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松重豊、小説家デビューは“逃げ道”?「俳優を続けていくことには日々迷いも」
役者として感じた“違和感”を文章に反映 “言葉にしたい言葉”で紡ぐ独特のリズム感
【松重】ステイホーム中は時間があったので、家でスイーツを作るか妄想しながら小説を書くぐらいしかやることがなかったんです(笑)。だけど書くことに没頭しているうちに楽しくなってしまって。もともと引きこもり体質なので、執筆作業が性に合っていたんでしょうね。それで、書き溜めていくうちに短編小説という形になったので、エッセイと共に書籍化することになりました。
――俳優という職業は役柄も設定も決まっていますが、100%ご自身の自由な想像力で書ける小説やエッセイというのはお芝居とは全く違う楽しさがあるのではないでしょうか。
【松重】そうですね。現場では台本に書かれた台詞を話し、監督の演出や編集に委ねる部分も大きいですから、俳優は自分で物語を作るというよりは注文に応える職業ではありますよね。だからこそ、これまで人が書いた台詞を放った時のリズムや語調で時々感じていた気持ち悪さを、自分が書くものに関しては極力無くしたいという意識が働きました。朗読してみるとよくわかるのですが、“言葉にしたい言葉”で構成されていて、それが独特なリズムを生み出しているので、楽しみながら自分にとって気持ちの良い文章を書けたのではないかなと思います。
――小説もエッセイも俳優の裏側を覗いているような不思議な感覚になりました。
【松重】特にエッセイのほうは役者稼業の心象風景みたいなものを書いてますからね。バイプレイヤーと言われている俳優ならば「こういう景色あったな、経験したな」と感じるのではないでしょうか。