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チャラン・ポ・ランタン結成10周年、「聴いてもらう目的だけでは、その時限りで消費される」

 2009年7月、大道芸人としてアコーディオンを弾いていた姉・小春が、当時16歳だった妹・ももをボーカルに誘い結成された姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタン。姉がアコーディオンを弾き、妹がブタのぬいぐるみを抱えながら歌う独自の世界観は日本のみならず海外でも話題だ。そんな2人はインディーズとメジャーデビューを経て、今月17日に結成10周年を迎える。その記念すべき日に発売される最新ベストアルバムについて、また、新曲や楽曲制作のこだわり、そしてブレイクへの思いを聞いた。

結成からの10年「歌える歌が増えているつもりが、もう歌えない歌もある」

――昨年の11月にはインディーズベストアルバム『過去レクション』を、そして7月17日のユニット結成10周年記念日にはメジャー・ベストアルバム『いい過去どり』が発売されます。10周年の節目にアルバムをリリースされるお気持ちはいかがでしょうか。
小春 最初は「いい機会かもね」くらいだったんです。「10周年だから出すぞ!」という感じでもなく…。
もも 「そんなまとめて誰が聞きたいかな?」なんて(笑)。
小春 でも作ってみて、今では自分たちが一番喜んでますね。例えばスタジオで『過去レクション』の1曲目(「親知らずのタンゴ」)を聴き直した時、突然この10年間が走馬灯のように蘇ったんです。横にいたら太った痩せたもわからないから、改めて聴くまでは時が流れていることもよくわかってなくて。

――振り返ったことで大きな変化を感じたんですね。
小春 自分たちの財産として作品が存在しているつもりだったんですけど、10年経つともはや他人ですね(笑)。特に初期の頃は妹は歌詞の意味がわからないまま歌っているような…無知で未完成のままCDとして収められていて。歌詞の意味を知らないけどステージに存在しているボーカリストの良さ、みたいなのがその時期のチャラン・ポ・ランタンにはあったんです。当時が羨ましいとかは無いけど、とにかく衝撃でした。自分の演奏も雑だし(笑)。「もっと出来たでしょ!」みたいなテイクのままになっていて。
もも 結構投げやりな感じだったよね。
小春 その頃はそれがかっこいいと思ってましたね。それに、このチャラン・ポ・ランタンとしての10年は、私は20代の全部で、妹は16歳〜26歳だったんです。2人とも女として一番変化のある時期。まさにその10年が音楽として記録に残ってることは喜びを感じましたね。みんな20代辺りの10年、写真でも声でも残しといた方がいいよって勧めたい。

――(笑)。ももさんは過去の楽曲を聴き返されていかがでしたか?
もも 今の方が引き出しは増えてる自信があったんですけど、聴き返してみるとこれはこの時にしか出せないものだったなって。あの歌い方は今じゃもうできないですし、戻れない過去があるのを知れてよかったですね。歌える歌が増えているつもりが、もう歌えない歌もあるって噛みしめました。

記念の新曲は「おいてけぼり」!? 令和1曲目は大正時代のような曲

――そして『いい過去どり』では新曲「置行掘行進曲」(おいてけぼりこうしんきょく)もあります。これは“10周年の記念”としてどのような思いが…。
小春もも …(笑)。

――…そんなことないですか!?(笑)
小春もも 記念! 記念! 記念だよ!?(笑)
もも ただ、小春ちゃんから送られてきたデモの仮タイトルが「おいてけぼり」だったので…これはあかん、と(笑)。
小春 でも「おいてけぼり」って、パンチはあるでしょ? どうしても拭えなくて(笑)。
もも いや、パンチはあるよ。私的にはね、その仮タイトルが10周年だけにちょっとネガティブすぎるなっていうのがあって(笑)。でも、小春ちゃん節が効いてて、ネガティブなのにテンポよく行進しているようなイメージ。なので「置行堀行進曲」というタイトルになりました。

――先日はMVの一部が公開されて、SNSではその世界観に驚きと賞賛の声が多くみられました。
もも 平成終わってね、令和入ったのに昭和の匂いというか大正のような…(笑)。
小春 そうなの! 令和に作ったんですけど、大正のような曲で。
もも 過去に向かって前進って感じですよね。だいぶ逆走しちゃって。
小春 もう意味がわかんないですよね(笑)。

姉妹は水と油? 「他人だったら許せない部分とか発生しそうな気がする」

――10年を振り返ってみると、チャラン・ポ・ランタンの音楽はインディーズ感もメジャー感も持ち合わせているように思います。独自性とキャッチーのバランス感覚はどのように意識されているのでしょうか?
小春 水と油じゃないですけど、人が思うインディーズさみたいなのを私の方が持ち合わせていて、妹の方がポップなんですよ。何かを意識しているとかではなく、曲によって配合率が違う感じ。ももからリクエストされた内容だったり、もものことを思って歌詞を書くこともありますが、そうじゃなくても結局、妹が歌う時点でもものものになるんです。私が歌ったデモ音源ではすごく暗かったのに、ももが歌ったら明るくポップになった曲もたくさんあるし。お茶の間感を持ち合わせているのは妹ですね。
もも 曲が出来上がると、いい感じに“小春色”も“もも色”も入ってるなぁと思います。

――このようなお話を聞くと姉妹ならではの信頼関係もあるのかな、と。
小春 一緒にやっていてすごくバランスが保てているし、シンクロ率みたいなのは姉妹だからなのか、長年一緒にやってきているからなのか、きっと他人よりはあるんだろうな、と。他人だったら許せない部分とか発生しそうな気がするんですよね。
もも 私個人的には、チャラン・ポ・ランタンの世界観は小春ちゃんが生み出してるものだって意識があるので、そもそも何か思うことが基本的には無くて。
小春 私も、ももに言われたら、「あ、そお? じゃ変えよっか」みたいな。こだわりがないわけではないんですけど、そんな感じですね。

――そもそも、姉妹として仲よしですよね。
小春 それよく言われるんですけど「そんなに他の姉妹って仲悪いんか!?」って(笑)。

――妹を思って歌詞を書いてくれるお姉さんはなかなかいないと思います(笑)。
もも やっぱり私、愛されてるのかな!(笑)
小春 あー、すごいすごい(笑)。

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