平成で一番“使われた”曲1位は「世界に一つだけの花」 カラオケ通じ歌い継がれる演歌・歌謡の名曲も多数上位に
分配額TOP100から読み解く平成音楽史 分配構成比率で見る上位3曲の“使われ方”
ここでランキング化してもらったのは、「平成」期にJASRACが作詞家、作曲家、音楽出版社などの権利者へ支払った著作物使用料の分配金額上位100曲をまとめたもので、CDセールスに加え、ライブやカラオケ、CM、DVD・ゲームなどのパッケージ、配信、イベントでの使用料等を集計している。つまり、その楽曲がテレビやラジオ、街中、お店、ライブなどでどれだけ“利用”されていたか、言い換えれば、どれだけ“聴かれた”かを示すランキングとも言えるだろう。実際、まさに平成を彩った楽曲が網羅されたランキングになった。
また、TOP100にランクインした楽曲でも、分配額の構成比率はそれぞれ大きく異なっており、“歌われた曲”、“演奏された曲”、“見られた曲”など、さまざまな形でリスナーに届いていることもわかる。
2位に入った五木ひろし&木の実ナナの「居酒屋」は、CD売上やレンタルなどの比率はそれほど高くない一方で、デュエットソングだけに、カラオケ、社交場で数字を大きく伸ばした。1991年にリリースされたこの曲が、バブル後期から崩壊後の日本を支えた中高年をねぎらい、明日への活力を与えたことは想像に難くない。ポップス、ロック、ダンスミュージックなど日本の音楽がより多様化していく時代に発売されたこの曲が、2位にランクインしたことは、日本人のDNAとして歌謡曲が今後も歌い継がれていくことを予感させる。
3位の「エヴァンゲリオンBGM」は、国内はもちろん、海外にも熱狂的なファンを持つ説明不要のキラーコンテンツ。インストゥルメンタルのためカラオケがない一方、DVD・ゲーム、パチンコ遊戯台など音楽を聴くのではなく、“見る”“楽しむ”という新しい展開で、全体の8割近い割合を占めるなど、特徴的な構成比率となった。
この3曲は、ポップス、演歌・歌謡、アニメとジャンルも異なるためこのような違いが出た一方、JASRACへの取材を通じて、平成初期、中期、後期の3つの時代に分けた集計も明らかになっており、各時代間での構成比率にも興味深い変化が見られている。
ドラマ主題歌、メディアミックス…時代によって傾向が出る楽曲の“使われ方”
平成中期に入るとCD売上の全盛期から佳境期となり「世界に一つだけの花」、サザンオールスターズ「TSUNAMI」(作詞:桑田佳祐/作曲:桑田佳祐)といったメガヒットソングが登場。このようにCD売上が数字を伸ばす曲も多い一方で、森山良子、BEGIN、夏川りみなど多くのアーティストに歌われ、愛された名曲「涙そうそう」(作詞:森山良子/作曲:BEGIN)も上位にランクインしている。また、平成前期にはなかった傾向として、『ポケットモンスター』『エヴァンゲリオン』のようなアニメからの楽曲も上位にランクイン。ビデオ(DVD・ブルーレイ)、ゲームなどでの利用と海外での利用を主とする新たな比率でランクインする楽曲も見受けられた。いわゆるメディアミックス展開がさまざまなカタチで広がり、“音楽利用の多様化”が進んだのも平成中期の特徴と言えそうだ。
平成後期になってくると、社交場、CDが比率を落とし、代わりにビデオなどが大きく成長。ゲームや遊技台などで数多く利用された「残酷な天使のテーゼ」(作詞:及川眠子/作曲:佐藤英敏)が2位に登場したほか、「ゲバゲバ90分!テーマ」(作曲:宮川泰)がキリンビール「のどごし<生>」CMソングに長期にわたって起用されたことで上位にランクイン。人気ドラマの放送・DVD化で「相棒BGM」(作曲:池頼広)も上位になるなど、多様なメディア・ウィンドウでの新たな使われ方によって分配額が上がるケースも見受けられた。また、平成前期・中期と比較し、相対的に配信、演奏会等の比率が増えているのも、現代へつながる音楽シーンの特徴と言える。さらに、テレビドラマやアニメの音楽が上位を占めるようになったほか、CDパッケージだけでなく、YouTubeやニコニコ動画などの動画投稿サイトが伸びたのもこのころで、まさに映像と音楽の関係が強まった時代とも言える。