椎名林檎、人気曲とイメージワードから浮かび上がる「強さ」と「未知の可能性」

 デビュー20周年を超えた椎名林檎が、11月13日にベストアルバム『ニュートンの林檎〜初めてのベスト盤〜』をリリースする。キャリア初のベストということで、世間的な注目度も高いはずだが、彼女を支えているリスナーはどんな人たちなのか。ライトファンにも注目度が高いベストアルバム発売を機に、改めてアンケート調査を実施した。その結果からは10代へのファン層の広がりと、多岐にわたる活動からも感じさせる「強さ」と「未知なる可能性」への世代を超えた期待が浮かび上がった。

10代ではYouTubeの存在が大きく影響、「好きになったきっかけ」と回答

  • 『ニュートンの林檎〜初めてのベスト盤〜』 初回盤UPCH-29348/9(2CD) 3300円(税込)

    『ニュートンの林檎〜初めてのベスト盤〜』 初回盤UPCH-29348/9(2CD) 3300円(税込)

 日本の音楽業界において、椎名林檎ほど際だった個性とクリエイティブな発想、奔放な行動力を持ったアーティストはいないだろう。 

 98年にシングル「幸福論」でデビュー。2ndシングルの「歌舞伎町の女王」がスマッシュヒットしたことで、「新宿系」として注目が集まり、その後1年あまりの間にリリースした「ここでキスして。」「本能」「ギブス」「罪と罰」はいずれも彼女の代表曲となった。しかし、03年に一時ソロ活動を停止。04年よりバンド「東京事変」としての活動も並行して行う。12年に東京事変を解散後、14年にNHKサッカーテーマ「NIPPON」を発表。16年のリオ五輪閉会式での「フラッグハンドオーバーセレモニー」の演出・音楽監督に就任するなど、活躍の場を広げている。

 センセーショナルに世間を驚かせた初期、バンド活動の中期を経て今に至る間、彼女はどのようなファンに支えられてきたのか。それを明らかにするために、今回「椎名林檎が好き」と回答した10代から50代まで各190名、合計950名の男女にアンケート調査を行った。

 最初の質問は、「椎名林檎を好きになったきっかけ」で、その結果が表1だ。年代を問わず最も多かったのは、やはり「TVの音楽番組での歌唱」(57.9%)。続いて「友人・家族の口コミ」(15.3%)、「ドラマ主題歌」(14.6%)と続くのだが、注目は4位の「YouTube」(14.4%)。この回答者は圧倒的に男性が多く、10代男性に限れば39.1%と、3人に1人がYouTubeを介して椎名林檎を好きになったことになる。

10代男性は3人に1人がYouTubeを介して椎名林檎を知り、好きに

10代男性は3人に1人がYouTubeを介して椎名林檎を知り、好きに

初期の作品が中心の人気曲、世代により好みの違い

 次に、ファンがどの曲を好きなのかを、11月13日に発売される椎名林檎初のベストアルバム『ニュートンの林檎』収録曲28曲から選んでもらった(グラフ1)。

 最も人気が高かった楽曲が、99年に発表した「ここでキスして。」。2位は同じく99年に発表した1stアルバム収録曲「丸ノ内サディスティック」、3位も99年発表の「本能」、4位はデビュー曲の「幸福論」、5位が「歌舞伎町の女王」だった。

 これらを含む人気の上位10曲が、どの世代にどのぐらいの支持を集めたのかを明らかにしたのがグラフ1だ。

 これを見ると、「丸の内サディスティック」は10代から高い支持を受け、「ここでキスして。」「幸福論」「歌舞伎町の女王」「ギブス」は30代(40代含む)が支持するという、年代によって人気曲に違いが出た。「丸ノ内サディスティック」が10代に人気を得たのは、YouTuberが動画で歌っていたことが影響していたと考えられる。

 また、「幸福論」「ここでキスして。」は、リリース時に10代だった30代女性に強烈な印象を残していたようで、いずれも50%以上が「好き」と回答。また、10年代に発表した「NIPPON」「長く短い祭」「獣ゆく細道」は、ともに10代の男性ファンから高い支持を受けていた。彼らにとって椎名林檎は、これらの曲に近いイメージのようだ。

30〜40代女性が抱くイメージ“生き方の見本のような存在”

 次はファンが持っている椎名林檎のイメージについて考えてみたい。

 調査方法は、こちらが提示した「28のキーワード」のなかで、彼女のイメージだと思うものを自由に選んでもらうというもの。その結果を元に作成したのがグラフ2とグラフ3だ。見方は、「30代」「40代」などのセグメントとキーワードとの距離が近いほうが、より関連性が強いと理解してもらいたい。

 グラフ2を見れば、その意味がわかるはずだ。ここではファンが明確に3つに分かれている。中心的な存在の30〜40代が抱くイメージは、「自立」「知的」「こだわり」「計算されつくした」。「個性的」「強い」といった言葉もあり、この世代にとって“生き方の見本”のような存在であることがわかる。

 少し上の世代の50代になると、「強烈」「挑戦的」「解放的」という言葉に代表されるように、古い慣習を打破する存在として頼もしく思っている様子がうかがえる。「才能がある」「かっこいい」という言葉にも、新しい時代を築く期待値が表れている。

 こうした上の世代に比べ、10〜20代における彼女に対するイメージは、まだ明確になっていない様子。「明るい」「面白い」といったワードが近くにあること自体、30代以上のファンにとっては驚きに違いないが、それは椎名林檎というアーティストに対する新たな発見かもしれない。

 では、同じデータを使ってセグメントを性年代まで、細かく分けて分析すると、さらに彼女がファンに与えているイメージが明確になる。ご覧のように、年代を問わず男女の違いによって明らかにイメージが分かれているのだ。男性10代と20代は(曲に対する興味関心はあるものの)本人に対する印象は弱く、ひと言で言えば「よくわからない」といった状態。一方、女性は20〜50代はほぼ同じ。「こだわりがある」「強い」「知的」「個性的」「おしゃれ」「才能がある」「かっこいい」といったイメージを持っている。
 今回はアンケート調査を通して椎名林檎を多角的に見てきたが、明らかになったのは「アーティストの強さ」と、「未知の可能性がある」という予感だ。楽曲の人気はデビューから3年の間にリリースされたものが上位を占めたが、10代は上の世代とは明らかに違う方向にシフトしている。また、男女の違いで捉え方に明確な差が存在しており、非常に多面的なアーティストであることがわかった。

 これからも彼女は、自らの信念に従って変化し続けるのであろう。我々はそんな彼女の変化を、これからも追い続けていくに違いない。

[調査概要]
調査対象:全国10〜50代男女、椎名林檎を「とても好き」「好き」の回答者
サンプル数:950サンプル(各年代 190サンプル)
調査期間:2019年10月25日(金)〜30日(水)
調査手法:インターネット調査
調査機関:オリコン・モニターリサーチ

提供元: コンフィデンス

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