米津玄師Ver「パプリカ」や「馬と鹿」の編曲家 「クラシックとPOPSの融合を3層構造で聴かせる」

「馬と鹿」、「パプリカ」の編曲を米津玄師と共に手がけ、宇多田ヒカルの井上陽水「少年時代」カバー曲の編曲を手がけるなど、クラシックとJ-POPの融合という実験的なアプローチで業界の話題をさらっている作曲家&音楽家の坂東祐大氏。クラシック/現代音楽を原点としつつも、アートとエンタメを繋ぐべく新たな挑戦を続ける若き立役者は今、何をめざしているのか。

米津玄師とのコラボで「新しいアプローチを探求する」

  • 東京藝術大学音楽学部作曲科を首席で卒業した経歴を持つ坂東氏

    東京藝術大学音楽学部作曲科を首席で卒業した経歴を持つ坂東氏

──クラシック/現代音楽の作曲家でありますが、近年はエンタメ分野でも目覚しく活躍されています。なかでも注目を集めた米津玄師さんとのコラボレーションは、どのようなきっかけで始まったのでしょうか?
坂東祐大(以下、坂東)最初にお声がけくださったのは米津玄師さんで、映画『海獣の子供』の主題歌「海の幽霊」でオーケストラをお願いしたいとお話をいただいたんです。その前にも映画『来る』(2018年)やアニメ『ユーリ !!! on ICE』(2016年)の劇伴を担当させていただいたことはありましたが、ポップス、特に日本語の歌詞がある作品に全面的に携わるのはほぼ初めてでした。米津さんともそこで初めてお会いしたのですが、クリエイティブに対するスタンスにすごく共感するところがあって。これは僕が一方的に思ってることかもしれないですが(笑)。そこから光栄なことに『馬と鹿』、『パプリカ(米津玄師 ver.)』と立て続けに共作でアレンジをさせていただいています。

──互いに共感したスタンスとは?
坂東どこかのインタビューで米津さんが「まだ見たことのない景色を見てみたい」といった趣旨のことをおっしゃっていたんですが、僕もそれはまったく同じで、創作において絶対にルーティーンに陥りたくないというか、常に新しいアプローチを探求したいと思っています。例えば「海の幽霊」についても実は非常に実験的な、おそらくこれまでポップスの領域ではあまり誰もやらないオーケストラのサウンドデザインをしています。ポップミュージックとオーケストラの融合はすでにスタイルとして完成されていて、沢山の名曲があります。基本的には歌に対して、リズムセクション(バンドあるいは打ち込みなどのこと)とオーケストラ伴奏側の2層、あるいは後者のみで構成されている。この曲ではその2層を繋ぐために、間にもう1層を挟み込んでいます。つまり伴奏が3層構造になっているんです。その層には活動の主軸である現代音楽のフィールドで探究している特殊奏法をたくさん入れているんですが、あくまで繋ぎ目なので、たぶん聴いても3層になっているのは全くわからないと思います。だけどその層があることで、サウンドがより立体的になることによって、作品の持つ世界観に更なる深みを出したいというのが目論見でした。

──3層構造という“発明”が、今後ほかのポップミュージックに取り入れられていくかもしれないですね。
坂東どうなのでしょうか(笑)。でも僕が知らないだけで、他にも試している方いらっしゃるかもしれませんし(笑)。技術が普遍化されるかどうかは別として、音楽というのはさまざまなトライアンドエラーの積み重ねで形成されていくものですから。僕自身はアートの文脈にあるクラシック/現代音楽を基本軸とする人間ですし、ポップス作品に関わる際にも実験精神は常に忘れないでいたいと思っています。

提供元: コンフィデンス

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