産学連携で目指す、リアルを超えた遠隔ライブVR配信
ユーザー嗜好性の高いライブの楽しみ方を実現
この日公開された「LiVRation」とは、VR配信によってユーザーが遠隔地でライブイベントを楽しむ、既存のライブ配信をより拡張するプラットフォーム。ライブ会場に設置された8台の全周カメラからの4K360度映像が7ストリーム、歌手や楽器ごとのマイクのほか会場内の環境音を収録するマイクからの音声が8ストリームでライブ配信され、ユーザーはVRヘッドマウントディスプレイを装着して、360度視点とハイレゾマルチオーディオで再現された音響により、立体的な臨場感のあるライブを楽しむことができる。
特徴的なのは、ライブ会場内のカメラ位置を切り替えることで、客席最前列から2階席、さらにはステージ上のアーティストの後方や、ライブ会場を見下ろす天井視点など、リアルではありえない場所でもライブを体感可能なこと。加えて、オブジェクトオーディオ技術の活用により、音声データに位置情報が追加されることで、それぞれの視点(カメラ位置)での音響が再現され、そこから頭を動かすとその動きと一致した立体的な音響が届くほか、ボーカルだけやドラムだけといった特定の音声のみの再生や出力調整も可能になる。
また、ライブハウスやホール、ドームといった会場ごとの音響の再現も実現する。さまざまなライブ会場内の好きな場所に移動しながら、曲によってバンドメンバーの特定の音をズームアップして聴くというような、嗜好性の高い、リアルを超えたライブの楽しみ方を実現している。
コンソーシアムに参加する東京大学の江崎浩教授は「ライブ会場そのものをオンラインでつなげることで、物理的な制約を取り払って、だれもがライブに参加することができます。さらにユーザーそれぞれが自律的に自分のライブ空間を作って楽しむことができるんです」とまさにライブ体験が拡張されることを説明する。
まずは音楽からスタート 興味のある会社の参加を募る
ユーザーが自宅などそれぞれ好きな場所で楽しむことができるようになるのは、5Gが商用サービスとしてスタートしてからのことになるようだ。現状では具体的なサービス化は未定だが、まずはパッケージとして新たなライブの楽しみ方を提供してくことになるとみられる。
一方、「LiVRation」の活用シーンとしては、音楽ライブやイベントなどのエンタテインメントだけでなく、スポーツ、医療、車の自動運転など幅広い応用も期待される。デモを行ったアルファコード社CEO兼COOの水野拓宏氏は、コンソーシアムとしてオープンに活用していくとし、「興味を持っていただいた会社に参加していただいて、新しいビジネスを作っていきたい」と語った。