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天津・向、“オタク愛”を仕事に繋げ年収1000万超え もはや副業とは呼べない熱量の源泉「芸人は何をやっても芸人」

 芸人という職業の傍ら、アニメや声優などのいわゆる「オタク」分野で活躍する天津・向清太朗。MCのオファーは絶えず、自らイベントを積極的に企画・主催し、年間300本以上の仕事をこなす。さらにライトノベルの執筆や漫画原作も手掛けており、年収1000万円超えのカミングアウトも注目された。芸人の副業が当たり前になっている中、「芸人は何をやっても芸人」と割り切り、潔く自身の“好き”を追求して仕事に繋げている向には、もはや副業という意識はない。やりたいことを貫き、芸人として本気で挑む彼の気概について、話を聞いた。

「オタク芸人として表にいる以上は総力戦」“副業ではない”想い

 アニメや漫画を愛する「オタク芸人」の先駆け的存在として知られるお笑いコンビ・天津の向清太朗。10年ほど前から、アニメ系イベントのMCやフェスの企画、ライトノベル執筆やコミック原作まで、多彩な仕事を精力的にこなしている。

 さらにコロナ禍で急に先行きの見えなくなった2020年には、ニコニコチャンネルにて動画番組『ムカイワークス』を立ち上げ、様々なテーマで声優の出演・キャスティング・構成・総合プロデュースも手掛ける。いわば本業であるお笑いとは異なる「副業」的な活動で成功しているかと思いきや、まるで「すべてが本業」という強い意志が感じられた。

 「現状、芸人って何をやっても芸人なんですよね。ビジネス本を書いても、小説を出しても、絵を描いても芸人。言い方がズルい職業ですよ(笑)。自分も、僕ができる“面白いエンタメ”を詰め込んだものを届けたい、という想いがあるんです。それで、動画もラノベ執筆も漫画原作も、表に出ている以上は総力戦でやっていかなければいけない。結局、持っている武器で戦うしかないわけですから。そういう意味でも、副業という捉え方はしていません。でも常に、おもしろくはありたいです。25年やっている芸人として、それを最上位に置いています」

 初めて東京でアニメ系イベントのMCを任されたのが2012年。それから徐々に、MCとしてのテクニックや作品への向き合い方などが評価され、信頼を得ていったという。

 「最初はブーイングの嵐でしたよ。声優ファンからのアンチコメントも多くて…まあ当たり前です。当時、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)なんかで“キモオタ”扱いされていた奴が、いきなりMCなんてできるわけない。でも、そういうポジションを目標にして、自分ならこんなことができますということを多方面でアピールしました。それで少しずつ、MCなどに起用してもらえる存在になれたんだと思います」

 アニメ系イベントに関わってから約10年で、ファンの反応も大きく変わった。少しずつ受け入れられるようになり、今では「なれるものなら向の立ち位置になりたい」という声も。仕事とプライベートをわきまえ、MCという立場でマウントを取らない。そんな、向と“推し”との距離感が絶妙という点も、声優ファンから信頼を得ている要因だろう。

 「仕事をする上で、『声優ファンの俺がやられて嫌なことは絶対にしない』と決めています。MCという立場を利用して、イキッた感じで憧れの声優に対して『○○ちゃんてさー』などと言ってのける奴を、当時の僕は一生許さなかった(笑)。ファンとしての自分を基準にして、作品やアーティストの魅力を伝えるための仕事をしているつもりです」

憧れの“漫画原作”も実現、「本気でアニメ化を狙ってます」

 そんな“推し”との関係性が描かれた作品が、向が原作を手がけるBookLiveで連載中のコミック『推しの彼女の成り上がり〜不遇なヒーラーをアイドルにして、異世界で武道館ライブを目指します〜』(ライブコミックス)である。この原作案も、自分で表現できる最大のエンタメを伝えたいという想いからの企画だった。10本ほどのネタを編集部に提案し、そのうちの1本が通って実現したという。

 「実は、ずっと“漫画原作”ってかっこいいなって思ってたんです。それこそ、『金田一少年の事件簿』(講談社)などは、原案と作画が別々ですよね。このペンネームは、実はこの人だった…というパターンに、今でも憧れているんです。もともと、影の立役者的な存在が好きで、たとえば『NARUTO』なら奈良シカマルとか。ど真ん中ではない立ち位置に惹かれるんですよね」

 同作の主人公は、アイドルオタクの大学生。ある日突然、異世界に転生してしまい、そこで“推し”のアイドルそっくりのエルフと出会う。癒しを提供する“メンタルヒーラー”の特性を持つ彼女の夢を叶えるために、主人公が異世界を舞台に、アイドルとしてプロデュースしていくという物語だ。ファンがアイドルを求める心理や、それに応えるプロの覚悟、アイドルシーンで起こってしまうトラブルなど、絶妙な表現も読みごたえがある。アニメや声優を想う向の“推し”の気持ちが、リアルに表現されている。

 「僕自身、アイドルにすごく詳しいわけではないんですけど、“推し”に対するファンの気持ちは、対象がアイドルでも声優でも俳優でも、コアな部分は全員に重なっているように思うんです。僕自身も気持ちが乗るので、面白くできると思いました」

 連載は現在15話目で、登場人物たちは、推しのライブ動員数アップを目指して奮闘中。異世界が舞台だが、武道館を目指すというタイトルも気になるところで、「異世界に武道館があるのか」「現代に戻ってくるのか」といった読者の考察も飛び交っている。

 「武道館って、アイドルがステップアップする中で必ず目標とされる場所です。もちろん簡単なことではありませんが、絶対に無理というイメージもないと思います。僕は、“(階段の)踊り場の夢”というイメージを持っていて…。つまり、階段を登り始めた時に、踊り場は見える位置にあって、必ず通過する場所です。その“見える位置にある夢”というのが、とても大事だと思うんです」

 向いわく、本作は「本気でアニメ化を狙っている」とのこと。まだまだ物語が続く中で、自身のアイデアをどうかたちにすべきか、奮闘中という。

相方との“遠距離”が「お互いに認め合える関係になっている」

 先輩や後輩など、たくさんの人から受けた温かさが自分を作っていると向は語る。現在は、クラウドファンディングなども活用しながら、配信スタジオの設立も準備中。単なるビジネスを超えた、後輩育成への投資を行っている。

 「自分自身が発したり、表現したりするものが、先輩や後輩などの言葉でできたパッチワークみたいなものだと思っているんです。それは自分の表現活動にも投影されています。例えば、以前執筆したライトノベル『芸人ディスティネーション』(2014年、小学館刊)には、ブラマヨ(ブラックマヨネーズ)の吉田(敬)さんから教えていただいた『お笑いは人との関係で成り立つ仕事』というエピソードを盛り込んでいますし、大吉さん(博多華丸・大吉)をモデルとさせていただいたキャラクターも登場します。人との関係の連鎖を大切にしながら、トレーディングカードゲームでいう“デッキ”をひたすら強化しているような感覚です」

 一方で気になるのは、天津としてのコンビ活動だ。相方である天津・木村は現在、岩手県に移住して“地元芸人”として活躍中。遠距離コンビを続けて約2年が経ち、お笑いに対しては原点回帰の心境だと語る。

 「今は、相方と物理的な距離があることで、よりお互いに認め合える関係になっていると思います。例えば、僕がピンで活動することが増えた時、自分ひとりでボケとツッコミをやるようになって初めて、『エロ詩吟ってものすごいことやってたんだ』と実感しました。逆に、僕が年に何百本も番組やイベントでMCをこなすことについて、相方は今、朝の情報番組のMCを務めているので理解してくれているはずです。そういう意味でも、今の距離感はとても役に立っています。月1でリモートライブを配信しているんですけど、なんぼでも相手をいじりようがあるし、キャラクターをぶつけ合える。他のコンビにはマネできないようなネタが、どんどん生まれてくるんです」

 1999年に結成した天津は、今年24年目。異なる分野で活躍する2人だが、コンビとしての結束力は増しているようだ。おそらく賞レースの実績だけが、お笑い芸人の目指す道ではない。人々を楽しませたいという精神こそが、芸人としての本懐であり、進むべき道を作るのだろう。2人の活躍が今後、天津としての活動にどう還元されるのか。その化学変化も楽しみだ。
【天津・向清太朗プロフィール】
1980年2月27日生まれ。1999年2月、木村卓寛とともに天津を結成。現在、5つのラジオレギュラーを抱えている。自身が手掛けるニコニコチャンネルも好評で、様々なイベントのMCとしても活躍中。お笑いコンビ「天津」として活動しながら、アニメ系番組のパーソナリティ、アニメ関連イベントのMCを行う。また、自らの配信チャンネル『ムカイワークス』では、声優の番組を構成・プロデュースするほか、ライトノベルの執筆や、ラジオの構成作家と、マルチな活躍をするオタク芸人。
『推しの彼女の成り上がり〜不遇なヒーラーをアイドルにして、異世界で武道館ライブを目指します〜』(外部サイト)
原作:天津 向/作画:幸原ゆゆ
(ライブコミックス)

 推しを救ったら異世界転生して、まさかのアイドルプロデュース!? ドルオタ大学生・幸太郎は、推しのアイドル・のんたんをかばって刺されてしまう。「推しを救って死ねるなんて本望だ」――死んだと思ったら見知らぬ森で目が覚める幸太郎。綺麗な歌声に導かれると、そこには推しそっくりの金髪エルフがいて…?お笑いコンビ「天津」の向が綴るオリジナル原作を、イラストレーターとしても活躍する幸原ゆゆが美麗に作画!

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