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あまりの惨状に「思わず二度見」、誰にも助けてもらえなかった地域猫の“運命”は?
大きな毛玉のせいで神経にも異常…悲惨な地域猫「それがこの子の運命ですから」
保護後によく見てみると、猫にぶら下がっていたこぶのようなものは大きな毛玉だった。「きっと動くたびに毛が引きつって痛かったでしょうね」という溝上氏が自ら、にどみちゃんの毛を剃り始める。身体中が毛玉になり身動きが取れずにいたようで、四肢の筋肉は落ち、神経にも異常が出てしまっていたと、ブログには悲しい現実が綴られていた。
バリカンで慎重に毛が刈られ、ようやく毛玉の鎧から脱出。ケガしていた後ろ右足にも、治療が施された。溝上氏はブログの中で「もう外には出ていかなくて良いんだよ」と優しく語りかけている。こうして『ねこけん』の保護猫になったにどみちゃん。丸刈りでまるでスフィンクスのような姿だが、ご飯も食べられるようになった。
「この子にはVカットが入っていました。地域猫だったんです」と溝上氏は当時を振り返る。Vカットとは、耳の先端がV字にカットされていることで、不妊手術を受けた目印。飼い主がいなく、地域住民やボランティアが見ている猫のことを地域猫という。
溝上氏は、地域で猫の世話をしていた人に話を聞いたそうだ。
「『こういう状態になってしまっていたのに、どうにかしてあげようとは思わなかったんですか? たとえ地域猫であっても、ご飯をあげているんだったら、きちんとケアをしてあげるべきじゃないんですか?』と、聞きました。するとその人は、『それがこの子の運命ですから』とおっしゃっていました」。
確かに、餌をあげていたからといって、猫のすべてをケアできる人ばかりではない。だが、にどみちゃんの姿は、あまりにもひどかった。溝上氏は「ならば、その運命を変えましょう。それもまたこの子の運命ですから」と言い切ったそうだ。
保護され改名、だが『千代ちゃん』が回復することはない
呼吸をラクにするため、酸素室の中で過ごす千代ちゃん。「免疫介在性溶血性貧血で、リンパ腫もあるなど、いろいろな病気が重なっていました。抗がん剤を飲ませ、支援していただいた酸素室で安定を保っています」とのこと。
ブログには、「千代ちゃん大好きだよ。止まることのない流れる時間の中で、ゆっくり、ゆっくり過ごそうね」と綴られている。みんなに見守られた千代ちゃんは、気のせいかもしれないが、とても穏やかで優しい表情をしているように見えた。
千代ちゃんら、数多くの病気の猫を見てきた溝上氏は、今では獣医師から猫の症状について尋ねられる機会も多いとか。「症例数だけでいったら、相当な数を見ているので」ということだが、裏返してみれば、それだけ不幸な猫がいたということである。「地域猫の最後はこうなってしまうということを知ってほしい」、そう願う『ねこけん』の活動は、今後も続いていく。
(文:今 泉)
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