【Creators Search】BTSの日本活動に必要不可欠なKM-MARKIT 表現の幅を広げるディレクション

 BTSのシングル「Lights/Boy With Luv」は、62.1万枚で自己最高の初週売上を記録し、4作連続、通算5作目の1位を獲得した。その「Boy With Luv」をはじめ、日本デビューシングル「NOMORE DREAM -Japanese Ver.-」より日本語歌詞とレコーディングディレクションを手がけるのがKM-MARKIT氏だ。基本的にメンバー自身が楽曲制作に関わっているBTSだが、彼らの日本での活動に欠かせないKM-MARKIT氏を改めて紹介したい。

Zeebraも認めるラッパー、BTSメンバーもKM-MARKIT氏をリスペクト

  • BTSのシングル「Lights/Boy With Luv」

    BTSのシングル「Lights/Boy With Luv」

 日本での10thシングルの表題曲「Lights」は日本オリジナル楽曲。トロピカルハウス、トラップ以降の流れを感じさせるトラック、J-POP的なテイストを取り入れたドラマティックなメロディーを軸にした「Lights」は、現在進行形のUSのR&B、HIP HOPのトレンドを汲み取りながら、日本のマーケットに適応させた楽曲に仕上がっている。ボーカル、ラップの個性を際立たせる構成、“僕らはいつでも音で繋がることができる”というファン向けのメッセージを込めた歌詞を含め、J-POPユーザーからダンスミュージックのコアなリスナーまで、幅広い層のリスナーにリーチできる楽曲だ。

 同曲のプロデュースはUTA。作曲はUTAとYohei、作詞はSUNNY BOYとYohei、編曲はUTA、ラップアレンジはKM-MARKIT、ミックスエンジニアはD.O.I.が担当。基本的にメンバー自身が楽曲制作に関わっているBTSだが、日本の楽曲は国内のクリエイターとのコラボが中心。一方の「Boy With Luv」は、韓国オリジナルの楽曲だが、日本語歌詞、ラップアレンジを担っているのがKM-MARKIT氏だ。

 10歳からの6年間をアメリカ・ニュージャジー州で過ごしたKM-MARKIT氏は、帰国後に音楽活動をスタート。1998年にZeebra率いるHIP HOPクルー・URBARIAN GYMに参加した後、Zeebraの2ndアルバム『BASED ON A TRUE STORY』収録曲「BEAT BOXING」に客演したことで、注目を集めた。2005年4月に1stアルバム『VIVID』でメジャーデビュー。倖田來未、久保田利伸、Zeebra、Full Of Harmonyなどの楽曲に参加する一方、作家としても才能を発揮し、w-inds.、SWAY、Samuelらの楽曲に関わってきた。

“日本語バージョン”の表現の幅を広げるKM-MARKIT氏のディレクション

 BTSとKM-MARKIT氏の関りは、日本デビューシングル「NOMORE DREAM -Japanese Ver.-」(2016年)から。韓国のHIP HOPシーンで活動していたRM、シュガ、J-HOPEを中心に、デビュー当初から本格的なHIP HOPを志向していたBTSにとって、ラップはきわめて重要な要素であり、日本でのデビューに際して、「いかにカッコいい日本語のラップを聴かせるか」はもっとも大きなテーマだったと言っていい。10代の若者に対する真摯なメッセージ性を含んだ原曲(韓国語)のリリックを、そこに含まれたニュアンスを維持しながら、日本語のラップとして表現できるクリエイターとして白羽の矢が立ったのが、以前からメンバーがリスペクト表明していたKM-MARKIT氏だったというわけだ。

 日本デビュー曲「NOMORE DREAM -Japanese Ver.-」は、韓国の教育環境をテーマにしたナンバー。また、日本語の歌詞は、10代の率直な思いをストレートに描くと同時に、リズム、フロウ、語感などのバランスも抜群。日本語ラップのディレクションもKM-MARKIT氏が担当しており、BTSの日本進出に大きな役割を果たしている。この曲の制作についてRMは「何より大変だったのは、僕たちが描いた歌詞を日本語詞で表現してくださったKM-MARKITさんだと思います」「ディテールの繊細な韓国語の感情、原曲の形を維持しながら日本語訳してくださり、本当に感謝しています」と最大級の感謝を口にしていた(2014年6月「ORICON NEWS」インタビューより)。

 KM-MARKIT氏は今回の収録曲「Boy With Luv」と「IDOL」のJapanesever.の日本語歌詞とレコーディングディレクションも担当。“君を守りたい”というピュアな感情を英語と日本語を交えてなめらかに表現した「Boy With Luv」、韓国語のリリックを一部残しながら、アタックの強いラップの魅力を引き出した「IDOL」からは、BTSの“日本語バージョン”の表現の幅が大きく広がっていることが伝わってくる。

 楽曲のコンセプトはもちろん、メンバーの特性とセンス、発音の傾向を熟知したうえで行われる作詞とボーカルディレクションは、日本におけるBTSの活動に必要不可欠。両者のコラボレーションは今後、アジア発のグローバルポップの在り方にも大きな影響を与えることになりそうだ。

(文/森朋之)

提供元: コンフィデンス

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