米津玄師Ver「パプリカ」や「馬と鹿」の編曲家 「クラシックとPOPSの融合を3層構造で聴かせる」

アートとエンタメに対するスタンス

  • 大胆なアプローチで新たな音楽体験を追求する音楽家チーム「Ensemble FOVE」

    大胆なアプローチで新たな音楽体験を追求する音楽家チーム「Ensemble FOVE」

─アートとエンタメはときに相反するものとして語られますが、坂東さんはどのようなスタンスでいらっしゃいますか?
坂東その2つの境目については常々考えているのですが、個人的にはどこまで行っても2つを明確にこれだ、と線引きができるような結論が出ない状態です。一般に、アートは個人主義でエンタメは商業主義だとざっくり言われますが、そんな単純に割り切れるものでもないというか。これは世代的なものもあるかもしれないですね。僕はYouTubeの躍進と共に学生時代を過ごした世代だと思うんですけど、ジャンルにしろカルチャーにしろ、分け隔てなく触れてきたこの世代には、「これはアート」「これはエンタメ」と変に分けて捉えない感覚があるような気がしています。少しネガティブな話になってしまうのですが、僕が映像の分野の仕事をするようになったときに、ある人から「坂東さん、けっこう軽いのもやるんですね」と言われたことがあって。それが僕はすごく嫌だったんですよね。

──それは現代音楽/クラシックの界隈の方がおっしゃったんですか?
坂東そうですね。どうしても「コンサートで演奏されているものだけが本物である」みたいな雰囲気があるんですが、僕はそれがすごくもったいないと思っていて。それよりもさまざまな場所に柔軟に行き来できたほうが、文化としては健全だと思うんですね。ちょっと前にレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドが、スティーブ・ライヒとコラボレーションして、ニューヨークの現代音楽のアンサンブルのアラーム・ウィル・サウンドとコンサートをやったりしました。それこそ、今年リリースされたトム・ヨークの『アニマ』も、コンテンポラリーのダンスカンパニーとコラボレーションしてめちゃくちゃ攻めていて。ああいった柔軟なジャンルの横断がとても理想的だし、ジャンルを隔たりなく行き来できる流れは、今後さらに進んでくれたらいいなと。

──ただ日本では、クラシック/現代音楽の本流の音楽家とポップスの融合は例が少ないように感じます。課題はどこにあるのでしょうか?
坂東うーん、難しいですね(笑)。僕自身はその壁を壊したくて、さまざまな分野に柔軟にアクセスができるチームとして結成したのがEnsemble FOVEです。メンバーは僕と同世代のクラシックの演奏家、各楽器でトップクラスの実力を持つ奏者たち。きっかけは、僕が大学院生の頃からCM音楽の作曲の依頼をいただくようになって、最初はスタジオミュージシャンの方々に演奏をしてもらっていたんですが、信頼のおける仲間とチームを作れば密なコミュニケーションができるな、と考えて声をかけたのが始まりでした。そんなふうにふわっと集まったチームですが、僕が大学院を卒業した2016年に正式に設立して、オリジナルの作品制作やアートプロジェクトなどより発展的な活動をしています。また、僕が関わってきた一連の映像作品、歌ものなどを演奏しているのもEnsemble FOVEです。

提供元: コンフィデンス

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