カバーソングから考察する歌手・槇原敬之の魅力の真髄

 2020年にデビュー30周年を迎える槇原敬之が、記念企画の一環として初のカバーベストアルバム『The Best of Listen To The Music』をリリースした。これまでJ-POPのみならず、歌謡曲や洋楽スタンダード、文部省唱歌まで幅広いジャンルの楽曲をカバーした『Listen To The Music』シリーズを3作発表。本作はその中から槇原本人が選りすぐった13曲に加えて、フジファブリックの「若者のすべて」とYUKIの「聞き間違い」を新たにレコーディングしたもので、砂原良徳が全15曲のマスタリングを手掛けていることでも話題を集めている。
 オリコンモニターリサーチでは、10〜50代以上のモニターの男女1365名に全15曲のダイジェスト版を聴いてもらい、「好きな曲ランキング」を作成。その結果が以下の通りだ。

 男女の違いとして見て取れるのは、ベスト5に男性は「君に、胸キュン。」(YMO)、女性は「Missing」(久保田利伸)がランクインしているところ。
 「君に、胸キュン。」がヒットしていたのは槇原の中学生時代。「YMOファンならわかるリスペクト感!」(男性・50代)といった同世代からの共感が多かったほか、「こんな歌い方があるんだ!」(男性・40代)、「マッキーが歌うと爽やかだな〜」(男性・50代)と、声質とのマッチングを楽しんだという声が多かった。
 一方、「Missing」はこれまでも数多くの国内外アーティストにカバーされてきたが、「オリジナルの歌詞・メロディー・歌…全て完璧! と思っていたのですが、槇原さんが歌うと完全に槇原ワールドとなっていて違った個性を醸し出している」(女性・50代)など、原曲の魅力をアップデートしていることへの賞賛が集まっている。
 このように男女で多少の好みの差はあれど、総合ランキングではこの2曲を含む6曲がベスト6に入っている。世代別の集計でも上位曲に大きな違いはなく、誰が聴いても楽しめる楽曲群であることは間違いないだろう。
 デビュー30周年だけに槇原ファンのコア世代は40〜50代と考えるのが自然だが、今回の調査では30代男女の反応も大きかった。特徴的だったのは、好きな曲1位に「traveling」(宇多田ヒカル)がランクインしたこと。ちなみに、そのほかのほとんどの世代では、総合ランキングと同様に中島みゆきの「時代」が1位だった。
 同曲が大ヒットした2001年は、現在の30代にとって青春ど真ん中の時代。それだけに思い入れの強い人が特に多いのだろう。「この曲を選んだことがまず意外。だけど、ちゃんと自分のものになっている感じがすごい!」(30代・男性)、「宇多田さんのハスキーボイスのイメージが強い曲なので、全く別もののように聴こえて新鮮だった」(30代・女性)、「宇多田ヒカル以外が歌うのを初めて聞いたけどマッキーの声ととてもマッチしていていいと思った」(30代・女性)など、熱いコメントを書いてくれた人が目立った。
 世代を問わず支持されるシンガー・槇原敬之の魅力の真髄とはどこにあるのか? 今回の調査では「知っている曲でもマッキーの歌声だから好きになる曲もある」(40代・女性)、「槇原さんの歌声で名曲に新たな命が吹き込まれた」(40代・女性)、「歌唱力のある方だから、これだけ雰囲気の違う曲を自分のものにして歌えるんだなあ」(50代・女性)といった声質と歌唱力をあげるコメントが多かった。
 「マッキーが歌えばマッキーの曲になる」(20代・男性)というコメントの通り、槇原の声質は非常に独特だ。その特徴は聴くものを包み込むような柔らかさ、暖かさ。『万人ウケする』と言ってしまうのは簡単だが、槇原の歌声にはすべての人を受け入れる懐の深さがある。
 また語りかけるような歌い方で、歌詞がはっきりと聴き取りやすいのも槇原の特徴の1つ。「原曲のアーティストに敬意を持ちつつ、丁寧に歌われているところが素晴らしい」(女性・40代)といった感想も、こうした歌唱スタイルゆえと言えるだろう。
 なお、本作そのものの聴きどころとして、「普段聴かない曲をマッキーバージョンで知ることができたので良かった」(30代・女性)、「ポップな曲から『ヨイトマケのうた』などのメッセージ性のある曲などもバランスよく入っていて良い」(40代・女性)など、選曲の魅力をあげるコメントも多かった。

 槇原自身は「本当はカバーよりも本人の歌っているバージョンが一番良いとは思います」としながらも、「カバー・アルバムを作るときはちょっと角度が違いまして。僕自身の“音楽好きの歴史”というのは50年になるわけです。そちらの(音楽好きの)自分が、『なんでこの人はこんな良い曲を作ったんだ』とか、『この曲作るなんて本当に天才だな』とか、『本当にこの曲に救われたな』という曲ばかりを集めて、自分で勝手に尊敬の気持ちを込めてカバーさせていただいているんです」と、カバー曲に取り組んできた姿勢を語っている。
 「槇原の音楽的ルーツを知るきっかけとなる作品。オリジナルとは別の表情を垣間見ることができて楽しい」(40代・男性)、「知っている曲ばかりなのに、新しいマッキーの魅力に触れられた」(40代・女性)といったコメントのように、そのアーティストの魅力を再発見できるのがカバー・アルバムの面白さだ。

『The Best of Listen To The Music』

『The Best of Listen To The Music』

 なおデビュー30周年イヤーとなる今年から来年にかけて、槇原は「ワタクシ、死ぬんじゃないか? というくらい働きます。でもみんなに感謝の気持ちを込めて、この30周年を、みんなに対して本当に感謝の気持ちを言いたいので、頑張ろうと思っています」と、これまで以上に精力的な活動をすることをほのめかしている。30周年の特設サイトもオープンされており、今後のリリースやコンサートの告知も楽しみに待ちたい。


調査対象者:全国男女、10〜50代
サンプル数:槇原敬之 好感者:1348サンプル
調査期間:2019.9.20(金)〜9.30(月)
調査手法:インターネット調査
調査期間:オリコン・モニターリサーチ

提供元: コンフィデンス

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