“音楽弱者”を救い、誰もが楽しめる楽器を開発 世界ゆるミュージック協会が目指す世界とは?

 4月17日、東京・銀座で「世界ゆるミュージック協会」の設立が発表された。年齢、性別、障がいなどに関係なく、誰もが気軽に弾ける楽器の開発と普及を目指し活動する同協会が目指すものとは? 代表の澤田智洋氏に話を聞いた。

始まりは、「マイノリティーが 活躍できるものを作ろう」

 世界ゆるミュージック協会設立にあたり、その前段として説明しておかなければいけないのが、世界ゆるスポーツ協会の存在。スポーツ弱者=スポーツが嫌いな人を世界からなくしたいという思いから、誰もが楽しめるスポーツを開発しようと、2015年4月に始動した。

「私は運動が苦手だったんですけど、同じように思っている方が結構いらっしゃったんですね。文科省のスポーツ実施率というデータによると、日本におけるスポーツをやっている人の割合は55%。逆に言えば45%はやっていない人たちなんですけど、そこはあえて課題化されていなかったんですね。だからまず、運動音痴と言われている人たちを“スポーツ弱者”という言い方にして顕在化させ、スポーツマイノリティーが活躍できるものを作ろうというところからスタートしました。概念・コンセプトだけでなく競技を開発して、実際に体験してもらいながら、その考え方を広く知ってもらうために活動していきました」

 概念は理解できでも、実際にコンテンツ(競技)が面白くなければ賛同は得られないもの。この競技開発において、重要な点があるという。

「みんなが下手になることって何だろうって考えるんです。スポーツってルールがあって、それはすごいストレスのかかること。そのストレスのかかるポイントをずらして、新しい不自由を与える。新しい不自由を同時に提示されると、人は戸惑って平等になる。そこを頭や体を駆使して乗り越えると新たな自由ができて、喜びに変わる。それがゆるスポーツなんです」

 この考え方を横にスライドさせて、“音楽弱者”を救済したいと設立したのが世界ゆるミュージック協会だ。

「日本人の楽器人口はおよそ5〜10%。スポーツ弱者の倍以上いるんです。楽器は難しいからと諦めている“音楽弱者”も誰でも気軽にできる楽器ができれば、救えるのではないかと考えました」

日常生活の延長線上にある 動作をヒントに楽器開発

 この考えと協会設立の構想は「2年以上前からあった」というが、なかなか実現に至らなかったのには理由がある。

「コンテンツ(楽器)が全く思いつかなかったんです。考え方を伝えるだけでは浸透しない。コンテンツがあってそれを実際に体験してもらうことが重要なので、そこで時間がかかりました。最終的に、楽器は0から練習することが大変だから、それを5合目くらいからスタートできるようなものにしたらどうだろう。日常生活の行動に紐づいているものならどうだろうと考えて、『TYPE PLAYER』ができて、ようやくスタートできました」

 パソコンのキーボードを鍵盤に見立て、キーを押すと音が出る「TYPE PLAYER」をきっかけに、グラスで乾杯をすると和音が響く「和音グラス」、コードが押さえられなくてもポーズを決めれば音が出る「POSE GUITAR」など6種類の楽器を発表。そのどれもが、年齢・性別・障がいなどを問わない誰もが簡単に扱えるものになっている。

「楽器の場合、『日常生活で誰もがやったことのある動作』をヒントにしながら、誰もが触りたくなるようなセクシーな楽器を目指して開発しています。その上で、誰もが簡単に扱えて、自由に音が出る一方で、練習すればしただけうまくなるという特性も兼ね備えている。もちろんこれで完成ではなく、試行錯誤しながら新しい楽器を作っていきます」
 実際、この記者発表前に行われたお披露目会では、たくさんのお客さんが実際に手に取り、みんな笑顔で楽しそうに「音」を「楽しむ」姿が非常に印象的だった。

「想像以上にみなさんが楽しんでくださっていて、素直に嬉しかったです。こういった活動で一般の方々への認知を広めると共に、今プロのミュージシャンの方々とも水面下でさまざまなお話をさせていただいています。このコンセプトを面白がってくださる方々が多いんです。これらの楽器で作曲したら、楽曲の多様性って今よりもっと広がると思うんですよね。そうかと思うと、例えば『TYPE PLAYER』はキーを打つので、お年寄りの認知症予防にも使える。プロからお年寄りまで、音楽があるところから、今まで音楽が入り込めなかった隙間までカバーできる。それがゆるミュージックだと思っています。楽器のアイデアは常に募集中なので、気軽にご連絡いただきたいですね」

 今年は「ゆるミュージック」普及と並行し、楽器の開発を進めていくつもりだという。

「最終的にはゆるミュージックの楽器だけでライブができるようになったらいいですね。YouTubeなどが広まったおかげで誰もがインフルエンサーになれる時代になったように、“誰もがミュージシャンになれる世界”になったら楽しいなって思います(笑)。『音楽って楽しいじゃん』ってたくさんの人に思ってほしいんですよね。『令和』の始まりに、音楽も新時代になったらと思います」

提供元: コンフィデンス

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