「CD」「ダウンロード」「サブスク」3形態の楽曲ランキング比較
CDとダウンロードの順位の違いから読み取れること
また、キリン「午後の紅茶」新CMソングとしてオンエア中のスピッツ「楓」(12年7月配信開始)は、ダウンロード3位(1.9万DL)にランクインしているが、CD(98年発売)は100位圏外。キャンペーンソングなどによるメディア露出とデジタル配信との親和性の高さがうかがえる。
CD売上枚数、ダウンロード数の比較では、1〜10位までを見ると、コアファンが動くCDのほうが売上枚数が多いが、週によって異なるもののおおよそ20位前後で逆転し、100位ではダウンロード数のほうが倍以上になることが多い。CDランキングはコア層の多いアーティストの人気の指標になっているが、一方でダウンロードはより幅広くライト層の消費を促しており、その時々の流行を映し出していることが、数字の上でその規模とともにはっきりとわかる。
メディア露出など世の中の話題性が顕著に現れるサブスク
また、Spotifyは「JAPAN TOP 50」など通常のトップチャートのほかに、再生回数ではなくシェアなどの回数を重視したバイラルチャートがある。変動の少ないトップチャートに対して、バイラルチャートは人気急上昇曲などもっともタイムリーかつダイナミックにシーンの動きを反映することから、コンフィデンスでは同チャートを掲載している。
Spotyfyは、TOP5中の3曲が洋楽だが、1位は東京メトロ「Find my Tokyo.」キャンペーン第3弾CMソングとなっている、佐藤千亜妃(きのこ帝国)、金子ノブアキ(RIZE)、小林武史による「太陽に背いて」。そのほか、10位のDJ OZMA「アゲ♂アゲ♂every☆騎士」は、日本郵政グループの「#そうか!平成30年か!」キャンペーンと連動したプレイリスト「平成ボックスヒストリー」収録からのランクイン。サブスクにおけるランキング上位の邦楽は、メディア露出の影響など世の中の話題性が顕著に現れることがわかる。
この4つのランキングからは、ヒット曲の要因を掘り下げていき、それぞれのランキングと世の中の事象、ユーザー動向を関連付けて見ることで、多様化する音楽シーンのヒットを構造的に分析することができる。もはやひとつのランキングではシーンを語れなくなった時代に、音楽関係者にとってヒット創出への多くのヒントを内在するだけでなく、広くエンタテインメントに関わる者それぞれにとっての有益な発見のあるマーケティングツールになることだろう。
◆週刊エンタテインメントビジネス誌コンフィデンスについて