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松重豊、小説家デビューは“逃げ道”?「俳優を続けていくことには日々迷いも」

俳優人生を大きく変えた『孤独のグルメ』は「どこが面白いかいまだにわからない(笑)」

――今回の執筆業だけでなく、ラジオのパーソナリティー、昨年は『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』での映画初主演など、常に新しいことに挑戦されていますよね。最近ですと『きょうの猫村さん』の猫役が衝撃的だったのですが、こういったチャレンジングな役に挑まれる時に何か気をつけていることはありますか。

【松重豊】例えば猫村さんだったら「ヨシ! 猫に見えるように演じてやろう!」と気合いを入れて挑むと絶対に失敗するんです。だから「あ、猫か…猫ね…」と言いながら現場に行って、自然に猫を演じることが大事というか。僕はユルさの中にリアリティがあるような気がしているので、架空のものとどう折り合いをつけて演じるかが全てのように思うんです。猫のリアリティは俳優の熱情で出せるものではないので、時代の空気を読み、いま猫がどんな風に世の中に愛されているのかを見ながら、自分の器の中にシュッと猫村さんを入れる、ただそれだけですね。

――『空洞のなかみ』というタイトルがそれを物語っていますよね。

【松重】僕の場合は空洞になったところに猫が入ったり食いしん坊が入ったりするだけなんです(笑)。

――『孤独のグルメ』は初主演にして2012年から現在まで続く人気シリーズになりました。

【松重】僕はいまだにどこが面白いのかわからないんですけどね(笑)。ただ一人で飯食ってるだけなのに、なぜこんなに反響を頂けているのか腑に落ちてないです(笑)。でも、始まる時はきっと黒歴史ドラマになると思っていたのに、あれで僕のバイプレイヤー人生が大きく変わったので、こんな感じでがらっと人生変わることもあるんだなーと。でも、それが人生ですよね。

――(笑)。リアリティを出すために他に意識されていることはありますか。

【松重】なるべく相手役を俳優と思わずに、○○さん(役名)だと思って台詞を言ったり、「いまカメラはこういうカットを撮っている」とかも意識せずに、ドキュメンタリーカメラで覗かれている感覚でいることを大事にしています。ドラマや映画の家族のシーンを観ていて「夫婦の生々しいやり取りを覗いてしまった…」と思う時って結構エグいじゃないですか(笑)。そのエグさがドラマチックだったりするので、芝居だということをあまり意識せずに、旦那目線で“本当に嫌な妻だな”と思いながら夫婦の会話シーンを演じるほうが、観る人にリアリティを感じて頂けるんじゃないかなと思います。

――これからも様々な役柄を器に入れていかれると思いますが、他の誰でもない松重さんにしか生み出せないエッセイや小説も書き続けて頂きたいと心から願っています。

【松重】ありがとうございます。僕はどちらかというと、これまでゴールデンタイムで20%の視聴率をとるドラマではなく、深夜枠の視聴率5%のドラマで成長させて頂いたと思っているので、『空洞のなかみ』も100人全員が面白いと言わずとも、100人のうち5人でも“これ面白いね”と言ってくださる方がいれば、いくらでも書くつもりではいます(笑)。俳優としてはこれからも変わらず“空っぽ”を貫いていこうと思います。

「俳優は向いていない」と語りながらも何の役でも入れることができる松重の“空洞”は、あらゆる場面で演じていることを思わせない自然さを醸し出す。『孤独のグルメ』でも、「ただ一人で飯食ってるだけ」のシーンをあれほどリアルに演じることができるのは、カメラの位置や芝居をしているということ自体を意識せず、“俳優としてのこだわりを持たない”松重だからこそ成せる業に違いない。ついには人間のみならず猫の役までも自然にこなしてしまう松重が小説家という新たな武器を手にし、さらに本作のエッセイを朗読する動画をYouTubeで配信するなど、演技にとどまらない彼の“空洞”がどこまで変貌を見せてくれるのか、今後も期待したい。

インタビュー・文/奥村百恵

カメラマン/逢坂聡
スタイリング/増井芳江
ヘアメイク/林裕子
松重豊公式Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCxcBWC7P7Smralh_8ETtnpQ
松重豊公式ウェブサイト
https://mattige.com/

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