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「コロナ禍にも悲観せず」笑いと自虐の『シルバー川柳』、前向きさ失わない高齢者の強さ
コロナ禍でも応募増、外出自粛で介護の限界を詠んだ句も
今年の応募期間は、3月1日から6月14日の3ヵ月半。コロナ禍による自粛期間と重なったこともあり、当初は応募数の減少が心配されていた。だが、いざ募集を開始するとコロナ関連の句を中心に応募数は増加。主催する全国有料老人ホーム協会の古川祥子さんは、当時の状況を振り返る。
「みなさん外出もできない状況だったので、応募が減るのではと危惧していたんです。でも、家にいる時間、老人ホーム内で過ごす時間が長くなった分、仲間たちで熱心に句を作って応募してきてくださったようです。最終的には、例年以上に多くの句が集まりました」(古川さん)
とはいえ、とくに感染リスク、重症化リスクが高いとされる高齢者。外出はもちろん、身内に会うことすらままならない日々が続いている。あふれるユーモアが特徴の『シルバー川柳』とはいえ、今回ばかりは現状を悲観するような内容にはならなかったのだろうか
「意外にも、悲観した句はそんなに多くなくて。ソーシャルディスタンスを生かした夫婦の関係性や、コロナに関係なくずっと家にいることなど、日常をコロナと紐づけた句が多かったです。あったとしても、唯一の外出先である病院に行けなくて誰とも会えない、という寂しさを吐露したものくらい。ただ、家にこもり介護サービスを利用できないことで、介護の限界を思い知ったことを表現した句もありました。自治体でデイサービスを休業要請する判断もあったため、自宅で老々介護をするしかないご夫婦も多くいて。そういった実情を綴った句には、介護する側の限界を感じましたし、本当に胸が痛みました」(古川さん)
川柳が外との繋がりに、「悲観してると思われがちだが高齢者は前向き」
「家族との面会にも制限が出たため、オンライン面会も行っていますが、直接会えないことで認知症が進んでしまう不安があるかもしれません。また、入居者の方だけではなく、介護スタッフ側にも影響は多大。介護中の感染予防はもちろん、業務外でも県外に出られないなど、必死で緊張した日々を送ってきました」
このようなままならない日常ではあるものの、「外出できない、人に会えないからこそ、川柳に応募することが外との繋がり、仲間との繋がりになった」と古川さんは語る。
「状況が状況だけに、悲観していると思われがちなのですが、高齢者の皆さんはすごく前向きです。それはおそらく、長年生きてきた生活の知恵であり、精神力や社会に対する順応力がすごく高いからだと思います。今の高齢者は、戦争やオイルショックなど数々の緊急事態を乗り越えていらした方々。生きてきた中で、つらいことも笑いに変えたほうが楽しく生きられると知っているんですよね。孤独とかマイナスなことも、プラスに詠んでいらっしゃる方が多かったです」