、J-POP専門DJになった。しかしJ-POPというくくりは非常に幅広く楽曲数も多いため、そのなかから売れる切り口を見つけるのは至難の業。日々ネタを考えたり、リサーチすることを決して怠らないそうだ。

 「常に企画のネタはメモしています。春に聴きたいとか、海に行くときとか、そういう分かりやすいものからマニアックなものまで。そのなかから、確実性の高いものを順に出しています。それにプラス、時代の流れに乗ったものであることも重要。『ノイタミナ10TH ANNIVERSARY BEST』は、10周年の今だからこそだし、そういうタイムリー感が必要です。『J-アニソン神曲祭り』を最初に出した当時も、ニュースを見ていると海外でアニメ・アニソンの盛り上がりが、取り上げられるようになっていて。お茶の間に浸透していく度合いに比例して、リスナーの反応もすごくよくなっていきました」

フットワークの軽さもヒットの要因か――

 今も毎日欠かさずCDショップに足を運び、購入やレンタル、試聴したり、何店舗も回って音源収集を行っているという。実は、足を使った仕事は多いそうで、『ノイタミナ10TH ANNIVERSARY BEST』のリリース時も秋葉原のゲーマーズの店頭に立ち、自ら販促イベントを行った。また、各地のサービスエリアに車で行って即売会を開催し、1000枚売ったという記録も持つ。

 「けっこうドロ臭く、コツコツとやっています。買ってもらうのを待っているだけじゃダメだと思うんですよね」と少しでも買ってくれそうな人がいたら、そこに自ら出向いて行く、フットワークの軽さもヒットの要因かも。実際にDJ和は、即売会を盛り上げるための、抽選で使うガラガラを宣伝予算で購入してしまったほど。本人の言うところの“ドロ臭い営業”で、DJ和は今日も全国を飛び回っている。
(文:榑林史章)

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