『伝説のライブ』を現代で体感できる ライブを“真空パックする”ヤマハ『Real Sound Viewing』
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発想の原点は「すべての人にライブの音を届けたい」
このバーチャルライブコンテンツは、過去に収録したライブをデジタル音源化し、目の前の楽器の自動演奏によって音を出し、映像も透過スクリーンを使って投影。目の前に人がいないのに、時代も場所も超えてまるで“真空パック”してきたかのようにライブを体験できるというもの。開発のきっかけになったのは、柘植氏のある思いだったという。
「『すべての人にライブの音を届けたい』ということが発想の原点でした。世の中には、『チケットが取れない』『ライブ会場が遠くて行けない』『そのグループ(バンド)が解散している』『そのアーティストがお亡くなりになっている』など、観たくても観られないライブがたくさんあります。それらを解消するツールとして、ライブCDやDVDなどがありますが、やはりそこには限界があります。ライブ会場に行って体感できるあのお腹にズシンとくる感覚までは再現しきれません。ならば、アーティストさんのパフォーマンスをそのまま残して再現する仕組みを、弊社の技術を使って作れるのではないかと思いスタートしました」
有志の取り組みからスタート
「もともと有志のメンバーで独自で始めた取り組みでした。企業風土なのでしょうか、弊社には“作らずにはいられない”人たちがいっぱいいて、こういう有志の集まりも少なくありません(笑)。『百聞は一見に如かず、これは企画書では伝わらないだろう。観てもらったほうが早いな』と思っていたので、実験を重ねました」
開発で苦労したことを聞くと、「ありすぎてどれを挙げればいいのか(笑)。なかでもライブ映像と楽器の自動演奏の同期には苦労しました。ライブなので、一瞬でもタイミングがずれれば、(お客さんの熱は)冷めてしまう。ミリ秒単位での調整を行いました。あとは、ピアノの自動演奏の技術はあったのですが、ドラムとウッドベースの自動演奏は非常に珍しいんです。特にドラムはスネアやシンバルなど、構成する楽器が多く苦労しました。『音響再現装置』をドラムのパーツに取り付けると、自動演奏が可能になるけれど、どういうものにしたら、再現度を高めることができるのか。この開発でも何度も心が折れそうになりました」。その一方で、「この技術が開発できれば、世界中でライブが観たくても観られない人たちに、本当の音を届けることができる。それを考えたら、自分の一時の苦労なんて大したことではないです」と笑う。
実験を繰り返し生まれたプロトタイプが、社内で評判となり、静岡にあるヤマハミュージアムにおいて「バーチャルステージ」という名前で展示され、そこでも好評を得た。そして、柘植氏の考えに共鳴したH ZETTRIOが実験的にライブ演出で取り入れ、6月の新曲発表でも使用した。