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ポスト・クロちゃんは出てこない? キモキャラ絶滅、“クズ芸人”の台頭で変わるヒール枠

  • クロちゃん

    アイドル・リチとの真剣交際を発表したクロちゃん(C)ORICON NewS inc.

 先月、お笑いトリオ・安田大サーカスのクロちゃんが、アイドル・リチとの真剣交際を発表。これまで“キモキャラ”として、ヒール芸人役3巨頭のような立ち位置を張ってきたアンガールズ・田中、NON STYLE・井上、クロちゃんが、遂に全員パートナーをゲットしたことになった。今後、クロちゃんが“キモキャラ”脱却するかはわからないが、少なくとも田中・井上はそれぞれ交際・結婚を発表後、芸風は落ち着いたように感じる。今の若手に彼らのポストになるような“キモキャラ”は出てきてないが、それと入れ替わるようにして、“クズ芸人”の数が増している。バラエティのヒール芸人枠が、転換期を迎えているようだ。

山里の結婚が引き金? “キモキャラ”最後の砦、クロちゃんまで…「幸せ」公表する芸人たち

 先月放送の『水曜日のダウンタウン』の人気企画「Monster Love」で、クロちゃん&アイドル・リチのカップルが成立し、話題になった。放送後、事務所は「なぜかホッとしています」とコメントし、本人もスポーツ報知の取材で「ビジネス説」「ネタ節」をきっぱり否定し、「結婚前提の真剣交際です」と答えた。

 芸風については「何も変わらないと思います。『全国民の嫌われ者』とか言われましたけど、別に不幸をウリにしているわけじゃない」と一蹴したが、昨年1月にアンガ田中が交際宣言、9月にノンスタ井上が結婚を発表後、これまで見られた女性へのアプローチや“キモキャラ”全開パフォーマンスは格段に減った。
  • TwitterとYouTubeで幸せいっぱいに結婚を報告したNON STYLE・井上裕介(C)ORICON NewS inc.

    TwitterとYouTubeで幸せいっぱいに結婚を報告したNON STYLE・井上裕介(C)ORICON NewS inc.

 思えば、南海キャンディーズ・山里亮太も、2019年の俳優・蒼井優との結婚会見で、「妬みキャラ不変・非モテのカリスマ継続」を宣言していたが、結婚と同時に「実はモテる」「本当はイイ男」と言った話が続出。結果的に、結婚後は何を言っても“なんだかんだ蒼井優をゲットした男”のイメージが付いて回り、完全に“キモキャラ”脱却した印象だ。

 同年、オードリーの2人がともに結婚を発表し、昨年9月にノンスタ井上も結婚。実は、南海キャンディーズ、オードリー、NON STYLE、アンガールズは皆同期だ。田中としては、長らく「独身」ならではの自虐や“キモさ”を打ち出してきた芸人達が華々しくパートナーをゲットしていく様を間近で目をしたことで、心境の変化もあったのかもしれない。
  • 交際中の彼女と結婚を考えていると公言しているアンガールズ田中(C)ORICON NewS inc.

    交際中の彼女と結婚を考えていると公言しているアンガールズ田中(C)ORICON NewS inc.

 当然、田中は現在46歳、クロちゃん46歳、ノンスタ井上42歳と、芸歴ステージ、年齢的なことも大いに関係してくるだろう。しかし、田中とクロちゃんに関しては、結婚ではなく交際段階で公表し、周囲の反応もおおむね祝福の雰囲気。“キモキャラ”死守のために、田中は世間に交際を隠したり、クロちゃんは番組内でカップル不成立の流れに持っていったりすることもできただろうが、どこかで“芸人”よりも“1人の男”として幸せを優先したい想いが勝ったのではないだろうか。

反ルッキズム潮流で「キモい」は自粛傾向に、武勇伝たり得る「クズ」キャラにシフト?

 そういった中堅芸人達のある種の“落ち着き”がある中で、彼らのポストになるような下の世代の“キモキャラ”は出てきてないように思う。やはり“キモキャラ”は私生活での犠牲が大きく、加えて、いまや“キモい”もコンプラ的にぎりぎりを攻めるためには、かなり高度なテクニックが必要。“キモい”をやる側も「ただの嫌われ者」にならないラインが重要で、“キモい”を言う側も「ただの悪口」になってしまっては、今のご時世、笑えない事態になってしまう。

 「そんな世知辛い芸人界で増殖中なのが、“クズ芸人”です」と語るのは、メディア研究家の衣輪晋一氏。「5年ほど前から、ナダルさん、空気階段の鈴木もぐらさん、相席スタート・山添寛さん、岡野陽一さん、ザ・マミィの酒井貴士さんなどが、ギャンブル漬け、借金、対人関係などのクズエピソードで昨今のバラエティをにぎわせています。

 この“クズ”は、“キモキャラ”と何が決定的に違うかというと、“キモい”は外見的要素が強く、『他者評価』でしかないのに対し、“クズ”は『独自の哲学』や『美学』として、自己申告制で語れるということ。“クズ”は武勇伝になっても、“キモい”は、より言われる側を選ぶ時代に入っているのです」(同氏)
  • “クズ芸人”として活躍の場を広げている岡野陽一&酒井貴士

    “クズ芸人”として活躍の場を広げている岡野陽一&ザ・マミィ酒井(C)ORICON NewS inc.

 ルッキズムに対する意識は年々高まっている。芸人界でも容姿いじりがタブーとされる今、好感度を気にすることなく、朗らかにクズっぷりを自ら語る“クズ芸人”達は、コンプラでがんじがらめになりつつある芸能界に清々しさと新鮮さをもたらした。

 思えば、千鳥・大悟や霜降り明星・粗品も、クズエピソードで他者と一線を画し、芸人として頭一つ抜けた感がある。先日の『M-1グランプリ2022』でも、毒舌漫才を繰り広げたウエストランドが優勝。「ここ数年、“傷つけない笑い”が重宝されてきたからこそのカウンターが利いたようにも見えました。お笑いにまで品行方正が求められる窮屈さの限界を表す結果とも言えるかもしれません。クズ芸人の台頭や毒舌漫才の復興により、お笑い界は今、大きな転換期を迎えているのでは」(同氏)
  • “クズ大先生”としてトークライブに出席した相席スタート・山添

    “クズ大先生”としてトークライブに出席した相席スタート・山添(C)ORICON NewS inc.

 オードリーの若林に至っては、相席スタートの山添に憧れ、最近パチンコを始めたとのこと。好感度が高く、プライベートでも気の抜けない若林にとっては、彼らの奔放っぷりが輝かしく映っているのだろう。

「とはいえ、以前ナダルさんにお話を伺った時、『そもそも本当のクズはヤバすぎて、テレビに出ても皆引くし笑えない』と語ってらっしゃいました。“一線”を超えた途端に一発退場であることは、クズ芸人であろうと対象外ではない。当然彼らも、絶妙なラインを攻めたトークを繰り広げているのです」(衣輪氏)

 コンプラのほぼ唯一の“抜け目”をかいくぐったとも言えるクズ芸人達。彼らが今後ますますバラエティを席巻していくのか、それとも一発触発なコンプラ時代に淘汰されていくのか。新時代到来の予感漂う2023年のお笑い界に注目だ。


(文/西島亨)

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