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ポスト・クロちゃんは出てこない? キモキャラ絶滅、“クズ芸人”の台頭で変わるヒール枠
山里の結婚が引き金? “キモキャラ”最後の砦、クロちゃんまで…「幸せ」公表する芸人たち
芸風については「何も変わらないと思います。『全国民の嫌われ者』とか言われましたけど、別に不幸をウリにしているわけじゃない」と一蹴したが、昨年1月にアンガ田中が交際宣言、9月にノンスタ井上が結婚を発表後、これまで見られた女性へのアプローチや“キモキャラ”全開パフォーマンスは格段に減った。
同年、オードリーの2人がともに結婚を発表し、昨年9月にノンスタ井上も結婚。実は、南海キャンディーズ、オードリー、NON STYLE、アンガールズは皆同期だ。田中としては、長らく「独身」ならではの自虐や“キモさ”を打ち出してきた芸人達が華々しくパートナーをゲットしていく様を間近で目をしたことで、心境の変化もあったのかもしれない。
反ルッキズム潮流で「キモい」は自粛傾向に、武勇伝たり得る「クズ」キャラにシフト?
「そんな世知辛い芸人界で増殖中なのが、“クズ芸人”です」と語るのは、メディア研究家の衣輪晋一氏。「5年ほど前から、ナダルさん、空気階段の鈴木もぐらさん、相席スタート・山添寛さん、岡野陽一さん、ザ・マミィの酒井貴士さんなどが、ギャンブル漬け、借金、対人関係などのクズエピソードで昨今のバラエティをにぎわせています。
この“クズ”は、“キモキャラ”と何が決定的に違うかというと、“キモい”は外見的要素が強く、『他者評価』でしかないのに対し、“クズ”は『独自の哲学』や『美学』として、自己申告制で語れるということ。“クズ”は武勇伝になっても、“キモい”は、より言われる側を選ぶ時代に入っているのです」(同氏)
思えば、千鳥・大悟や霜降り明星・粗品も、クズエピソードで他者と一線を画し、芸人として頭一つ抜けた感がある。先日の『M-1グランプリ2022』でも、毒舌漫才を繰り広げたウエストランドが優勝。「ここ数年、“傷つけない笑い”が重宝されてきたからこそのカウンターが利いたようにも見えました。お笑いにまで品行方正が求められる窮屈さの限界を表す結果とも言えるかもしれません。クズ芸人の台頭や毒舌漫才の復興により、お笑い界は今、大きな転換期を迎えているのでは」(同氏)
「とはいえ、以前ナダルさんにお話を伺った時、『そもそも本当のクズはヤバすぎて、テレビに出ても皆引くし笑えない』と語ってらっしゃいました。“一線”を超えた途端に一発退場であることは、クズ芸人であろうと対象外ではない。当然彼らも、絶妙なラインを攻めたトークを繰り広げているのです」(衣輪氏)
コンプラのほぼ唯一の“抜け目”をかいくぐったとも言えるクズ芸人達。彼らが今後ますますバラエティを席巻していくのか、それとも一発触発なコンプラ時代に淘汰されていくのか。新時代到来の予感漂う2023年のお笑い界に注目だ。
(文/西島亨)