ミュージックビデオからも垣間見える、星野源×『ドラえもん』タイアップの“潔さ”

 『映画ドラえもん のび太の宝島』(3月3日公開)の主題歌となっている星野源の書き下ろし楽曲が、話題になっている。19日に公開となったミュージックビデオは公開するや1日で100万再生を突破。今回の星野源の取り組みについて、マーケティングデザイン会社トライバルメディアハウスに所属し、エンタテインメントマーケティングレーベル「Modern Age/モダンエイジ」レーベルヘッドも務める高野修平氏に、マーケティングの観点から解説してもらった。

“潔さ”こそが記憶に残るタイアップのカギ

 今回、注目した星野源による『映画ドラえもん のび太の宝島』の主題歌のタイトルは、なんと「ドラえもん」。ミュージックビデオはどこか不思議さを感じさせる空間で華麗でユーモラスなダンスの中で歌う星野源とJ-POPでは見たことのない濃厚なダンスが繰り広げられている。美術のセットなども相まって、まさに「ドラえもん」の雰囲気を感じる世界観だ。

 ここまでタイアップ先の世界を組み込んでいるパターンというのは珍しく感じるかもしれないが、実は広告、マーケティング的観点でもこの形こそがもっとも違和感なくファンにも受け入れられ、効果的なのである。

 ファンとしてはプロダクトプレイスメントを見たいのではなく、アーティストの姿や声を純粋な形で見たい。ゆえに“さりげなく”組み込むことで双方の利害を一致させるといういわば大人の事情を考慮したタイアップが多い。

 しかし、どうせタイアップをするのなら今回の星野源のように堂々とやりきってしまったほうがファンとしても許容できるし、純粋に楽曲やミュージックビデオに浸れる。結果、何度もリピートしてしまうし、頭の中に映像やメロディが残る。潔さがプラスに働く要素と言える。
 単刀直入にいえば、正々堂々と見せきったほうがクリエイティブ的にも、広告的観点にも理にかなっているのだ。過去にも、ミュージックビデオとCMをシンクロさせたMTVの企画「BRANDED MUSIC VIDEO」で、ソニーのパソコン・VAIOとコラボレーションをした RIP SLYME が、MVのメインをそのままVAIOにし、宇多田ヒカル×カップヌードルのCM曲「Kiss&Cry」でも、歌詞にしっかりと“日清カップヌードル”と記載されていた。このように今も記憶に残るタイアップというのは、この“潔さ”もポイントの1つとなる。

 得てしてタイアップの場合はなるべくブランド色を薄めようとしがちだが、実際は、潔くやりきったアーティストのほうが得るものは大きい。自身の世界観の中にブランドを昇華させるチカラがあるアーティストは結果、そこに両者の世界観が並列に存在し、意味あるタイアップとなるのである。(文/高野修平氏)

 この「ドラえもん」の世界観を活かしたミュージックビデオのアイデア&プロデュースは星野源。映像の中に見られる細かな美術は、「恋」、「Family Song」のMVでもアートディレクションを手がけた吉田ユニ。そして監督は、「SUN」、「時よ」、「恋」、「Family Song」に続き、関和亮が担当。ヒットメイカーたちによる一連のプロダクトは、星野源のファン、そして、すべての世代の「ドラえもん」ファンも楽しめる作品に仕上がっている。この“潔さ”を成立させたプロフェッショナルたちの遊びゴコロこそが本作の見どころ、聴きどころも言えるだろう。

提供元: コンフィデンス

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