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平成の“働き方”見つめ32年『サラリーマン川柳』が果たした役割とは?
累計投稿数は119万句、32年続く“サラ川”最初は社内報だった
「もともとは、1986年新春号の社内報で誕生した企画なのですが、想像以上に評判が良く。お客様にも広められたらもっと盛り上がるんじゃないかと、その年の秋から公募をスタートしました」(山本さん)。
インターネットもない時代に1万1,421句(第1回)もの応募があったことからも、当初から注目度が高かったことがうかがえる。とはいえ、一般企業が行う公募コンクールが32年の長きにわたり継続し、毎年話題をさらうことは稀有なことだ。
「“サラ川”の特徴の一つは、テーマがないこと。また、うちの社員が入選100句を選んでいる分、誰もが共感しやすい句が多く、敷居が低いのかもしれません。まず、全国の支店や本社の社員が第一次選考を行い、その上で50人から70人の社員からなる選考委員が入選100句を選ぶ…なかなか膨大な作業です(笑)」(山本さん)
今回の応募の男女比は、男性が7割、女性が3割。中年以上の年配層の応募が多いものの、ここ数年では20〜30代の応募も増え、3割を超えた。
「SNSの普及により、若い世代が自分の思いを短く発信する、いわゆる“短文文化”に馴れた、という影響もあるのではないか」と山本さんは分析する。
平成最後は“働き方改革”がキーワード、“妻に頭が上がらない夫”も定番
「“サラ川”の定番と言えば、職場ネタのほか、“妻に頭が上がらない夫”という題材です。今回も『メルカリで 妻が売るのは 俺の物』(3位)という句がありますが、今どきならではのメルカリというキーワードに加え、王道の構図だと思います。ほかにも、2位の『いい数字 出るまで測る 血圧計』など、健康にまつわる句も昔から多く、最近の健康志向がより拍車をかけているように思われます」(宮田さん)
『ビジネスマン 24時間 寝てみたい』、バブルから景気後退と影響受け
バブル期を表す『ビジネスマン 24時間 寝てみたい』は、1990年の第4回で入選した作品。「まさに“24時間戦えますか?”という時代。長時間働くことが当たり前だった猛烈サラリーマンを表した一句です」(山本さん)。ほかにも『ブランドは 見るもの聞くもの 貰うもの』(同年)と、この時期ならではの好景気ぶり、楽観ムードを表現した句も多い。
一方、「バブル崩壊後は、逆に働きたくても働けない苦労が句に表れるようになってきます」と山本さん。『簡単に 休暇がとれて 知る立場』(1992年第6回)、『肩たたき 私はどこも こってない!』(1994年第8回)など、まさにリストラにおびえるサラリーマンやOLの姿が浮かび上がってくるようだ。