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“自己満足”から同乗者も楽しむものへ…時代とともに変化する「カスタムカー」の在り方

 かつては車好きが、カッコよさや速さを求めて行うイメージがあった車のカスタム。だが、近年はさまざまなパーツが開発され、広く一般の人たちにとって、外装や内装を自分好みに仕上げる身近なものになっている。またカスタムの幅も広がり、“見た目”だけでなく、運転者には「運転が上手くなった」と感じさせ、同乗者に快適な乗り心地を追求したカスタムカーも登場。多様化するカスタムカーの変遷と今を探った。

車好きのものだった“カスタム”が身近なものに変化「1995年の法規制緩和がきっかけ」

 カスタムカーというと、かつては「ルーレット族」や「ドリフト族」「ローリング族」「ゼロヨン族」といった運転技術や速さを競う「走り屋」がエンジンやマフラー、シートなどをいじったり、「暴走族」らが乗る“竹槍”“デッパ”などを施した“改造車”というイメージが強かった。だが近年は、軽自動車のホイールを好みの色に変えたり、ミニバンのナンバーフレームをLEDイルミネーションに変えたり、ジムニーの車高を上げてワイルドさをアップしたり、キャンプブームを追い風に、軽バンやワンボックスカーをアウトドア仕様にするなど、市販車を自分好みにカスタマイズした車が多い。いつ頃から今のようなカジュアルなかたちに、その存在が変わっていったのだろう。

 1976年より、フロアマットなどホンダの純正アクセサリーの企画・開発・販売を行っているホンダアクセスに話を聞くと、「2000年頃から見られ方がだいぶ変わってきた印象がある」と振り返る。

「1995年に道路運送車両法の規制緩和によって車のカスタマイズの自由度が増し、私たちのような純正メーカーをはじめとするカーメーカーや、サードパーティーと呼ばれているカスタマイズ専門店がさまざまな商品を開発し、販売するようになりました。その結果、それまで車検で引っかかるようなグレーな改造で一部の人たちの特殊なものと思われていた車のカスタムが、一般の人たちも選べる身近なものへと変わりました。
 さらに2010年頃から、各自動車メーカーがカスタマイズした“コンプリートカー”を車種のグレードのひとつとして販売するようになったことで、カスタムカーに対するみなさまの意識がだいぶ変化していったと感じています」(営業部 商品企画課 商品広報グループ 石川伸子氏/以下石川氏)

“速さ”“カッコよさ”の「自己満足」とは異なる、カスタムカーの新たな価値観を創造

 ホンダアクセスも、1999年に『Modulo』ブランドで、外観を飾るエアロパーツやサスペンション、アルミホイールなどを販売。その後、ユーザーの要望に応えるように、さまざまなインテリアのカスタムパーツも手掛けるように。同社では、カーユーザーの意識の変化をこう解説する。

「車のカスタマイズは個性を表現する手段として、年々、身近な存在となるとともに、要望も多種多様になっています。たとえば、外観をレトロにするカスタマイズが今、人気になっていたり、インテリアでは、LEDを使った間接照明や、シートカバー、また、ステアリングを木目調にするなど、質感や利便性を高めるアイテムを装着して、自分が居心地の良いようにカスタマイズする人が増えています。車は高い買い物ですから、自分が満足できるようにカスタマイズして、所有感を高めたいと考える人が増えているのではないでしょうか」(営業部 商品企画課 商品広報グループ 澤田修一氏/以下澤田氏)

 一部の車好きのものから広く一般へ浸透してきた車のカスタムだが、そのなかで受け継がれているのが、澤田氏も言う“自己満足”。速さやカッコよさ、快適性など、求めるベクトルの方向性はさまざまだが、運転者・所有者の心を満たすという意味では、そのマインドに大きな変化はない。

 そんななか、ホンダアクセスは、新たなカスタムコンプリートカーブランド『Modulo X』シリーズを2013年にスタート。同社がこのシリーズで打ち出したのは、「同乗者にとっても快適な乗り心地の移動空間」。この取り組みが斬新といえる点は運転者の満足感だけの追求に終始しなかったこと。カスタムカーの“走り”といえば、トヨタのTRDや日産のNISMO、ホンダの無限 MUGENなど、レースで培ったノウハウをフィードバックし、速さや操縦性など、“運転者”を満足させることを重視したものが多い中、“同乗者”にも焦点を当てた点においても、カスタムカーに新しい価値観を創り出した。

「カスタムで“走り”をとらえた車というと、レースからブレイクダウンしているブランドが多いために、運転者は走らせて楽しいけれど、同乗している家族は乗り味が固くて快適でないなど犠牲を強いられてしまう部分がありました。ホンダは“移動する喜び”を大切にしていて、そのターゲットにはファミリーも多く含まれていますので、子会社である弊社は、他社とは違うベクトルで、運転者だけでなく同乗者も“乗って楽しい、気持ちいい”を感じていただけることを重視してコンプリートカー開発を行いました」(澤田氏)

同じ走りでも「速さ」ではなく「同乗者の快適性」を追求「“実効空力”の技術で可能に」

 では、同乗者も“乗って楽しい”車とはどんなものなのか。具体的には、雪道や荒れた道などの悪条件でも、同乗者も快適に遠出ができる“走り”がテーマ。同社が開発を重ねて来た実効空力の技術がそれを可能にしているという。

「自転車に乗っているとき、ちょっと身をかがめただけでだいぶ風の抵抗が減って走りやすくなることはみなさんおわかりだと思いますが、車はもっと表面積が大きいので、5〜10km/hでもかなり大きな空気抵抗を受けて走っています。『Modulo X』では、実効空力の技術を活かした空力デバイスを採用することによって、タイヤの接地性を高め、車の動きをコントロールしています。4つのタイヤに均等に力がかかることで、さまざまな状況の路面でも接地性が失われず思ったように走れますし、同乗者にとっても不快な動きが抑えられた、安定した走りを実現しています」(澤田氏)

 この追求によって、テストドライブをしたユーザーからは「いつも車酔いがひどい子どもが全然大丈夫だった」などの声が寄せられるほどの成果を上げている。また同乗者だけでなく、「運転手にとっても、運転しやすく、走って気持ちいいというメリットを生んだ」という。

「悪条件の道を走っても同乗者が気持ち悪くならないよう揺れを抑えられるだけでなく無駄にハンドルを切らなくてもいいなど、運転者にとっても無駄な動きが減って、運転が楽になるというメリットも生まれました。ユーザーからも『自分が思っているように車を操れるようになって、運転が楽しいなと思うようになった』というお声や、たまに運転される方から『運転が上手くなった気がする』という感想をたくさんいただいています」(澤田氏)

 もちろん、より所有感を高められるよう、外見や内装も重視。開発段階では、デザイナーもテストコースに同行し、自分でステアリングを握って、走りを確認し、開発チームと意見を交わしながら、作り上げているという。

「空力的にはすごくいいけれど、見た目がカッコ悪いからとやり直したこともありました。ベースとなる車両はメーカーで何年もかけて研究開発し、世に送り出されていますが、『Modulo X』はさらにそこから2〜3年かけて、ベース車が持っているポテンシャルをより引き出せるような実効空力を追求し、エアロパーツを盛ったり削ったりしながら走行テストを重ねて開発しています。軽自動車であっても、ベース車両よりも高いクラスのカテゴリーの車の走りをイメージして、大人が乗って満足できるような走りと質を追求し、開発しています」(石川氏)

広がるカスタムの多様性「わんこと一緒に楽しいおでかけを」をコンセプトにした物も

 さらに近年、同社では、近年のソロキャンプ需要が増したことを受け、シールドやカーテン、虫よけの網、外部電源がとれるシステムなどのアウトドアアクセサリーや、「わんこと一緒に楽しいおでかけを!」をコンセプトに、愛犬が車で快適に安心してすごせるアクセサリーにも注力。実に多様なラインアップを見せている。

 「速さ」「カッコよさ」から「個性アピール」「居心地の良さ」、さらに「趣味に合った使い勝手」「運転のしやすさ」「同乗者の快適さ」まで、車のカスタムが多種多様に広がりを見せているのは、運転者の“自己満足”だった時代から一歩進んで、一緒に乗る家族やパートナーと楽しむものに変容しているからといえるだろう。

「今はさまざまなカーアクセサリーをネットなどでも簡単に購入することができますが、中には安全面を考えると避けたほうがいいのではないかという物も存在しています。純正メーカーとしては、そういうことも啓蒙しながら、多様化するニーズに応えられるよう尽力し、みなさまにより快適で安全に車を楽しんでいただけたらと考えています」(石川氏)

取材・文/河上いつ子

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